第474話『ゆるくてかわいくて強い助っ人』
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『なんでヒルドさんが来たの〜って顔してるね〜』
来て早々俺の心を読むヒルドさん。俺の露骨な反応でそれが確信に変わると、無表情のまま頬を膨らます。
『私が来たら嫌なの〜?』
かわいい。無表情故にシュールな光景なのは否めないけどかわいい。
『そういうわけじゃないですよ。ただノルン様に助けを求めたつもりだったのに、ヒルドさんが来たのが意外だっただけです』
『ああ〜そういうことか〜。ノルン様は基本的に人と人同士には割り込まないから私が派遣されただけだよ〜』
やはりそうか。まあでも救援に来てくれただけでも上々だ。何ならガン無視も覚悟してたくらいだったしな。
『それより、この娘があの例の娘?』
ヒルドさんは制服姿のバレスを見て、そう質問した。ということは、どうやらノルン様サイドにもバレスの事がちゃんと伝わっているようだ。
『そうです。俺とフーちゃんを襲った犯人ですが、今は反省してマーリンの学校の生徒として過ごしています』
バレス本人も肯定するように頷いた。
『初めまして。バレスと申します』
『宜しく〜。ふむふむ、なるほどなるほど。で、今度はこのバレスちゃんに似たバレスちゃんが襲撃に来たってことなんだね』
殺意をむき出している方のバレスを見るヒルドさん。銃口は向けていないものの、敵意と威圧感は解き放っている。その気になればすぐにでも戦闘態勢に入れるだろう。
『そうですね。ただ彼女の目的は分かりませんが』
こっちのバレスは事情を知っているようだが。
『そっか〜。じゃああっちのバレスちゃんに直接聞こうか〜』
ヒルドさんは、ようやく銃口をあっちのバレスに向けた。
『……!』
向こうのバレスも身構えるようにナイフを持ち直す。
戦闘が始まる――と思いきや、少女は一目散に逃げ出した。
『あ、逃げた』
『おそらく確実に勝ち目がなくなったので、一旦退いたのでしょう。“わたし”が考えそうなことです』
バレスが彼女の逃亡についてそう説明する。そういえば君もそんな感じで逃げてたな。
というかその理由だと、相手が俺一人なら勝てると思ってるということなんだが……。全くもう失礼しちゃうわ。
『なるほど、俺が一人なら確実に殺せるということかな?』
『上から与えられた情報ではそうでした』
『上から与えられた情報?』
上というのはバレスの上司を指している。組織全体においてかなり上の立場だそうだ。
『はい。私の上司である“あの人”は、あなた一人ならオーガスト・ディーンを簡単に暗殺できるでしょう。と言ってました』
だから彼女一人で俺に挑んだのか。ずいぶんと舐められたものだな。
だが、確かに前の俺だったらそうだな。その当時は誰よりも実力が低い自信を持つほどに軟弱だった。
しかし今は違う。フーちゃんやシャイと一対一して勝ちを手にするくらいには俺も強くなっている。ヴァルハラでレベルアップした成果がハッキリと表れているのだ。
敵はその情報を知らないままバレスを送り込んで俺を暗殺しようって計画だったが、残念ながらこの有り様である。
さすがヴァルハラ。個人情報の漏洩が一切ない。
『なるほど。だからもう一人のバレスが送り込まれたのか。というかバレスは何で二人もいるんだ?』
元々さっきのバレスをどうにかしてから、二人目のバレスについて説明してもらうつもりだった。
『あ、そうでした。説明しましょう。実はあの私に似た彼女は……私のクローンです』
『クローン?』
漫画とかでよく聞くあのクローンか。まさか現実でも使われてたとはな……。
『はい。私をベースにした複製体です。ただ簡単に造れるものではないので、今のところ彼女一体だけしかいませんが……』
“バレスだらけの軍隊”を想像をしてしまったが、現時点では幻想のままか。ちょっと見てみたかった気もするが、襲撃してくる以上はこちらも反撃しなければいけなくなる。
いくら敵でありクローンだろうとバレスを傷つけるのは抵抗あるしなぁ……。
できればさっき逃げた彼女も捕まえて保護(邪な意味ではない)したいところだが、もう遠くに行ってしまったかな。
『あれ? ヒルドさんは?』
バレスと話している内に忽然と姿を消してしまった。
『先程まで一緒にいましたが……』
キョロキョロと辺りを見渡しても姿はなかったが、数十秒後にその姿を現した。
『ヒルドさん、どこ行って――ってあれ?』
よくよく見るとヒルドさんは、眠っているバレスを背負っていた。まさか捕まえてきたのか?
『捕まえたよ〜』
『マ、マジか……』
捕まえたというより、意識を失った子供を保護する親のような絵面だ。端から見ると微笑ましい光景にしか見えないだろう。
『いつの間に捕まえたんですか?』
『二人が話してる間にね』
俺とバレスが話している間にミッションを終えるヒルドさん……マジ有能すぎる! さすがヴァルハラ自慢の戦闘員なだけある。
『よく捕まえましたね』
『簡単だよ〜。師匠との修行に比べれば、あんなのただの鬼ごっこだよ〜』
などと供述しており、拳銃を持った女は少女を連れ帰ろうとしているのであった。
あっちのバレスにとってはガチの鬼ごっこだったんだろうな。凶器を持ったヒルドさんに追いかけられるなんて逆に可哀想になってきた。
『そのバレスはどうするんです?』
『ヴァルハラで保護するよ〜。ちょっと気になることもあるし〜』
『そうですか、分かりました。宜しくお願いします』
ヒルドさんはグッと親指を立てると、転移魔法を使ってヴァルハラへ帰還した。
『さて、じゃあ帰るか』
もう既に夜の闇が充満している。部活や学園祭帰りでもないのにこの時間を生徒が彷徨くのは不自然である。
なので俺はバレスを家に送ってから帰ることにした。
『そういえばバレスの家ってどこだ? こんな時間だし送ってくよ』
まあバレスは自衛できそうだけど、一応大人の男としての義務を果たそう。
『こちらです』
バレスに導かれるままに後を追った。
(あれ? 帰還経路が俺のと似てるな。もしかしたら案外家近いかもしれんな)
こういう時結構ありがちだけど、お隣さんだったりして――
『着きました。ここです』
バレスが指を指した先にあったのは――
『マーリンの家……だと……!?』
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