第452話『決勝戦①』
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――決勝会場。
そこは至ってシンプルに出来上がっている。
鋼鉄製の地面が体育館ほどに広がっており、それでいて壁はなく天井もなく、実に解放感あふれるステージだ。
しかしそうなると、突風を隔てる物がないので、試合に支障が出る可能性がある。
うまく武器を振れなくなったり、魔法が風にかき消されたり等色々あるだろう。思いつく限り一番最悪なのが、ステージ外に押し出されて下に落ちる事だが、それについてはまだ救いがある。
舞台は浮かんでる島だけではなく、その下にもいくつか小さめの足場が浮かんでいる。そこから跳躍すれば上にたどり着くようになっている。
もちろん空を飛ぶ手段があるなら、足場を使わずに戻ってもよい。
舞台ごとにアイテムがランダムに落ちていることもあるので、それを使って戦闘に役立てることもできる。
足場に乗れず、完全に下に落下した場合は、その選手はその時点で敗北が決定する。
まあ、要するにスマb――
『――ルールは以上です。何か質問等はございますか?』
『ありませんわ』
『大丈夫です』
互いに向き合うように武器を構える。
ファースト・ドライヴは相変わらず男装を纏っている。世の女性達が黄色い声援を上げるほどには様になっているので、正面にいるルカも少しときめいてる。
そのルカは、可愛らしいデザインの私服のような装いを纏っているが、胸元には軽い防具を纏い、ミニスカートの下にスパッツを採用している。機動性を重視した結果、こういう格好になったのだろう。
『それでは決勝戦――橋本ルカVSファースト・ドライヴの試合を開始します!』
試合開始の銅鑼が響き渡ると、二人は早速攻防を繰り広げた。
ファースト・ドライヴは、炎氷水雷風岩属性の魔法をひらすら連射する。
ルカの視界内はあっという間に敵の魔法で埋め尽くされた。
実に絶望感あふれる地獄のような状況ではあるが、彼女自身は至って冷静沈着。まずは自分から一番近い距離にある炎を斬り、後ろに並んでいる攻撃魔法の数々を順番に斬り落とした。
そして、瞬時にファースト・ドライヴの目の前に移動し、剣を振るも、どこからか現れたツルのような何かが剣に巻き付く。
『くっ……!』
剣を振って無理やり引き剥がそうとするも、巻き付く力が強すぎて、ルカの腕力ではびくともしない。
そうこうしている内に、ファースト・ドライヴは無防備になったルカの懐に飛び込んできた。
『ごめんなさいね』
光魔法で作られた光の塊をルカに放とうとする。
『精霊よ、我に盾を与えたまえ』
『!?』
初めて聞く呪文を唱えると、術者の前に透き通るような紫色の盾が出現した。
ファースト・ドライヴは確かにこれが盾だと確信すると、光の塊を空へ投げ捨て、一旦後ろに下がる。
その行動を読んでいたルカは、片手で剣を真っ直ぐに投擲する。
空気を裂くように剣は、やがて青いオーラを纏った犬の形へと変貌し、ファースト・ドライヴに襲いかかる。
『犬に変わった!?』
一瞬マジックショーでも見ているような気分にさせられた彼女は、とっさに防壁魔法を張り、襲い来る猛獣を押し返そうとするが、防壁はキャンディーにがぶりつくように、あっけなく噛み砕かれた。
『なっ……きゃっ!?』
完全に無防備になったファースト・ドライヴは、猛獣に押し倒された。
獲物を捉えたぞ、と雄叫びを上げるケルちゃんこと黄昏のケルベロス。主人が命令すると、ケルちゃんはまずはファースト・ドライヴの左肩を噛み砕いた。
『……』
噛まれた本人は柔肌を牙に貫かれ、ドバドバと出血しているはずだが、叫び声一つ上げず、ただその様子を見守っている。
(あれ? あんなに血が出てるのに、痛そうじゃない?)
その不自然極まりない状況に違和感を覚えたルカは、周りを見渡した。
その結果、上空に浮かぶ何かを発見した。それは先程ファースト・ドライヴが投げ捨てたと思われる光の塊だ。どうやら捨てたわけではなく、一旦上に置いて、奇襲のタイミングを伺っていただけのようだ。
『あれは……! ケルちゃん下がって!』
ケルちゃんの耳に届く前に、光の塊は落とされた。
ケルちゃん本人がそれに気づいたのは、直撃する二秒前。回避という選択肢が頭に浮かぶか浮かばないかくらいのタイミングで、ルカが動き出した。
『風の精霊よ、私に力を与えたまえ!』
手のひらから竜巻レベルの風を流し込み、ケルちゃん共々全てを吹き飛ばした。
『ケルちゃん!』
ルカが届くはずのない手を差し出すと、ケルちゃんは剣に戻り、くるくると回転しながらルカの手元に収まった。
一方で吹き飛ばされたファースト・ドライヴは、光の塊を回収し、それを槍の形へと変貌させる。
それを投擲すると、一直線にルカへ襲いかかる。
無論、ルカはその槍を剣で弾き飛ばした。
しかし、その槍は弾かれて終わりではなく、分裂し、再びルカへリベンジする。
これは想定外……ではなかったようで、ルカは既に“重力の精霊”の力を使い、槍達は地に墜ちたまま、その力を振るうことはなかった。
さらに猛攻が続くかと思いきや、ファースト・ドライヴは祝福するようにぱちぱちぱちと拍手を鳴らした。
『素晴らしい。流石ですわ、ルカさん』
『……?』
ルカは彼女の突然の賞賛に首を傾げるが、警戒態勢だけは解かない。
『セカンド・ドライヴ君から教わったのですね。相手が何をしようとも戦いが終わるまでは武器を置くな、とかですかね。あの人なんだかんだお人好しですわね』
『……』
ここで談笑するつもりはないと、ルカは無言を貫く。
『私と話すつもりはないと。まあいいでしょう。それよりも私が何故肩を噛まれても痛がらなかったのか気になりませんか?』
そう言うと、ルカは気になっていたのかピクッと身体を動かす。
その動作をしっかりと確認したファースト・ドライヴは不敵な笑みを浮かべ、次のように答えた。
『では、教えてあげましょう。実は私……分身なんですよ!』
『分……身……???』
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