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第492話『宝物のような日常②』

お待たせしました。

第492話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


『やあ、ダスト君』


 目の前に現れたのは、魔王ことマーブル。お騒がせお転婆ジジイで、その正体は幼女の姿をしたやべえ奴だ。


 現在俺がいる時代では、国を動かす皇帝陛下として努めている暇人美少女でもある。


 しかし、こうしてジジイの魔王を見るのは、かなり久しぶりで、まるで実家に帰ってきたような感覚だ。


『魔王……?』


 先程のふざけたテンションとはまるで異なり、今は静かに神妙な面持ちを見せている。


『誰だ、お前は?』


 あまりにも魔王らしくないので、思わずそう聞いてしまった。こういうパターンは偽物がいるって、俺の経験値が疼いている。もう騙されないからな!


『やだなー! 儂じゃよ儂! みんなのアイドルマーブルちゃんだよ〜!』


 急にいつものテンションに戻る魔王。これは紛れもなく魔王本人だ。偽物であるはずがない。


『あ、魔王だ』


『そうだって言ってるじゃん〜!』


 さすが、シリアスブレイカーは違うな。


『で、その魔王が何で俺の夢にいるんだ?』


 俺がそう聞くと、魔王は再びシリアスな雰囲気を出す。今度こそ真面目な話になりそうだ。


『まずは、この空間について話そう。これは夢じゃない、()()()()()()()()()()()()()()()()だ』 


『あるかもしれない未来……別の世界線ってことか』


『そう。君が過ごした世界とは全く異なる世界だ』


 所謂、パラレルワールドと呼ばれる。たとえば魔王が魔王ではなく、普通の冒険者として生きた世界だったら、この魔王城が存在しないことになる。そうなると、ブロンズ様やみんなと一箇所に集まる事はないかもしれない。たった一人の選択一つで何人もの人生が変わる。大げさではなく、本当にそうなのだ。


 それを踏まえた上で、この世界はどうだろう?


 魔王城に住み着いていた“あの女神”がいないよな?


『そっか。この世界では■■■ちゃんがいないんだな』


『儂はその■■■(だれか)がどんな人か分からないし、名前を発音しても聞こえない。この世界の修正力が妨げているんだ』


『歴史を狂わせないようにってことか』


 別にここにいない誰かの話をしたところで、何も変わらないと思うんだがな。架空の人物の話をするようなものだし、修正力くんは心配性なんだな。


『そう。だから儂達には一切聞こえないようになっている。君たちの世界とは決して交わることがないから』


 ここに魔王が、みんながいるのは、そもそもここが違う世界だからか。なるほど、疑問が一つ解消された。しかし、同時に新たな疑問が生まれた。


『それなら何で俺はここにいるんだ?』


 夢ではなく、別の世界に飛ばされた。ということは、俺をここに連れてきた奴がいて、その手段・目的があるはずだ。


 まあ、こんな事ができるのはノルン様か管理者Dだろうから結構絞れる。


『分からない。何者かが何らかの意図を持ってダスト君をここに飛ばしたのは確かだね』


 魔王でも分からないか。


『ちょっと待て。さっきなら飛ばしたと言うが、それなら元々ここにいたはずの俺はどこに行ったんだよ。まさか消滅したのか?』


『それは大丈夫。この世界線のダスト君は、君の心の奥底にいるよ』


『心の奥底にいるのか……』


 言われてみれば、なんとなく心が若干重い気がする。うまく言えないが、普通では味わえないような不思議な感覚だ。


『つまり合体したってこと?』


『うーん、合体というより憑依かな。元々の意識は君の奥底に眠ってるみたいだし』


『分かるのか?』


『うん、隻眼魔法でね』


 さすが超便利魔法。俺もよくお世話になってます。


『てか魔王も隻眼魔法使えたんだな』


『うん、そうだけど……まさか君も使えるの?』


 驚いたような顔をしている魔王。まるでこの世界線の俺は使えないみたいな言い方だ。


 なるほど。なんとなく分かってはいたが、世界線によってステータスは異なるんだな。


『ああ、って言ってもちょっと特殊な事情があってな』


 特殊も特殊。授業や仕事の合間では絶対語りきれない、血まみれの冒険譚だ。


『そっか。苦労したんだね』


 魔王は心労を察してくれたのか、優しい顔で俺を労ってくれた。


 やめてくれ、俺を労るのは――。


『………………!』


 泣くだろ。


『よしよし、こっちおいで……あぁ、君的には幼女(こっち)の方が良いかな』


 魔王は爺さんから、可愛らしい幼女に変身した。その状態で俺を撫でてくれた。抱きしめてくれた。


 俺は泣いた。ただひたすらに泣いた。まるで親に泣きつく赤子のように。溜まっていたものを吐き出すように。


 本当に辛かった。召喚されたと思ったら、葛木とか言うテンプレクズ野郎にいじめられて、今度は魔王に殺されかけて、それはもう和解したけど、次はその魔王が火の国に行って、迎えに行くつもりが、俺のほうがあっさり殺されて、そしたら300年の時が流れて、次はアクタに殺されかけて、それから色々あって、ブロンズ様達を助けるために正義教団の国に行って、目的を果たして魔王城に戻って、そしたら何かを知っているゴールドちゃんに殺されて、それで今度は一万年後に――


『もう色々ありすぎて疲れたんだよ!!!!!!!』


 ――――――――――


 それから俺は泣き止むと、話を再開した。


『すまない魔王』


『いいんだよ。君の方が辛かったろうし、泣くとスッキリするからね!』


『俺がいた世界線の魔王はよく赤髪ちゃんに泣かされてたな』


 この世界線でも泣かされてそうだが。


『そ、そうなんだ……あはは……』


(い、言えない……全く同じだなんて)


 魔王の目が泳いでいる。ここでも赤髪ちゃんに泣かされてるんだな。


『それで話を戻すとだな、あと一つ疑問があって、俺はいつまでこの世界線にいるのかってことだ』


 時間が経てば自然に戻れるのか、もう二度と戻れないのか。


『うーん、それも分からないんだよねぇ……でも、()()()()()なら何か知ってるかもしれない』


 そうか……魔王でも分からないか……って、ん?


『ちょっと待て。今、ルシウス様って言ったか?』


『うん、ルシウス様』


『ルシウス様って、あの正義教団の?』


『正義教団? なにそれ?』


 魔王はキョトン顔で首を傾げた。


『え、ルシウスは正義教団所属じゃないの?』


『その正義教団っていうのが何なのか分からないけど、ルシウス様はこの世界の救世主で、“ロンドディウム王国”の王様なんだよ』


『救世主だって……?』


 ほほぅ。さすがはパラレルワールド。あんなに毛嫌いしてた正義教団の長が救世主扱いとはな。


 これはまた、ややこしい事になりそうだな。

第492話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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