第480話『ハロウィン』
どうも
改稿作業等の修正の為に更新ペースを崩してから日は浅いですが、今日はハロウィンということで投稿させて頂きました。
宜しくお願い致します。
トリック・オア・トリート。
そんな声が街中から聞こえる。主に子供たちが声を上げて、大人たちからお菓子を施されている。
『そうか、今日はハロウィンか』
この世界にもハロウィンという概念はある。人間が住む世界から来た人間が大勢いるのだから、まあ当然といえば当然だ。
『俺も菓子食いてぇな』
急に菓子を口に放り込みたくなる衝動に駆られた。しかし俺は一応大人なので貰えないし、自分で買ったとしても今は通勤帰り、つまり夕食前だ。腹を空けておかなければならない。
『帰ろう』
俺の足は自宅へ向かうようにシフトする。
『あ、でもそうか。その前に――』
俺はコンビニでお菓子を適当に買い込む。もちろん今食べるわけでもないし、俺が食うわけでもない。
それから自宅に帰ると――
『ディーンさん! ト、トリック・オア・トリート!』
玄関前にルカちゃん、ルカヴァちゃん、バレスの3人がお菓子をねだってきた。しかもそれぞれハロウィンにふさわしいコスプレをしている。かわいい。
その中でもルカヴァちゃんはかぼちゃの被り物を被り、顔を隠している。なぜルカヴァちゃん本人と分かったかというと、そのかぼちゃの被り物の上にカレンちゃんが乗っているからだ。そのカレンちゃんもハロウィンにちなんで、かぼちゃのアクセサリーを頭につけている。
『ホラ、サッサトオ菓子ヲ寄コセ。ルカチャン達ヲオ菓子デ幸福ニスルノダ』
カレンちゃんが偉そうにお菓子の譲渡を催促する。
『はいはい、ほらお菓子買ってきたよ』
俺はビニール袋からお菓子を取り出す。
『わーいやったー! ディーンさんありがとうございます!』
『ディーンさん……ありがとうございます……』
『ディーン先生の施し、ありがたく頂戴致します』
三者三様の反応を堪能した。
時代を超える前は俺は人に施されるばかりだったが、今は施す側になったんだなとしみじみ思う。
――そうだな、いつかブロンズ様たちにも。
『お菓子は夕食の後にするんだぞ』
『はーい!』
『はい』
『ご安心下さい。最初からそのつもりでございます』
釘を刺したところで、ちょうど夕食の時間となった。
今日はあおいちゃんとパーシヴァルで料理を作ってくれたそうだ。
『今日はハロウィンにちなんで、かぼちゃパイも焼きました!』
かぼちゃの甘い匂いが鼻腔をくすぐる。見てるだけで食欲が湧いてくる。
『おいしそー!』
ルカちゃん達も美味しそうにかぼちゃパイを見つめている。
『マーリンさんは今日も遅くなりそうなので、先に食べちゃいましょう』
いただきます、と食前の挨拶を終えると、みんなそれぞれ料理を口に運んだ。
デザートのかぼちゃパイはみんなで分けて食べた。もちろんマーリンの分も残してある。
此れにて夕食の時間は終わり、子供たち三人は早速、俺から貰ったお菓子を口に放り込む。
三人の表情は様々だが、美味しそうで何よりだ。
『あ、ダスト様も良ければどうぞ』
あおいちゃんからクッキーの入った袋を貰った。見たところ既製品ではなく、手作りと見た。
『わざわざ作ってくれたんですか?』
『せっかくハロウィンなので、作ってみました』
まあ、ゴールドさん達ほどではないですが……と自信なさそうに付け加えた。
『ありがとうございます。頂きます』
俺はありがたくクッキーを口に運んだ。
『ど、どうですか?』
あおいちゃんは少し不安そうに顔を覗く。超絶料理上手のゴールドちゃん達と比べられてると思えば不安になるのも無理はない。
『美味しいですよ』
『ほ、本当ですか?』
さすがにゴールドさん達と比べたら美味しくないでしょう? と言うような顔だ。
『ええ、本当ですよ』
『それなら良かったです……』
表情がまだ晴れてない気がする。俺はもう少し言葉を添えた。
『そう不安にならないで下さい。あおいちゃんは料理上手ですよ』
俺は正直にそう評価した。
『ありがとうございます!』
ようやく表情が明るくなったあおいちゃん。しかし心の中はどうなっているのか、また負の連鎖に陥ってないか心配ではあるが、それは本人のみ知る。
その後、俺は入浴を済ませて、リビングで就寝宣言を行おうとするところに、ルカちゃんがまだ話したそうな顔でこちらを見る。
『ルカちゃん、どうしたの?』
『あ、あの……もう少しディーンさんと話したいなぁと思いまして……』
少女は頬を染めて、俺との会話を求めてきた。
明日も平日だし、本当は早く寝るように促すのが正解だが……。
『いいよ』
そう返事をすると、光り輝くような笑顔で、
『ありがとうございます!』
と、元気にお礼を言われた。
何で今そんなに俺と話したいのだろうか? 深夜テンションというやつか?
