第444話『サバイバルバトル〜VS怪物②〜』
大変お待たせしました。
更新が遅れてすみません。
第444話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
『やあああああああああ!!!』
『はあああああああああ!!!』
剣と拳の撃ち合い。時々魔法や精霊の力を使い、勝利への道を開拓しようとする。
それはまるでオーケストラの如く、音と音を響かせる。見る者が見れば、これは芸術だと心を躍動させるだろう。
まあ、尤も演奏会を開くほどの時間は残されていないのだが。
『きゃあっ!』
撃ち合いに負けて、押し返されたあおいとルカ。デバフに取り憑かれた彼を、二人がかりで攻めても尚、勝利を掴むビジョンが見えない。それほどまでに力の差が顕著に現れている。
しかし、あおいはそれでも諦めずに立ち上がり、世紀の大怪物に挑む。
『はああああああああああああああ!!!!!』
斬って、斬って、その度に硬い金属音が耳に入る。全て拳だけで弾かれている。
剣越しに伝わる気分が悪くなるほどの手応えが無さすぎる感触。絶対に斬れない概念を斬っているようだ。
青いオーラを全身に纏う一人の少女。その背後には赤い髪の戦士が控えているような、そんな気迫すら相手に感じさせる。
『……』
彼女の剣を全て受け切るセカンド・ドライヴ。少女に対し何を思うのか、口を開いた。
『もうやめたらどうだ?』
『……!』
あおいは、セカンド・ドライヴからの問いかけに耳を傾けつつ、剣を振ることをやめない。
『分かっているだろう? 貴様では俺に勝てないことは』
圧倒的な差があり、どう対抗しようとも勝てるはずがないと現実を叩きつける。
事実、現状彼女が勝てる道理はない。彼が重傷になるまで自害でもしない限り、敗北の道しか残されていない。
ゲームで例えるなら、負けイベントを勝つまでやろうとしているようなものだろう。負ける事で次に進めるイベントに反逆し、勝つことに拘っている。
あおいには諦めるという選択肢はない。たとえ勝つ可能性が全くなくとも、彼女は命ある限り、剣を振り続けるだろう。
『そんなことは分かってます。でも、たとえどんなに無謀でも意味はあります』
『いや、無謀は無謀だ。勝ちに拘るのは理解できる。しかし、勝てもしない勝負に固執し続けるものほど効率の悪い事はない』
『ええ、そうでしょうね。もし貴方と私と一対一ならこんな試合全くの無意味です。でも、今の私には仲間がいる……!』
『……仲間?』
あおいは、華麗な跳躍で一旦引き下がり、さらに口を開く。
『そうです、私一人で勝てなくても仲間が勝てば私の勝利なのです! ルカさん!』
ルカの方を見ると、彼女の剣にいくつもの色の小さな光が囲っている。
『あれは……精霊の力というやつか』
見たこともない景色に警戒するセカンド・ドライヴ。
『準備は完了です。あおいさん、時間を稼いでくれてありがとう。いつでも撃てるよ』
ルカの剣に吸収されるように光が入り込むと、剣は虹色のオーラを纏う。
(なるほど、無謀だと思われたあおいの行動はこのためのものか。この程度の企ても見抜けないとは、俺もまだまだだ)
『いくよ……』
剣先を相手に向けるように構える。
『数多の精霊よ、私……いや私達に輝かしい道を切り拓きたまえ!』
すると、オーラはルカの身体ごと包み、彼女の背中から虹色に輝く羽が授けられた。
まるで妖精のような姿をした彼女は、剣を振り下ろすと、斬撃と化したオーラがセカンド・ドライヴに向かって襲いかかる。
それがあまりにも綺麗な光景だったので、セカンド・ドライヴは思わず魅入ってしまった。それ故、一切躱す動作をすることなく、虹色のオーラに呑まれた。
セカンド・ドライヴに完全に命中した。するとオーラが天空を突き刺す勢いで伸び、この創り物の世界に不可思議な光景を刻み込んだ。
『やった……!』
渾身の一撃が命中し、あのセカンド・ドライヴに勝利したと確信し、歓喜するルカ。
『あ、一応本当に倒したか確認しなきゃ』
心が油断に支配される前に、最後の警戒作業を行った。
死体確認も兼ねて、オーラを放った場を見直すと、そこには――
『なっ……!?』
何事も無かったかのようにその男には傷一つなく、ただ衣服についた汚れを振り払っている。
『なん……で……?』
不可解だった。最終奥義とも呼べる切り札をまともに受けて少しのダメージすら無かったのだ。
彼女の奥義なら、どんなに防御が硬い相手でも、ある程度のダメージが入らないと道理が通らないはずだ。
では、目の前にいる“アレ”は何だ? どんな化物でもダメージが通るのに、彼はその遙か上――“神”とでも言うつもりか――。
困惑に心を支配される彼女に、彼は口を開く。
『まさかだと思うが、これがお前がしたかったことか?』
さらに彼は、お前の先程のアレは技ですらないただのマジックショーじゃないのかと付け加えるように言った。
ルカは屈辱と怒りで拳を強く握った。
『これなら普通に剣を振った方がマシだろう』
さらに酷評を容赦なく放つ。それはルカの心に深く突き刺さり、この先なかなか抜けることはないだろう。
すっかり戦意を失い、膝をついたルカ。
『ルカちゃん! 立ち上がるイヌ!』
彼女の武器が必死に言葉をかけるも、主人の心に届くことはなかった。
『ルカさん!』
ルカを案じたあおいは、彼女を守るようにセカンド・ドライヴの前に立ちはだかる。
『ほう、貴様はこの状況でまだ戦意が残っているようだな』
『まだ、負けたわけじゃないですから』
『そうか、どうやら貴様には何を言っても無駄のようだ。俺がお前たちに引導を渡した方が早いようだ』
セカンド・ドライヴは拳を引くと、その周辺を中心に風が吹き荒れる。まるで風が彼に従うかのように。
このまま二人を吹き飛ばす大技を発動して、この試合を終わらせる気なのだろう。そんな雰囲気を二人揃って感じ取っていた。
『させません!』
あおいは剣を突き立て、セカンド・ドライヴを妨害するも、風が邪魔をして近づけない。
顔を守るように腕を前に置きながら、彼女は剣に魔力を込めた。
『くっ……! 私だって……!』
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