第493話『並行世界の街を歩く①』
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次の行き先が決まった。
ロンドディウム王国。正義教団のような一方的な正義を押し付ける組織とは真逆の超平和国家だ。
その国王のルシウスが、もしかしたら元の世界線に戻れる手段を知っているかもしれないという事で、ルシウスに連絡し、魔王たちと共に訪問することになった。
今すぐ行きたかったが、準備を整える必要があるので、とりあえず一泊してから向かうことにした。
魔王城の全員に事情を説明したが、ブロンズ様が駄々をこねてデートしてと聞かないので、やむを得ずデートすることとなった。
『それじゃ行きましょ、お兄ちゃん♡』
ブロンズ様は嬉しそうに、胸を押し付けるように腕を組んだ。
『ちょちょちょ、ブロンズちゃん!?』
美少女の腕組みにパニクってしまった。
いや、ブロンズ様は元々こんな感じだったはずだ。何を今更驚いているんだ。
するとブロンズ様は、なぜか寂しそうな表情をして、
『ねえ、お兄ちゃん?』
上目遣いで、俺を誘惑するように見つめてきた。
やべぇ、マジで可愛い……。
『ブロンズ様って何?』
俺の心を読んだブロンズ様は、その呼び方に違和感を覚えたのか、そう聞いてきた。
『お兄ちゃん、さっきまで普通にブロンズちゃんって呼んでたのに、心の中はブロンズ様なの?』
言われてみれば、俺さっきから彼女の事をブロンズちゃんと自然に呼んでいたような気がする。
そうか、心の融合にはそういう影響もあるのか。
どうやら、この世界の俺は彼女をまだブロンズちゃんと呼ぶらしい。今の俺もそれに引っ張られて、ブロンズちゃんと呼んでしまうようだ。
『え、あ〜。えっとね……話すと長くなるんだけど……』
『話さなくていいわ。心で思い浮かべてちょうだい』
めちゃくちゃ楽。
『あ、了解』
俺は心の中で、ブロンズ様との思い出を心に浮かべた。
『ふーん、なるほど。お兄ちゃんがプロデューサーで私がアイドルにね……我ながらなかなか無茶苦茶な話ね』
そう言う割には、ニヤニヤと笑っている。嫌な予感しかしない……。
『ふふふ』
悪いことを考えてそうな顔で俺を見ている。
『首輪って、ベンリ街に売ってるかしら?』
はいアウト。今の話を聞いて首輪が出てくる時点でもう俺を奴隷にする気満々じゃねえか。
『そんな奴隷だなんて……お兄ちゃんが良ければ遠慮なくそうさせてもらうけど?』
『勘弁して下さい。許して下さい』
『ふふ、お兄ちゃんがもっと私に虐め……一緒に居てくれたら考えなくもないわ』
はいツーアウト。
『それとも……お兄ちゃんに私のスカートの中を見せて、その場面を撮影して一生弱味を握るのもアリね』
スリーアウトチェンジ!!!
『うん、普通にやめてね?』
『えー』
不満そうに声を上げるブロンズ様。
『えーじゃない』
『せっかくお兄ちゃんにパンツ見せてあげようと思ったのに〜』
ブロンズ様は下着がギリギリ見えない程度にスカートの端を上げて、誘惑する。
『端ないからやめなさい』
『え〜、そんなこと言って〜、本当は見たいんでしょ?』
言うまでもないが、これは罠だ。もし本当に見たら、撮影魔法でその場面を証拠写真として撮影され、俺は一生ブロンズ様に弱味を握られたまま、奴隷になってしまう。
ブロンズ様ならマジでやりかねない……。
『み、見ないからな!』
俺はブロンズ様の丈の上がったスカートから視線を外した。
『ちぇっ、引っかからないか〜』
ブロンズ様はスカートの裾を離して元の丈に戻した。それでも姿勢によっては見えるくらいには短いが、風でめくれたりしない限り、事故は起きないだろう。
だが、ブロンズ様の事だ。自ら風魔法で風を起こして、俺の目の前でスカートを翻してくる、みたいな罠をしかけてくる可能性もある。
教師としての矜持を守るため、警戒心を高めよう。もしブロンズ様の下着が目に映ろうものなら、俺の理性が危ない。
『え、お兄ちゃん、教師なの?』
『あ、あぁ、あっちの世界ではね』
半ばマーリンにハメられて、なってしまったがな。
『マーリンお姉ちゃんにハメられたの?』
『そうだけど、この世界のマーリンはどんな感じなの?』
『面白い人だったよ。魔王城に一回だけ来たことがあったんだ。でもそれっきり会ってないけどね』
ブロンズ様によると、この世界のマーリンは旅人で世界中を渡り歩いているのだとか。もはや一度でも会えるのが奇跡というレベルだろう。
雑談を続けていると、目的のベンリ街にやってきた。
正式名称はハイパーウルトラベンリ街。クッソどうでもいいが、俺がいた世界線ではスーパーグレートベンリ街だった。
『街名が微妙に違うな』
名前は違うが、ネーミングセンスがイかれてるのは変わらない。とことんふざけた世界だよ。
街を見ると、それほど変わったようには見えないが、店の商品があっちの世界よりも少し豪華になっているような気もしなくもない。
『じゃ、行きましょ♡』
ブロンズ様は俺の腕を引っ張って、先導する。正直美少女に触れられてる事実だけで、ニヤニヤが止まらないが、表には出さないでおこう。バレバレだけど。
それから、俺達は色々な店を回って、(主にブロンズ様が)買い物をしたり、お洒落なカフェでカロリーが高そうなスイーツを食べたりして、ベンリ街を満喫した。
正直めちゃくちゃ楽しかった。ベンリ街が楽しいだけではなく、やはり隣にブロンズ様がいるからだ。
今、目の前にいるブロンズ様は、俺の知ってるブロンズ様とは違うけど、それでも本人と言ってもほぼ遜色がない。
『ブロンズちゃん……』
俺は無意識にブロンズ様に話しかけた。
『どうしたの?』
『俺、ブロンズちゃんの事が――』
勢いで秘めた思いを放出しそうになったその刹那、黒い鎧を身に纏う男が剣の刃をむき出しにして、こちらに近づいてきた事に気づいた。
どう考えても、俺かブロンズ様めがけて剣を振るおうとしている。
早めに異変に気づいた俺は、すぐに防壁魔法を張り、不意打ちを防いだ。
自分が狙われている事に気づいたブロンズ様は、顔つきを変え、銃を男に向けた。
『あなた、何者?』
『俺か? 俺はリュウキ・クズキ。盗賊団の幹部だ』
男は不敵な笑みで、ご丁寧に自己紹介をした。ボロボロの女奴隷二人を繋ぐ鎖をじゃらじゃらと腕に巻き付けている。
というか、リュウキ・クズキって、葛木じゃねえか! 姿もまんま同じだし!
葛木は俺と因縁のある相手かと思いきや、ただの他人だと判明してから、ただのクズ野郎くらいにしか思えなくなったんだよな。あ、でも、ベンリ街で初めて会った時は――
『……!』
あ、やばい……あの時の記憶が疼く……。
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