『でももう夜遅いし、明日も学校だから少しだけな』
『はーい』
ルカヴァちゃんとバレスはとっくのとうに就寝している。あおいちゃんとパーシヴァルはさっきそれぞれ自室に戻ったところだ。マーリンはまだ帰ってきてない。
つまり、リビングには俺とルカちゃんの2人だけ。
『あの、ディーンさんに聞きたいことがあったの』
『何だ?』
『ディーンさん達が居た未来には、ハロウィンの文化ってあるの?』
『えっと……どうだったかな。あったような気もするし、なかったような気もする』
『えっと、どういうこと?』
曖昧な表現のせいで首をかしげるルカちゃん。
あの時は波乱万丈すぎて、文化を知る機会なんてあまり無かったからなぁ……。
でも、もしあの時代にハロウィンの文化があって、魔王城のみんなと過ごせたなら――
『多分だけど国によって文化が違うから、どこかの国ではハロウィンの文化があったのかな……?』
『ディーンさんはどんな国にいたの?』
『俺が最初に居たのは国じゃなくて魔王城なんだ』
『あ、そっか。そう言ってたね』
『そうだなぁ……国といえば……火の国って国があるんだけど、その国だけは何故か現代の日本っぽい都会の国だったんだよね。そこだったらハロウィンのイベントとかやりそう』
『火の……国? 火ってあの熱い方の日?』
『そうだね。確か水の国とかもあったよ。俺は言ったことないけど』
『へぇ、火の国は何で火の国って呼ばれてるの?』
『うん……? そういえば何でだろう?』
言われてみれば、火の国には“火”の要素が一切なかったな。特に熱い国でもなかったし、火が常に燃え盛るようなスポットもない。
確かに妙だな。
『まあ、建国した人が適当に名付けたか、何かしらの意味を込めて付けたのかもね』
あの時代の人間のネーミングセンスの無さは異常だったからな。
『ふーん、そっかー。まあ名前をつけるってそんなものかもね。ケルちゃんも“黄昏のケルベロス”って呼ばれてたし』
それは名付けた奴が厨二病だからでは?
『ははは、凄い名前だよねー』
俺はそんな大げさな名前つけない。後にも先にも絶対に。断じて絶対に。
『うん………………』
消えてしまいそうな声量で返事をするルカちゃん。瞼が重そうで、今にも夢の世界へご招待されそうな勢いだ。
『もう寝ようか』
『まだ……だいじょ……』
それから聞こえたのは寝息だけだった。
『しょうがないな』
俺はルカちゃんを抱えて、彼女の寝室まで運んだ。そこで待ち構えていたカレンちゃんに『ルカチャンガ可愛イカラッテ襲ウナヨ』など『ソコノタンス開ケルナ! ルカチャンノ下着ガ入ッテル』など、怒鳴るように注意をされた。
『そんなことしないよ……』
俺はため息をつきながら、ルカちゃんの部屋から退室しようとする。
『チョットマテ』
『何?』
『オマエ、トリック・オア・トリートッテ言ッテミロ』
『え、何で?』
『イイカラ』
『えっと、トリック・オア・トリート……?』
きごちなく言ってしまったが、カレンちゃんは『ヨシ』と言って袋の中をガサガサとあさり始めた。
『ホラ、菓子ヲクレテヤル』
カレンちゃんからクッキーが入った袋を貰った。あおいちゃんのと同じく手作りのようだが、袋の種類が違う。どうやら偶然同じ物を作っていたようだ。
『え、これって……?』
『悪カッタナ、アオイト被ッテシマッテ』
『いや、それはいいけど、何でカレンちゃんが俺に?』
『ルカチャンノ事ズットオ礼ヲ言イタカッタカラダ』
『カレンちゃん……』
『ソレダケダ。分カッタラサッサト立チ去レ。男ガ乙女ノ聖域二長居スルモノジャナイゾ』
用を済ませると、カレンちゃんはそっぽを向いてしまった。
『カレンちゃん、ありがとうな。これからも宜しく』
俺はそう言って、ルカちゃんの部屋をあとにした。
『さて、既に歯磨きした後だけど、せっかくだから今食べてみるか』
俺はカレンちゃんのクッキーを口に含んだ。
うーん、ちょっと砂糖が多いかな……まあ、でも食べれなくはない。
意外と小腹が空いてた俺はその場でクッキーを平らげた。
『甘いな。色々と』
第480話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
トリック・オア・トリート!!!
……しかし、貰ったのは仕事だけだった。
oh……(´;ω;`)
茶番すみませんm(_ _)m
小説の改稿と修正進めます。クライマックスに向けて色々準備します。
色々不安定な作者で申し訳ございませんが、何卒宜しくお願い致します。




