第491話『宝物のような日常①』
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あれ、ここは……魔王城の食堂……?
気がついたら、俺はずいぶんと懐かしい木の椅子に腰掛けていた。この絶妙に座り心地が微妙な感じ、忘れるはずがない。
俺の隣にはブロンズ様、その隣にはあおいちゃん、さらにその隣には赤髪ちゃん、そして奥には魔王 (ジジイ)が座っていた。
ゴールドちゃんとシルバーちゃんは厨房で料理を作っている。
ずいぶんと懐かしい光景だ。取り戻したい宝物のような日常でもある。
まあ、これもいつもの夢だろうがな。
もう慣れたものだ。自分の夢で好き勝手映し出されるのは。
今度は一体誰の仕業なんだろうな? それとも普通に夢なのか? 少し様子を見てみよう。
『ねえ、お兄ちゃん』
『なに?』
久々に、本当に久方ぶりにブロンズ様から話しかけられた。銅と同じ姿な上に夢の中とはいえ、込み上げてくるものがある。
『今日こそ二人だけでお出かけしよ?』
ブロンズ様が笑顔で俺にデートの予約を入れた。今日こそということは、昨日までなかなか俺とデートできなかったんだな。
『いいよ。行こうか』
もちろん二つ返事で返した。するとブロンズ様は、
『やった、そうと分かれば早く準備しましょ!』
居ても立っても居られないのか、ブロンズ様は食堂を飛び出していった。
『ブロンズちゃん、行っちゃった……』
『ダスト様とのデートがよほど嬉しかったのですね』
『私もお姉さまとデートしたいです』
あおいちゃんはドサクサに紛れてつぶらな瞳で、赤髪ちゃんへのデートを懇願した。
『そうですね、あおいとのデートも悪くないですね。むしろ最高ですねというか今すぐ行きましょうそうだあおいの下着を買いに行きましょう良かったら私が選びましょう費用はもちろん私が出しますともかわいい妹が私の選んだ下着を着てくれるだけでもうご飯三杯はいけますよそうだあおい、私の選んだ下着を来た状態でミニスカートを着用してくれませんか? あ、別に他意はないですほんとですはいえ、カメラですか? これも別に他意はないですはい』
赤髪ちゃんは鼻息を荒くしながら、早口で変態発言のマシンガンを連射した。自重しようね。
『もう、お姉さまったら……! もちろん行きますよいえ行かせて下さいお姉さまのお望み通り、選んでくださったパンツを履いてミニスカートも履きますよもちろんその時はなるべく激しい動きをしますね他意はないですけどあ、ついでにお姉さまもミニスカートを履いて下さると助かるんですけど、あ、他意はないです』
あおいちゃんも姉同様に鼻息荒く、早口で次々とそう言い放った。自重しようね。
『あはは……赤髪ちゃんもあおいちゃんも相変わらずだね……』
魔王は呆れたように苦笑いしながらそう言った。
厨房からその様子を眺めていた二人は、
『今日はおでかけする人が多いみたいだね』
少し寂しそうな顔をするシルバーちゃん。そんな彼女の横顔を見て、ゴールドちゃんは、
『実はアタシもちょうど買い物に出かけたいと思ってたところなんだ』
己の希望を包み隠さず話した。
『お姉ちゃんも行っちゃうの?』
涙目で行かないでと訴えるシルバーちゃん。そんな顔をされたら、誰でも行きたくても行けなくなるだろう。しかし、ゴールドちゃんは、
『シルバーも一緒に行かないか?』
『私もいいの?』
『ああ、一人じゃ寂しいし、ちょうど誰か一人誘うと思ってたんだ』
『お姉ちゃん……うん、私も行く!』
こうして、ゴールドちゃんとシルバーちゃんのデートが確約された。
俺はブロンズ様と、赤髪ちゃんはあおいちゃんと。
本日は3組のカップルがそれぞれ街へ赴くのだ。
『あの……儂は?』
一人余ってしまった魔王は自分に指を指して、存在をアピールする。
『魔王様は留守番です』
赤髪ちゃんは魔王に容赦なく無慈悲な現実を突きつける。
『そんな……! 儂だって街に出かけたい!』
『では、誰がこの魔王城の留守番をするんですか?』
『そ、それは……』
幹部に指摘されて、タジタジの魔王様。同情を振りまくために儂も連れてってと言わんばかりに涙目で訴えてきたが、全員無視した。
『みんな酷い! 酷すぎるよ! うわああああああああああああああああああああああああああ!!!』
とうとう目から涙が流れる魔王。悪人面の爺さんが子供のように駄々をこねて泣き喚いている。
『儂も連れてってよおおおおおおおお!!! 独りは寂しいのおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
全く……やれやれだ。でもまあ、いくら魔王でも可哀想と思わなくもないな。なんとかならないものか……。
あれ? というか、留守番なら“あの人”がいるじゃん。
『そういえば忘れてたけど、■■■ちゃんに留守番してもらえば?』
あれ?
『ん? 誰ちゃんだって?』
『いや、だから■■■ちゃんだって』
おかしい。
『いやダストっち、■■■ちゃんの所だけ、よく聞こえないんだが……』
ゴールドちゃんは嘘をついていない。
『ちょっと待て、みんなマジで言ってる?』
残念ながらマジで言ってる。普段ふざけてる奴らだけど、今はふざけてるようには見えない。
『お兄ちゃん! デートの準備が出来たわ!』
食堂に帰ってきたブロンズ様は、テンション高めで洒落た格好を披露する。
『似合ってるよブロンズ様。でも今緊急事態でさ、ちょっと俺の心読んでみて』
『え? 何かあったの? って、心読む方が早いわね!』
■■■ちゃん。■■■ちゃんは■の■■で、この魔王様の■の■■■に住み着いている。
『あれ? 心は読めるけど、お兄ちゃんが伝えたいであろうところだけ、読めないわ……』
ブロンズ様は不思議そうな顔をしながら、そう答えた。
『マジかぁ………………あ、そうだ!』
今度は俺が食堂を飛び出して、地下へ向かった。
確か、ここら辺に■の■■■に入れる壁があるはず……。
俺は手探りで壁に触れてみた。しかし――
『あれ……? なんで?』
ない。通り抜けられるはずの■の■■■はどこにもなかった。
ここにあるのは、ただの壁でしかない。
■の■■■は文字通り幻となってしまったのだ。
『そ、そんな……!? ――なんて驚いてみたが、よくよく考えたらここは夢の世界だったわ』
何か欠けていても、別に夢だからで片付く問題だわ。
じゃあ、ここは誰かがしかけた夢じゃなくて、本当にただの夢なんだな。
『それは違う』
『誰だ!』
振り向いた先に居たのは――
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