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第494話『並行世界の街を歩く②』

お待たせしました。

第494話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 《■■ではない俺の回想》


 傲慢ナ人間ヲ殺セ。


 ――それがいい。そうすれば平和になる。みんなそれを望んでいる。


 暴力デ全テヲ支配シヨウトスル奴ラヲ 殺セ。


 ――諸悪の根源は消すべきだ。そうすれば争いは生まれない。


 俺ノ居場所ヲ壊ス奴ヲ殺セ。


 ――俺のテリトリーを荒らす奴は敵でしかない。


 俺ヲイジメタ奴ヲ殺セ。


 ――どんな理由があろうとも、イジメをするような奴は人として終わっている。


 俺ノ邪魔ヲスル奴ヲ殺セ!


 ――俺は間違っていない。俺の邪魔をする奴は全員敵だ。


 だから、俺は葛木を葬ろうとした。しかし、邪魔された。かつてセカンド・ドライヴと呼ばれたアクタに殴られたのだ。


 せっかくの復讐の機会だったのに、それを邪魔しやがった。


 あいつはいつも俺の邪魔してばかりだ。元々は俺の一部だったくせに。



 ――――――――――



『おい、そこの小さい女』


 クズキはブロンズちゃんをそう呼んだ。


 ブロンズちゃんは不快そうにクズキを睨みつけた。


『不敬ね。誰が小さい女よ』


『うるせえ、お前も俺の女になれよ。顔だけはタイプだからな』


『誰が貴方のようなクズの女になんかなるの?』


女奴隷共(こいつら)がなってんじゃねえかよ』


 クズキは鎖を引っ張り、女奴隷二人を道具のように見せびらかした。


 女奴隷は涙を流している。好きでクズキの奴隷になっているとは思えない。


『泣いてんじゃねえよ!』


 クズキは女奴隷を引っ叩いた。


 ブロンズ様は、我慢ならなかったのか怒りのあまり無言で弾丸を放った。


『おっと』


 クズキは弾丸を剣で弾いた。


『おいおい、未来のご主人様にいきなり銃を撃ってくるとは……躾をしねえとな!』


 クズキはブロンズ様に向けて大きな拳を放った。


 それを俺は防壁魔法で防いだ。


『ちっ、防壁魔法使えんのかよ、めんどくせえなお前』


 さらに俺は氷魔法で氷柱を作り、クズキに向けて放つ。


『おらぁ!』


 クズキは炎魔法を剣に付与し、炎の剣で氷柱を一刀両断する。


 この世界線のクズキも、幹部に任命されるだけあって、なかなかの実力者だ。


 ブロンズ様は実力がないわけではないが、彼女一人でクズキに勝つのは難しいだろう。ここは俺が前に出るしかない。


『水魔法』


 適当に水弾をいくつか作り、まずは一つの水弾をクズキに投げつける。


『甘えよ!』


 クズキの剣は炎から雷に変わり、水弾を斬り落とす。


『ガハハ! なんだぁ? その程度かぁ?』


 邪悪に歪められた顔で、心底人を見下すような態度を示すクズキ。


 そうだ、これは人をいじめる時の目だ。ゴミクズのような価値観を孕む異常者の眼差しだ。


 吐き気がする。こんな奴らのせいでどれだけの人の心に傷をつけた。


 こんな奴は生きていてはいけない。やらなきゃ。


 今ここでオ前ヲ殺ス。


 ――気づいたら、俺はクズキの懐に潜り込み、刃を奴の首元に置いていた。


『ひっ……!?』


 クズキも俺のスピードについていけなかったのか、歪んだ顔に恐れが混ぜられた。


 このまま首を飛ばしてしまおうか。いや、それだけじゃダメだ。もっと痛みを与えないと、拷問しないと、生きていたことを後悔させるくらいに痛みを与え続けないと。普段から人をいじめるような奴にはお似合いの結末だ。


 俺自身はこいつに恨みはないが、もしかしたら今後魔王城のみんなに危害を加えるかもしれない。現にブロンズ様を捕まえようとしていた事実もある。奴隷の状態を見ても、相当乱暴な扱いをされているのも分かる。


 今後の不安要素を取り払うためにも、この極悪人から世界中の人々の未来を守るために、ここで確実に仕留めなければ。


 大丈夫だ。()()は必ず勝つのだから――


『ダメ!!!!!!』


 後ろにいるブロンズ様が、俺の殺害行為を声だけで制止した。


 何で止メルんだろウ?


『なぜ?』


 俺はブロンズ様ニ疑問を呈しタ。


『なぜって、分からないの?』


 分カラナイ。ナゼブロンズ様ガ俺ヲ止メルノカモ、何デソンナニ泣イテイルノカモ。


『そんなことしたら、お兄ちゃんもその男と同類の人間になるからよ』


『でも、こいつを逃せば、またブロンズちゃんを狙ってくる』


『私の為なのは分かってるわ。それはありがとう。でもね、お兄ちゃんは今、正義を理由にその男を必要以上の苦しみを与えようとしている。それは結局のところ()()()なんじゃないかしら?』


『……!』


 いじめ……俺が?


