第463話『大会のその後①』
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此れにて激闘の大会は、ルカちゃんの優勝で幕が降りた。
長かったような短かったような、仮想空間だったのもあり時間の概念を忘れるほど夢中になっていた。
大会が終わった後、ルカちゃんは現実世界に戻った途端、眠るように意識を失った。命に別条はなく、ただの疲労だそうだ。今は医務室で夢を見ている頃だろう。
わかなさんを筆頭に祝勝会の準備は進めていたみたいだが、疲弊した選手の事を考慮して後日開催することとなった。
ノルン様が未来予測してくれれば、こんなに料理を無駄にすることはなかったのに……なんて、料理スタッフが愚痴をこぼしていたが、後でスタッフ及び食欲のある選手組が美味しく頂きました。
それから選手の俺達も、せっかくなのでこのヴァルハラの城で夜を明かす事となった。
全員積もる話も多くて、パーシヴァルが悔し涙を流していたり、ヘラクレスからオススメの本を紹介されたり、ヒルドさんは明日からセカンド・ドライヴの元で修行するとか、もちろん仕事もしつつな。
フレイは相変わらず好戦的で、誰彼構わず喧嘩を売っていた。特に俺とファースト・ドライヴに対してはかなりの剣幕で。
ルカヴァちゃんは、涙目のパーシヴァルと一緒に居て話も聞いてくれたようだ。内気な彼女がここまで率先してくれるなんて、保護者面の俺は感涙を禁じ得なかった。
そういえばカレンちゃんはというと、眠ってるルカちゃんの側にいてくれるみたいだ。カレンちゃんにとってはルカちゃんは親友以上の関係だもんな。
フーちゃんとシャイとマリンは満遍なく色々な人と交流したらしい。何を話したかまでは分からんが、まあ楽しそうで何よりだ。
『オーガスト・ディーン』
と、噂をすればなんとやら。シャイが少し困惑したような表情で俺に話しかけてきた。
『シャイ、どうした?』
『サンを知らないか?』
『サン?』
そういえばサンは見かけなかったな。まあこれだけ広い城だし、目にしないのも無理はないが。
『うーん知らないけど、探知魔法使って探そうか?』
『探知魔法か、確か未来の魔法だったな。頼めるか?』
俺は『うん』と頷き、探知魔法を使ってサンの居場所を伝えた。
『ありがとう助かったよ』
『気にするな』
『ああ、そうだ。大会の時も私の意志を尊重してくれたな。重ねて礼を言おう』
『いやいや俺は何もしてないよ。全部ノルン様が手配してくれたおかげだ』
『ノルン様にも感謝だが、貴様があの時私を攻撃しなかった。その様子を見たからノルン様も動いて下さったんだと思う』
『まあ、そうかもしれないけど……俺は』
『そうじゃなくても礼を言うよ。貴様の対応、私は嬉しかったよ』
シャイは頭を下げると、その場をあとにした。
『俺はただ……まあいいか』
そういえばさっき探知魔法でサンを見た時、なにやらウロウロと徘徊してたな。あっちもあっちでシャイでも探してたのだろうか。
『ん、あ。そういえばあおいちゃんは?』
さっきから全然見かけてなかったから、てっきりサンとずっと一緒に居るものだと思ってた。サンに懐かれてたから勝手にそう思っていた。
ということは一人か? わざわざ人のプライベート覗くのも気が引けるが、何かあったら大変だ。
俺は再び探知魔法を使い、城中を検索した。
『いない……?』
外まで範囲を広げよう。
『あ、いた』
どうやら庭にいるようだ。
『一人で何をしてるんだ?』
どうしても気になった俺は、あおいちゃんに会うため、窓の向こう側へ足を運んだ。
――風が吹いた。それは外の世界に来た俺を歓迎するような心地のいい風だった。
――地を彩る花畑、水の音を奏で続ける美しい川。そして――夜空を照らす星々。
それらはまるで一種のテーマパーク。見る者の心を奪う魔性の絶景だ。
俺はつい目的を忘れ、その宝物のような光景を目に焼き付けることに夢中になってしまった。
そんな俺に――
『ダスト様?』
青い髪の女の子が話しかけてきた。
『あおいちゃん!』
俺は本来の目的を思い出し、これまでの経緯を話した。
『そうだったんですね。ご心配をおかけして申し訳ございません』
あおいちゃんは丁寧に頭を下げた。
『謝る必要なんてないですよ。むしろ俺こそプライベートに割り込んでしまってすみません』
謝罪に謝罪を返した。
本来の流れならば、この後ネガティブ同士で謝罪合戦が行われるはずだったが、美しい夜景の効果か、表情穏やかに、会話が切り替わった。
『ああ、ここで私が何をしているかですね。ちょっと夜景を見てただけです』
どこか悲しそうな表情でそう言った。本人は完璧な笑顔を作ってるつもりだろうが。
『本当にそれだけですか?』
『……ごめんなさい嘘です』
お詫びとして再び頭を下げた。
『本当はちょっと考え事をしてました』
『考え事ですか?』
コクリと頷くと会話を続けた。
『試合前にルカさんに言ったこと覚えてますか?』
『えっと確か……』
記憶を掘り起こす前にあおいちゃんは答えを出した。
『”この世界の主人公だ”』
『ああ、確かに言いましたね』
それがどうかしたのだろうか?
『私はね、ダスト様。貴方が主人公だと思ってます』
『え?』
一体何が言いたいのだろう? あおいちゃんの性格を考えても、ふざけて言ってるわけじゃないだろうし……。
『確かにルカさんの環境は至って特殊なもので、私達の出会いも、猛者ばかりの大会で優勝したのも、まるで物語の主人公のようです』
あおいちゃんの言った通り、ルカちゃんは本当に主人公のようだ。でも、だから試合前にああ言ったわけじゃない。俺はただルカちゃんに自信を持ってもらいたかった。それだけの力が備わっていた事は分かっていたから。
『でも私は、ダスト様の方が数奇な運命に翻弄されていると思います』
『俺が……?』
まあ確かに俺も色々あったけど……でも――
『でも俺、弱いですよ』
『そんなことないですよ! ダスト様だって強くなられたではありませんか!』
『確かにそうですが、でもこの力は……ただの借り物だから……』
“ダストの記憶”。これがあるから俺は色々な魔法を使える。逆にこれが無ければ俺は少しだけ珍しい魔法が使えるだけのただの貧弱な人間でしかない。
『だとしても、ダスト様は実際に戦い、勝利を手にしてみせた。それは他人の力があったからかもしれませんが、それでもダスト様自ら考え、動いて得た結果ですよ』
『……!』
………………。
『だけどそれは他人の経験で動いただけで――』
『どんなに濃い経験や記憶があっても、それだけでは何も成すことはできません。結局は行動しないと意味がない』
『あおいちゃん……』
『ダスト様はちゃんと行動したんですよ。どんな状況でも最後まで諦めずに戦ってたんです。実力がある冒険者でも諦めて逃げる方は少なくありません。なかなかいないですよ。ダスト様のように勇敢で強い人は』
『………………』
『だから私はダスト様こそが主人公にふさわしい。そう思ったのです』
『………………!』
――刹那、風が吹いた。それはまるで自分もあおいちゃんの意見に賛成だと俺を後押ししたような、強くて優しい風だった。
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