第471話『混沌』
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《???》
『おはよう』
ダストとパーシヴァルとルカ・ヴァルキリーはいつも通りに朝の支度を終えて、学園へ向かう。
『行ってきます』
マーリンは既に家を出て学園へ、橋本ルカは何だか体調が悪く、今日は大事を取って休むこととなった。
心配ではあるが、今日はあおいちゃんはオフなので、今日一日橋本ルカの看病をしてもらうことに。せっかくの休みなのに申し訳ない。
職員室に着くと、いつもの朝会。終わるとそれぞれの教室で教卓の前に立つ。
キーンコーンカーンコーン。
お馴染みの音が鳴る。それは時に始まりを告げる残酷な音、あるいは終わりを告げる解放の音でもある。
そして今日一日の授業は滞りなく終了した。生徒たちが静かに聞いてくれたおかげだ。
帰りのホームルームが終わると、それぞれの住処へ帰還する生徒もいれば部活に勤しむ者もいる。
――なんてことない普通の学園生活。特別な事は何一つ起きずにただ穏やかに人生を消費する。
それが彼の理想――快楽である。
――しかし、つまらない。実につまらないですねぇ。
これがあなた達が求めた日常なんですか?
本当ですか?
私だったら退屈で退屈で吐き気を催してしまう。この光景だけでも気分が悪い。人を笑顔なんてこの眼に映したくない。反吐が出る。
“あの方”から頂いた未知の魔法で、ちょっと彼の記憶を覗いてみましたが、まさかここまで平和ボケを愉しんでいたとは……。
『そう思いませんか、ガレス』
私は目の前にいる部下に同意を求めた。
『申し訳ございません。私には分かりかねます』
ガレスは感情がないまま淡々と回答した。
どうやら彼女には私の気持ちなど理解できないようです。
『まあいいです。それよりもあなた、彼の討伐に失敗したそうですね』
私は詰め寄るようにガレスに尋問する。
『申し訳ございません』
ガレスは一切の言い訳もなしで素直に謝罪した。表情も相変わらず虚ろなままだ。まあそこは私のせいなのですが。
『失敗は次の成功で取り返して下さい』
次は失敗するなと遠回しに言った。それ以外の言葉などこの娘には不要だ。こういう時扱い方が楽で助かるのですが、感情が無さすぎるのが難点です。だっていじめ甲斐がないですから。
『いいですね?』
『はっ』
彼女は片足に地をつけて私に敬意を示す。
人が跪く光景は実に素晴らしい。プライドを弄くりながら私の意のままに命令できるのですから。これで苦悶の表情を浮かべていたら最高でしたが、ガレスに期待しても時間の無駄でしょう。
『早速次の任務にあたってもらいます。私立東都魔法学院に生徒として転入しなさい。もう手続きも済ませました』
ガレスには私の命令を断る権利はない。上からの命令は絶対ですからね。
『はい』
『目的は情報の収集ではありません。それは私のスパイが行っております』
『では私の任務は?』
『あなたが転入するクラスの中等部1年ブラック組の担任であるオーガスト・ディーンを暗殺してきて下さい。それがあなたの任務です』
『承知致しました。今度こそ任務を成功してみせます。では――』
ガレスは瞬時に姿を消し、この場をあとにした。
優秀な彼女ですが、まあ今回も失敗する可能性が高いでしょうね。借り物の力を有したとはいえフーやシャイを倒した人です。おそらく私ですらまともにやりあって勝てる相手ではないでしょう。
ですが、それも想定の範囲。全ては私の敬愛する“あの方”の指示ですから。
後にバレスと名乗るガレスが学校で彼を襲う。それは“あの方”の思い描くシナリオの一部。
『フフフ……楽しみですねぇ。希望に満ちた彼らが絶望に堕ちていく姿……あぁ、考えただけで私は……!』
“あの方”が用意したシナリオのラスト……素晴らしい、実に素晴らしい。もしこれが実現できれば……私の欲望は溢れるほど満たせるでしょう。
『やはり“あの方”は、私の理想を生み出してくれる素晴らしき御方……!』
高らかに嗤う私。端から見れば実に醜く映っているのでしょう。でもいいのです。私に必要なのは理解者ではなく、快楽なのですから――
ねえ、あなたもそうでしょう?
オーガスト・ディーン――いえ、ダスト――
『そうでしたね。あなたも名乗る名前をいくつも持っている』
似た者同士とはまさにこの事。
ですが、あなたは私と違って実につまらない快楽を求めているようですが、その中にあなたのような人間は居てはいけないのですよ。分かっているのですか?
善と秩序の世界ではどう考えてもあなたは滅ぼされるべき悪。たとえ我々を倒したとしても、次に斃されるのはダスト。
正義が勝つストーリーは完全に悪を断つことで物語は完成するのです。
『フフフ……悪と悪は同類。決して人に理解されない快楽者』
きっとあなたもいつか分かる時が来るのでしょう。その時の顔を是非間近で見させて頂きたい。私の快楽のために。
『さて、休憩はここまでにしましょう。次のシナリオの準備を進めなくては――』
そろそろ“アレ”を起動する時が近づいて参りました。それが地上に現れた時、世界は混沌の渦に巻き込まれることでしょう。
――それから物語は、いよいよ“最終章”へと突入するのです。
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