第459話『決勝戦⑧』
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――数十分前。
《???視点》
もう限界だ。
身体が動かない。意識もはっきりしない。口を開くことすらかなりの気力がいる。
ケルちゃん……もうわたし……。
『ルカちゃん……そっか、もう限界イヌか。ずっと慣れない事してたもんね。ここまでよく頑張ったと思うイヌよ』
あぁ、どうやら私の状態を察してくれたようだ。
うん、本当に慣れない事をした。
もっと修行すれば良かったと後悔したよ。
『ルカちゃんもしんどいだろうから、もう終わりにしようか』
うん、お願いねケルちゃん。せめてそう言葉にして贈りたい。
私はこの身体の全ての気力を絞り尽くして、口を開いた。
『うん、よろしくね』
やった。ちゃんと言えた。思っていた言葉とは違うけど、おおよそ同じ意味だ。まともに喋れない今の状態にしては上々ではないだろうか。
『じゃあルカちゃん。またあとでね』
ケルちゃんと約束を交わし、そこにいた私という個体はケルちゃんによって引導を渡されたのであった。
――その直後。
《ルカ視点》
『はっ!』
私は目を覚ましたように、意識が戻ってきた。
『ここは……そうか、私さっきまで分身に魂を移してたんだ』
最初のファースト・ドライヴさんの分身を倒したあと、教わった魔法で密かに私の分身を作って、本体の代わりに、ケルちゃんと同行させた。その際に私は未来の魔法である転移魔法“鎮魂歌”を発動して、私の魂を分身に転移した。
しかし、まだ魔法を制御しきれていないのか、先程私は意識を失いかけた。
セカンド・ドライヴさんからも、この魔法は扱いが難しいと言っていた。私も一応何回か練習はしたが、長時間意識を保てた例はなく、本番もこのザマだ。
『やっぱりうまくいかなかったかー』
とりあえず本体の私は最初の足場から最も近い足場に結界を張って、そこでずっと眠っていた。
『バフは……受け継がれてないか』
先程までは攻撃力も防御力も素早さも全て上がっていた状態だったが、今はその影も形もない。どうやら分身から本体に引き継ぐことはできないようだ。
『うーん、ちょっと身体が重いなぁ……』
拾ったバフアイテムはケルちゃんが持ってるし、面倒だけど、新しく拾ってこようかな。
外の島へ飛ぶ時はいつもケルちゃんに跨っていたが、別に私一人でも飛び乗る事は可能だ。
『風の精霊よ。我に空を駆け抜ける力を与えたまえ』
呪文を唱えると、風が意思を持つように私を持ち上げた。
足場から少し離れた私は、風以外何も踏むことなく、そのまま別の島へ飛び立った。
そうして下へ下へと降りつつ、アイテムを回収した。
――そして現在。
まるで天から落とされたように急降下する私は、ファースト・ドライヴさんに“光の剣”を向けて隕石の如く突進する。
『はあああああああーーーーー!!!!!』
そして、一筋の光は空気を裂くように、ファースト・ドライヴさんを守る砦に衝突する。
鈍い金属音が連続で響き合う。それはまるで工事の騒音のような不快感に似ている。
あー、うるさい。本当にうるさいな。
『ケルちゃん!』
ちょうどファースト・ドライヴさんに攻撃しようとしていたのか、ケルちゃんは既に牙を向いて、足場をダダダと蹴っていた。
ケルちゃんに攻撃係を譲るために、私は硬い防壁を両足で蹴って、その反動でその場を少し離れた。
その間にケルちゃんが防壁に噛みついた。
もちろん、それだけでダメージなんて与えられるはずもない。何の策もなければ完全に悪あがきでしかない行動だ。
『お二人とも一体何がしたいんですの? 私には防壁があると何度申し上げれば――』
『だから分かってるって。ただ僕が噛みついてるだけに見える?』
『ん、どういうことですか?』
ケルちゃんの回答にピンと来ないファースト・ドライヴさん。そこから逃げた方がいいですよ。あなたのトラウマが再現されるんですから。
『ケルちゃん!』
私はケルちゃんと感覚を同期した。これでケルちゃんの見えているものと感じているものが、私にも分かるようになった。
これは精霊のの力でも魔法でもない、聖剣としての機能だ。
なぜこんなことをしたのかと言うと、防壁魔法の根源を探すためだ。炎魔法や水魔法といった六属性魔法なら根源の位置を把握しているのだが、防壁魔法は試したことがないので分からない。だからケルちゃんを通じて探すしかないのだ。
何言ってるのか私自身にも分からないが、これは魔法の根源という概念を一切知らなかったセカンド・ドライヴさんが提示してくれた根源の模索方法だ。もし根源が見つからなくて困ったら、こうするようにアドバイスしてくれた。
そもそも、これでどうやって根源の位置が把握できるのか、私もよく分かっていないけど、セカンド・ドライヴさんが言うには、
――感じろ。ただそれだけだ。
目で見るのではなく、心臓の音を探すようなものと思えばいい。セカンド・ドライヴさんはそう言ってた。
『………………………………』
――――――ドクン。
聞こえた!
『そこだ!』
私は“その場所”に剣を突き刺すと、あんなに硬かった防壁はヒビに侵食され、やがてガラスのように崩れ去った。
『なっ――――』
いつも防壁を頼りにしていたファースト・ドライヴさんは、その光景を一瞬受け入れられず、防御姿勢を取るのに一歩遅れた。
『ケルちゃん! 聖剣になって!』
これは完全にチャンス到来。私はすぐに聖剣を手に取って、躊躇することなくファースト・ドライヴさんをバッサリ斬った。
『ああああああああああああああ!!!!!』
第459話を見て下さり、ありがとうございます。
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