第489話『悲劇の始まり』
大変お待たせしました。
第489話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
オッス! オラ、ダスト! またはオーガスト・ディーンだ!
休日にルカちゃん達へのクリスマスプレゼントを買おうと思って外に出たら、財布がダイエットしてたことに気づいて、腹を肥やしてやろうと銀行に寄ったら、まさかの銀行強盗に出くわしたぜ☆
こんな漫画の中だけだと思ってたわ☆
強盗の数はなんと10人! その誰もが同じ背恰好で、イメージ通りの黒い服に黒いニット帽、覆面を被っている。
……はぁ……めんどくさ。
『動くな! 一人でも妙な真似をしたら拳銃で殺すからな!』
『早く金を出せ!』
強盗Aは、拳銃でこの場にいる全員を牽制した。
強盗Bは、脅すように炎魔法を放出する。
強盗Cは、強盗Aと同じく拳銃を構えている。
強盗DとEは、俺達が妙な真似をしないように見張り役を努めている。
強盗Fは、銀行員に金を引き出させている。
強盗GHIJは、ただ銃を持って、後方に待機している。
どの強盗も一人一人は大したことない。俺一人でも余裕で倒せるだろう。しかし、今回は人質という大きな足枷がある。銃の引き金を引いてしまうような事態になれば、誰かが犠牲になってしまう。なので、迂闊には動けない。
この状況を突破する方法は……。
まず人質を解放することだ。そのために一番手っ取り早い方法は全ての強盗を同時にシバくことだ。それなら、この銀行ごと攻撃魔法でぶっ放す……と、人質に被害が及ぶ。
なら、攻撃魔法を小さくして、同時に十個作って攻撃する……なんてできるのか? やったことがないから正直自信がない。もし失敗すれば人質に当たるかもしれないし、強盗を一人でも撃ち漏らせば、その一人が激昂して人質全てを皆殺しにするかもしれない。
なんとかあの強盗全員を一箇所に集められれば、一気に攻撃しやすくなるが、こいつらだって今日この日の為に入念な計画を立ててきたはずだ。全体に監視が行き届くように散り散りになって見張るだろう。
くっ……何か方法はないのか……これ以上は思いつかないぞ……助けてノルン様……!
“うるせえですわよ。それくらい自分の力で解決しやがれですわ”
と、ノルン様からクソみてえな天啓を授かった。
それをなんとかお願いします! ノルえもん!
“だから私は人間同士の争いには介入しねえっつってんだろカス! 何がノルえもんだよ! 私はこれからヒルドとみどりとスイーツ食べ比べの会で忙しいんだよ! 分かったらもう願ってくんな!”
と、ノルン様からゴミカスみてえな天啓をぶん投げられた。
……というわけで、自力で強盗をどうにかしなければならない。
…………………………キレそう。
ん?
人質の一人一人をよく見ると、知り合いが二人紛れていた。
一人は特別な力を持つ少女達の一人であるマリン。額を押えてため息をついている。
もう一人はあおいちゃんの職場の同僚のマゼンダ・ウィリアムズさん。冷静な表情で腕を組んでいる。なんて肝の座った人なんだろう。
どうやら二人共それぞれ銀行に用事があって、俺と同じように強盗騒ぎに巻き込まれてしまったようだな。
『おい、そこの青い髪の女!』
強盗Dはマリンを指名した。
『何かしら?』
『お前……結構いい女だなぁ?』
強盗Dは鼻の下を伸ばして、下衆な目でマリンを見る。すると次は仲間である強盗AとFの様子を見た。まだ銀行員から金を引き出させている最中だと知り、ニヤニヤと再びマリンを見る。
『お前何やってんだ?』
強盗Eが訝しい目で強盗Dに尋問する。
『あ、あぁ、まだあいつら時間かかりそうだからよ、その間にこの女をさ、めちゃくちゃにしようかと思ってな』
つまり、待ち時間にマリンであんなことやこんなことをしようと考えているようだ。なんてゲスい奴らだ。
『バカか! 今そんな事してる場合じゃ……いや、悪くないな』
強盗Eもバカだった。
二人で下衆な顔をしながら、マリンに手を出そうとする。
当のマリンは、焦りこそしてないが、ゴミクズを見るような顔でその強盗共を見た。
『うわっ気持ち悪いわね、あなたたち……ただでさえ人に迷惑をかけているのに、さらに女に手を出そうなんて最低にも程があるわ。最低の極みよ』
マリンは強盗共を強く非難し、殺意ある睨みを突きつけた。
『ホントだよ。女を大切にしない男なんて最低だよ』
マゼンダさんも、マリンと同じように強盗共を糾弾する。
『うるせえ! 立場分かってんのかてめえら!』
強盗DとFは銃を向けて、人質としての立場を再認識させた。が、二人には効果がない。
『分かってないのはあなたたちよ』
『どういうことだよ!』
すると、強盗Aが、
『おい、てめえら何騒いでやがる!』
『だって、こいつが――』
ここからが悲劇の始まりだった。
『おい、何やってる!?』
『う、うわあああ!!』
バアン!
