第451話『試合のその後④』
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――俺は唐突に夢から解放された。
現在の時刻は午前3時。真夜中とも早朝とも言いづらい実に中途半端な時間だ。こんな時間に起きた原因はたいてい突然の尿意に襲われるか、悪夢を見た時のどちらかだ。
だが今回はどちらでもない。ただ悪い報せを未来のマーリンから聞いただけだ。まあ悪夢といえば悪夢かもしれないな。
で、その報せの内容をまとめると、どうやらこの世界線は、セカンド・ドライヴが優勝しなかったことによって歴史が変わり、このままだと俺の知る未来へ帰れなくなってしまうようだ。
しかし、完全なるゲームオーバーというわけではない。
マーリンが言うには、今の状況を船でたとえるなら、少し間違えた方向に舵を切ってしまったということだ。
つまり、そこから再び舵を切って、正しい道へ戻れば問題なく目的地までたどり着けるのだ。
加えて、今回の歴史の離反はそんなに大きいものではないので、軌道修正もそれほど難ではない。
今回の事で発生したタイムパラドックスは、セカンド・ドライヴが優勝しなかったことで、俺達が思ったより強くなれなかったことだ。
それは優勝賞品である願いを一つ叶える権利に関係する。
セカンド・ドライヴの願いは、自分を含む全員がより強くなれるような施設がほしいというもの。
どうやら、あの効率厨野郎は打倒ゼウスの為にできることは全てするつもりで、自分だけではゼウスに勝てないと結論付け、他の戦力……つまり俺達にもできる限り強くなってもらい、共にゼウスを討ち取る算段を立てていたらしい。
その結論はおそらくノルン様に未来の話を聞いたからだろう。未来予測できる彼女ならば、鮮明に状況を伝える事ができる。
俺はセカンド・ドライヴのことなんて、やはりきらいだが、そんなことを言っている場合じゃない。未来の為に、俺の快楽の為に、協力できることは何でもこなしていかないとな。
俺も結論が出たところで、再び眠りについた。今度こそ変な夢を見ないことを祈って――いたのに、またしても誰かがセッティングされたであろう場所に召喚されてしまった。
しかも、今回は――
『あれは……魔王城か?』
ただ魔王城が建っているわけではなく、半壊し、城という機能が果たされていない状態だ。
中を覗いてみると、そこに誰もいなかった。
だが、壁が溶けた跡や、床の七割ほどが焦げている。そして、誰かがそこにいたであろう跡……つまり血痕や衣服の残骸がそこら中に転がっていた。
どうやらこの夢は、全滅という名のBAD ENDにたどり着いた最悪の世界線のようだ。
『……』
何者かの襲撃を受けた、なんて見れば誰でも分かる。
『くっ……!』
夢とは分かっていても、心に来るものがある。
許さない。
だが、なぜ襲撃されたのだろう?
魔王城には確か部外者に認識されないように結界を張ってあったはず。仮にその結界を破ったとしても、魔王や赤髪ちゃんといった最強格の守護者がいる。
並の盗賊では話にもならない。もし、魔王城を襲撃できる者がいるとするなら――
『神の居城の守護神か』
ゼウス、プロメテウス、ウラノス、クロノス、ヘラ。
俺は一度も目にしたことがないが、あのアクタや魔王、地の女神であるアースでさえ、手も足も出なかったと聞いたことがある。
そんな奴らに、今の俺が勝てる道理など当然ない。一万年という人類にはあまりにも長すぎる時間でも、確かに針は動いている。うかうかなんてしていられない。
『こんな結末俺は認めない!!! 必ずハッピーエンドに導いてみせる!!!』
起こるかもしれない未来の光景に、宣戦布告をした。
この最悪な未来を変えてやる。
俺はとある特定の人物のであろう服の残骸を手に持った。
『必ず、助けに行くからな』
そう宣言すると、世界は幕を閉じ、元の世界へと意識が戻った。
時間は朝の七時。起床するには健康的にちょうどいい時間帯である。
結局あの夢は何だったのか? 一体誰が何の為に見せたのか、それとも天然素材で創られた夢だったのだろうか。
起床したばかりなのに、どういうわけか思考がはっきりしている。
なので二度寝はできず、そのまま起床を受け入れた。本当ならばルーティン中のルーティンである朝の支度をしたいところだが、身体が動かないのでそれすらもできない。
でも、手足の先端だけはちょっと動かせるようにはなった。
『ちょっとずつだが、回復はしてるみたいだな』
確かな前進に安心感を覚えた俺は、色々な思考を巡らせながら、看護婦であるヒルドさんに色々と支えてもらい、完全回復に努めた。
そして、俺の身体がまともに動くようになった決勝戦の日――
敗者の俺達は、決勝の舞台へと進むルカちゃんにそれぞれ言葉をかける。
『ルカちゃん、頑張って』
『はい、頑張ります』
その声には覇気が感じられない。どうやら緊張と不安に苛まれているようだな。
まあでもそうだよなぁ。相手はファースト・ドライヴだ。ただでさえ俺でも勝てないような奴なのに、一人で相手にしなければならないのだ。対立するだけで相当な絶望感だろう。
でも聞いた話では、ルカちゃんは今日この日までセカンド・ドライヴやあおいちゃん、パーシヴァル達に修行をつけてもらったみたいじゃないか。
数日ぶりにルカちゃんの姿を見たが、別人のように見違えた。容姿が特別変わったとかそういうわけじゃないが、なんというか……オーラが違う気がする。上手く言えないが幾つもの修行を乗り越えて強くなったバトル漫画の主人公のような雰囲気を感じる。
『大丈夫だルカちゃん。今の君は強い。下手したら今の俺よりも』
『ディーンさん……』
『君にこの言葉を贈るよ。この大会だけじゃなくて今後何が起きても、この言葉を思い出して欲しい。君は――』
俺はルカちゃんにある言葉を贈った後、みんなで決勝の舞台に立つ彼女を見送った。
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