第456話『決勝戦⑤』
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下っても下っても一向に変わらない景色と共に空を駆け抜ける少女と聖犬。
あまりにも果てが見えないので、無限ループ空間に陥ってるのではないかと思ってしまうくらいには不安が心を揺さぶっていたが、それもついに終焉を迎える。
『あ! あれファースト・ドライヴさんじゃない』
『え、でもなんか服違くないイヌ?』
小さめのステージにポツンと立つのは、金色の派手な装飾と赤いドレスを纏った美女。表情も険しく、“裏社会”を思わせる風貌だ。
『ここ私達しかいないのに人違いってことある?』
『確かにそうだけど、ギミックの可能性もないかな? 例えばあれは人形で、先に契約した方に味方してくれるとか』
ノルン様が用意したギミック説を唱えるケルちゃん。運営からは何も聞いていないが、前回のサバイバル試合でもイベントについては予めの説明は無かった。その傾向からして今回も説明されていないイベントもある可能性も十分考慮できる。
『うーん、でもあの人の顔、どうみてもファースト・ドライヴさんなんだよね……』
自信なさげな声のトーンだが、あの人は確かに彼女そのものだと断言するルカ。風貌こそ別人のようだが、彼女の面影は確かに残っている。
『なるほど、じゃあ分身の可能性もあるイヌね』
『そうだね。まあどちらにせよ警戒しておくに越したことはないよ。慎重に行こう』
近くのステージに降りて、彼女の動向を伺う。
すると、ファースト・ドライヴ(?)は懐から取り出した扇子を広げて、何やら呪文らしきものを唱えている。
ルカのいるステージと、ファースト・ドライヴ(?)のいるステージは互いに視認はできるものの、少し離れているので、口を開いても相手側には聞こえない。
『ファースト・ドライヴさん何やってるんだろう?』
『分からないけど、何か嫌な予感がするイヌ』
『……ケルちゃん、一旦聖剣になって』
『分かったイヌ』
聖剣に戻ったケルちゃんを手に持つルカ。
彼女もケルちゃんと同じように嫌な予感を覚えていた。
(何かは分からない。早くファースト・ドライヴさんを止めないと大変なことが起きる気がする)
『雷の精霊よ、聖剣に力を与えたまえ』
聖剣の刃に稲妻が走り、バチバチと放出し続ける。
その聖剣を振りかざすと、空が共鳴するように雷雲を呼び寄せる。
一瞬にして不穏な天気となり、空から振ってきた稲妻は聖剣に引き寄せられるように落雷し、そのままその雷を利用するという形で聖剣に力を与えた。
そして、その状態で聖剣を振り下ろした。
それによって発生する斬撃に雷の力が付与された形となり、ファースト・ドライヴ(?)を襲う。
しかし、ファースト・ドライヴ(?)は表情一つ変えず、扇子を真上にあげると、その扇子は光りだした。
その刹那――異空間の扉が開く音がした。
『!?』
雷の斬撃は何も成果を得られないまま消え去った。
なぜそうなったのか。ルカはその答えを探すよりも先に眼前に映る光景に驚愕の表情を浮かべた。
『え、うそ……………………?』
そこには、誰もが知っているであろう巨大な生物がいた。
それは蛇のようで、それよりも長い体躯を持ち、頭にはシカと似たような立派な角が二本。口元には長いひげがあり、背には隙間なく鱗で埋め尽くされ、四本の足にそれぞれ五本の指には凶器とも呼べる大きくて鋭い爪を携えている。
まあ、端的に言ってしまえば……龍だ。
『おーあれが“ドラゴン”イヌか。アニメやゲームでよく見たけど、まさか現実で見るなんてね』
ルカとは対象的に呑気に雑談をするケルちゃん。
『………………』
ルカの頭は整理が出来ていないのか、言葉を発することすら叶わない状態だ。
そんなルカを見たケルちゃんは、当人の代わりに術者に質問をした。
『ねえ、お姉さん』
本来であれば声に出しても聞こえない距離だが、ケルちゃんのスピーカー機能で互いに声が届くように調整している。
『何でしょう?』
風貌が変わっても、喋り方は元と同じだった。
『その龍、どうやって出したイヌ?』
『召喚魔法です』
『召喚魔法?』
『ええ、どのような生物もその概念さえ存在していれば、この世に顕現させることができる非常に珍しい魔法です』
『へー、さすがイヌ。すごいイヌ』
素直に褒め言葉を送る。
『ありがとうございます。敵ながら私に賛辞の言葉を送って下さるとは……ずいぶんと余裕なんですね』
皮肉を込めた言葉を返した。が、当の聖剣は特に何も思わずに話を続ける。
『さすがに余裕じゃないイヌよ〜、聖剣の力が、あの伝説の生物に通じるか不安すぎるイヌ〜』
聖剣はその名に恥じるような弱音を吐いて、人間味を見せた。
『聖剣にもそんな感情があるんですか?』
『そうだよ、ただの剣ならともかく聖剣は特別だからね』
『それは気になる話ですわね。ぜひ聖剣とゆっくりお話をしたいところですが、今は試合に集中しましょうか』
『そうしたいのは山々だけど、ルカちゃんが唖然としてるからちょっと待って』
ケルちゃんは、魂が抜けたような状態のルカに言葉を投げかける。
『ルカちゃん! しっかりして!』
『はっ!』
ケルちゃんの声が無事届き、現実に意識を戻した。
『ケルちゃん……?』
ルカは不安な表情を出しながら、もう一度龍を確認し、現実を受け止める。
『ディーンさん……』
今一度、“彼の言葉”を思い出し、心を奮起させる。
『――よし。ケルちゃん、ごめんね!』
ルカは聖剣を構える。狙いはファースト・ドライヴだ。
『質問があります! あなたはファースト・ドライヴさん本人ですか?』
ルカは、ストレートに知りたい事を質問した。
『さあ、どうでしょうかね?』
わざわざ答えるつもりはないようだ。
『そうですか、なら私が勝ったら教えて下さい!』
『いいですよ。あなたが望むのならいくらでも教えてあげましょう。ただし私が勝ったら、あなたには“あること”をやってもらいますからね』
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