第475話『闇の組織』
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扉を開けて、
『ただいま』
お決まりの帰宅宣言をすると、家主のマーリンが何故かエプロン姿でお玉を持ちながら、とびっきりの笑顔で、
『おかえりー!!! ご飯にする? お風呂にする? それとも……た・わ・し?』
たわしを持って、そう言った。
いや、なんでたわし?
俺の後ろにいるバレスも何て反応したらいいか分からず、言葉を詰まらせている。
『何やってるんだお前は』
『お風呂掃除替わって』
ウインクして自らの可愛さをアピールするマーリン。美女に弱い男なら喜んで替わってくれると思ってるのだろう。
やれやれ、それが本命か。
『自分でやってくれ』
俺は呆れながら冷静にツッコミを入れた。
『そんな〜』
涙目で訴えかけるマーリン。美女なだけあってすごく絵になる光景だが、そんなことよりも聞きたいことがあるのだ。
『それよりもだ!』
『それより!?』
私のお風呂掃除の方が大事だよ! なんて思ってそうな反応だが無視無視。
『バレスの件について話してもらおうか?』
『あぁ、バレスちゃんは今日からここに住むことになったんだ』
『それは聞いた。俺が聞いているのはそうなった経緯だ』
『経緯か……ちょっと話が長くなるからご飯のあとでいい?』
『構わない』
『話が長すぎて夜中になっちゃうかもしれないよ?』
『構わない』
『お風呂掃除替わってくれない?』
『構わな……自分でやれ』
危ない危ない、思わずYESと返事してしまうところだった……。
『……お風呂掃除替わってくれない?』
『ループするな!!!』
『頼゛む゛か゛ら゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛』
まるで自分の人生がかかっているような魂を込めた叫びが彼女から放たれた。うるせえ。
『しつこい。もう諦めて風呂掃除やれ』
みんな一人一人ちゃんと当番が回ってきたらちゃんとやってるんだ。
『そ゛ん゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛!゛』
年甲斐もなく本気で泣き叫んでいる。うるせえ。
大の大人の、しかも学園のトップが此のような恥態。見る者全てを唖然とさせる光景が此処にあった。
『すまんなバレス。これが学園長兼家主のプライベートな姿なんだ』
『あ、はい』
バレスはちょっと引いたような感じで返事をした。
『このバカは放っておいて、リビングに行こう』
バレスはコクンと頷き、俺と共にリビングへ向かう。
『うぅ…………どうしたらお風呂掃除変わってくれる?』
諦めの悪いマーリンは俺にしがみつき、涙目で同情を引こうとしている。
『そんなに嫌なのかよ、洗剤ざーっとかけて水魔法でちゃちゃっとやればいいだろ』
その間なんと30秒。水魔法を使えるなら子供でもできる簡単なお仕事だ。
『なに言ってるんだ! 学園長はとにかくクッッッソ忙しいんだ! 君にとってはたかが30秒でも私にとっては宝のような貴重な時間なんだ!』
『マーリン……』
学園長の多忙さは体験してないし、あまり見てないから分からないが、マーリンは誰よりも帰りが遅かったり、朝早かったりと家にいない時間が圧倒的に多い。それだけでも多忙の証にはなるか。
『はぁ……しょうがないな……じゃあ替わってやるよ。ただし今日だけだからな』
『ありがとー!!!!!』
今度は泣いて喜ぶマーリン。歓喜のあまり俺を抱きしめた。
『お、おいマーリン!』
胸が当たってる、良い匂い。これだけでも男は色んな意味で死にかねない。それがたとえこんなどうしようもない奴でも。
『お礼に給与上げるねー!!!』
『嬉しいが、そんな理由で上げていいのか?』
『ホントはダメだけど、バレなければいいんだよ!』
マーリンはとびっきりの悪い顔で絶対言っちゃいけないことを口に出した。
『いや、遠慮しておこう。さすがに悪い』
道を踏み外すような真似だけはしたくない。俺の嫌いな薄汚い大人達と同じにはなりたくないのだ。
『うん、そうだね。合格!』
マーリンは親指を上に立ててそう言った。
どうやら、給料上げる話は本気ではなかったようだ。
『何が?』
『え、うーん……人として?』
『お、おう』
『うん、そんな誠実な君には特別なご褒美をあげよう!』
『特別なご褒美?』
『私の下着をプレゼントするよ!』
どこから出したのか、マーリンの手元にやたら洒落ているデザインの下着が出現した。
『おい、やめろ』
俺は必死に目を逸らした。
『そんな遠慮せずに〜。……それとも今履いてるパンツがいい?』
マーリンは自らスカートの中に手を突っ込んで本当に下着を脱ごうとしている。
『やめろ!!!』
『あ、食べる用が欲しい?』
『食べる用ってなんだよ!!!』
そんな意味の分からないやりとりを繰り広げた後、バレスの歓迎も含めて、豪勢な夕食の数々がテーブル上に展開された。
バレスは遠慮しつつも、腹が膨れるまで食べてくれた。
そして、ルカちゃん、ルカヴァちゃん、バレスの3人がそれぞれの寝室で眠った頃、あおいちゃん、パーシヴァル、マーリン、俺の4人でリビングに集まり、バレスについて話し合う事になった。
『バレスちゃんはね、とある組織の一員なんだ』
『とある組織?』
『うん。目的も正体も不明。所在地も分からない闇の組織さ』
『や、闇の組織……?』
そんな今時漫画でもあまり聞かなくなったような組織が現実にいるんだな。
『ノルン様に調べてもらうのはどうだ?』
パーシヴァルがそう提案した。
『それがねー、あのクs……女神でも何故か分からなかったんだよね……』
『ノルン様の方でも既に調査はされたんですね』
あおいちゃんが確認をとった。
『うん。でも何も分からずじまいだったってわけ。この世の何もかもを見透せるあの女神がね』
『へぇー、そりゃ妙な話だな』
『でもね、女神はそれが答えとも言ってたんだよね』
『答え?』
『女神はどんなにセキュリティが高かろうと突破できる。じゃあ何故突破できなかったのか……それはその相手の組織の中にノルン様をよく知る者がいるからなんだよね』
よく知る……そうか、そういうことか。だから予め対策してセキュリティを突破されないようにできたのか。
そして、それができるのは――
『ノルン様をよく知る者? どういうことだ?』
パーシヴァルだけはよく分かっていないようだ。
『つまり、ノルン様の存在を知ってる人の事だ。一般人は当然知らないとして、俺達以外だとたとえば……この世界の制作者とかな』
俺がそう言うと、マーリンは正解と言わんばかりに大きく頷いた。
『そう、その制作者が組織にいてバレスちゃんを動かした可能性がある。そうじゃなきゃ、この時代に来たばかりのダスト君を二度も襲いに来るなんてありえない』
この時代では新入りの俺は、人に恨まれるほど人間関係を構築していない。にも関わらず襲撃されるなんて、まるで俺の正体が分かっているようだ。
『なるほどな。目的は分からんが敵は俺を狙っていると……そういえば俺を狙ったバレスはどうやってこっち側に引き込んだんだ?』
話が思ったより重大且つ長かったが、元々これを聞きたかったのだ。
『ああ、えっとね、どうやら彼女、洗脳魔法で操られていたらしくて、それを女神が解除したみたい』
『洗脳魔法……おいおいそれって――』
『うん。その組織は未来の魔法を使える者がいる。つまり――』
『俺達以外に未来から来た奴がいる……!』
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