発砲した。それは人質でも銀行員にでもない。仲間である強盗Aの胸を貫通した。
倒れる強盗A、悲鳴を上げる人質たち、異常事態を察知し、駆け寄る強盗たち。
発砲した本人である強盗Dは何が起きたか分からず、銃を握ったまま震えている。
『おい、何があった!?』
『お前、撃ったのか……?』
『ち、違うんだ! 身体が勝手に――』
すると強盗Dは、今度は銃口を強盗Cに向けて、弾丸を放った。
撃たれた強盗Cは強盗Aと同じく死体と化した。
またしても悲鳴が上がる。
『てめえ、何やってんだ!』
強盗たちの何人かは強盗Dを取り押さえた。
『てめえらも騒ぐんじゃねえ!』
手が余った強盗たちは悲鳴を上げる人質たちや銀行員に銃を向けた。
すると、今度は取り押さえた側の強盗Gが仲間である強盗HIを射殺。次に強盗Jが強盗Gを射撃した。
激しい仲間割れに強盗たちは怒りから恐怖に変貌した。
『ひっ……か、怪奇現象だああああああああああ!!!』
取り乱した強盗Bは炎魔法を無差別に連射する。
『おい! 俺達にも当たるだろ! やめ――』
仲間にも着弾した。その仲間は炎人間となり、銀行内を駆け回る。
すると、ここはあっという間に火の海となった。が、マリンが水魔法で効率良く水弾を放ち、あっという間に火は消え去った。
『あ……あ……』
すっかり戦意を失った強盗たちは一人残らず、その場にへたり込んだ。死した仲間たちを側に置いて。
その後、警察が到着し、強盗たちは逮捕され、人質の俺達は保護された。
それから警察に少し話を聞かれたが、俺は特に何もやっていないし、そもそも何が起きたのかさっぱりだったので、話せる事はなかった。
事情聴取が終了し、俺は帰路についた。マリンとマゼンダさんはどうしているのだろうか。まだ事情聴取を受けているのか、それとも既に帰宅したのか。
解放感が身体中を駆け巡るが、頭だけはどうにも煮えきらない。
『アレは何だったんだ』
強盗の一人が突然、仲間を撃って仲間割れを起こした。それからまた仲間を射殺して、他の強盗もまた弾丸を放って、強盗たちは崩壊した。まるで誰かが糸で操っていたように。
誰かを操る系の魔法は、闇魔法の類だ。あの中に闇魔法の使い手がいたのだろうか。
その可能性もあるが、その割には少し残虐性を感じた。弄んでいるような、何かを実験しているような。
まさかダークがあの場にいたのか?
いや、いないはずだ。俺はちゃんと人質の顔を全員見てたからな。
じゃあ、まさかマリンとマゼンダさんが……?
実はあの二人のどちらかが闇魔法を使っていたというのか?
『……まあ、考えてもしょうがないか』
とりあえず人質は全員無事だったんだし、ここは一旦思考を放棄して、一件落着ということで消化しよう。
『さて、ルカちゃん達へのプレゼントどうしようかな』
第489話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