 あぁ、でもそうだ。その通りだ。


 俺は完全に正義教団の奴らと同じような事を今ここでに起こそうとしていた。


『あ、あぁ……』


 自分の行動にゾッとした俺は、持っていた剣を落とし、その場で膝を崩した。敵がすぐ側にいるにも関わらず――


 案の定、クズキは隙をついて剣を俺に向けて振り下ろした。


 俺は反応すら出来ずに、その刃を受け入れることしかできない。


 しかし、ブロンズ様はクズキの思考を読んでおり、クズキが剣を振り下ろす前に銃弾を()()放った。


 すると、一発目の弾丸はクズキの左脚に命中した。


『ぐわあっ!』


 クズキは激痛のあまり剣を落とし、横に倒れ込んだ。


 しかし、その落とした剣の刃の軌道上に俺の首があった。殺意がないとはいえ、落とした勢いで俺の首はある程度めり込むだろう。そうなれば即死とはいかなくても、すぐに適切な措置をするか、治癒魔法を施さないとゲームオーバーだ。


 そこで二発目の弾丸の出番だ。それは俺の首を貫通するはずの刃を振り払うためのものだったのだ。


 ガキン!


 クズキの剣は弾かれ、回転しながら宙を舞ったあと、床に刃を受け止められ、その後は静寂に見守った。


 ブロンズ様は凛々しい顔で俺の元に来て、身体全身を使って俺の肩を持つように抱えた。


『もう大丈夫? お兄ちゃん?』


 何事もなかったかのように話すブロンズ様。俺はどのように話せばいいのか分からなくて、目を逸らしてしまった。


『お兄ちゃんらしく話せばいいのよ』


『で、でも俺は……俺は……』


 最低だ。相手がクズキのような奴であれど、人を痛めつけていい理由にはならない。それではいじめと一緒だ。奴らは“理由があるから、人をいじめるのだから”。


 そんな初歩的な事も分からずに、生徒たちの前で教鞭を執っていたかと思うと、情けなくてしょうがない。


 今すぐ自分を殴りたい。心の中で自分で自分を責めたい。いや、もう責めている。


 俺は最低だ。俺に教鞭を執る資格も、ブロンズ様の隣に立つ資格も無いのだから。


『それは違うわ』


 心を読んだブロンズ様が、俺の言葉を斬った。


『未遂とはいえ、確かにお兄ちゃんは間違えた。それをその生徒さんたちの前で見せたら失望されるかもしれない。でも、それで終わりじゃないわ』


『ブロンズちゃん……?』


『これから間違えないようにすればいいのよ。さらにそれを他の人に伝えて、いじめを減らしていけばいいの。どんな理由があってもいじめはダメだって。いじめたら後悔するって』


『ブロンズちゃん……』


 正しい。ブロンズちゃんは本当に正しい。


『ううん、人は誰だって間違えるわ。それは私も例外じゃない。たとえば、ゴールド姉にいたずらして本気で怒らせた事もあったし、シルバー姉の大切にしてたお皿を割って、口を聞いてもらえない事もあったの。あとは逆に赤髪ちゃんが私のパンツ盗撮して、私が本気で怒った事もあったわね』


 こっちの世界の魔王城でもありそうな事件だな。特に最後。


『そうなのね、赤髪ちゃんの盗撮癖本当にどうにかならないかしらね』


 ブロンズ様は、クスクスと笑いながらそう言った。


 そうか、そうだよな。


 もう繰り返さなければいいんだ。過剰な復讐をしないように、一人でも多くの人を間違った方に舵を切らないように。それを一度間違えた俺だからこそ、できることなのかもな。


 教師のくせに俺が教えられるなんてな。


 一応大人なのに情けない限りだ。


『ううん、大人だって成長するわ。うちの魔王(おとな)だって、そうだもの』


 ブロンズ様は、子供みたいに振る舞う魔王を一例に出した。


 本人には申し訳ないが、確かにと思ってしまった。


『うん、そうだな』


 人は成長する。どんなに歳を取ろうと、その機会はいくらでもあるのだから。


 そうやって経験値を得て、レベルが上がっていくのだ。


 でも、その得られる経験がどこにあるかなんて分からないから結局は人生はクソゲーなんだよな。


『クソゲーってなに?』


『ああ、それはね――』


 雑談モードに突入したその刹那――


 さっきから脚を撃たれて倒れていたはずのクズキが、突然立ち上がり、俺達に襲いかかろうとした。


 幸い早く気づけたので、俺は魔法攻撃で返り討ちにするつもりだった。


 ――その前に、クズキの首は宙に飛んだ。


『……は?』

第494話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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