第442話『サバイバルバトル〜これは魔法ではない〜』
大変お待たせしました!
体調不良により、更新が遅れてしまいました。
申し訳ございませんでした。
第442話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
剣に腹を貫かれた当人は、僅かに表情を強張らせてはいるものの、それほど慌てた様子はない。ヒルドさんとの試合で散々ぶっ刺されたからむしろ慣れてるだろう。
だが、そんなことは想定済みだ。
『しかも、それはただの剣じゃないぞ。その剣には魔法無効と身体能力低下の結界を付与している。少しでも傷がつくだけで十分に影響するぞ』
魔法も使えない、身体能力もデバフを喰らうという敵にとっては最低最悪、味方にとっては最高最強の戦法だ。
――そう、事前に仕込んでいたのはこれのことだ。
まともにセカンド・ドライヴと戦ったら、今の俺でも勝利を手に掴むのは難しいだろう。だから予め剣に魔法無効と身体能力低下の結界を付与した。
“ダストの記憶”で最近思い出した戦法だが、これまでの戦法よりもめちゃくちゃ強くて草。もうラスボスまでこれでええやん。まあ、傷一つすら入らなかったら意味ないけどな。
『どうだ? 気分は?』
まるで悪役のように振る舞う俺。人は嫌いな奴より優位に立つと、ここまで悪くなれるのか。
『最悪だ』
スカしたイケメン野郎はただ簡潔に感想を述べた。
どうやら結界がよく効いているようだ。
特にあの妖怪効率男は、その性格上、能率が悪くなるデバフを誰よりも激しく嫌うだろう。ざまぁみろ。
何はともあれ、この状況なら倒せるぞ。
『じゃあ、とどめを刺させてもらう』
俺はルキウス直伝の光魔法を発動しようとする。
――これで一つの脅威は退けた。あともう一つの脅威はファースト・ドライヴだが、あとで対策を考えよう。
すっかりセカンド・ドライヴを倒した気になった俺だが、その効率イケメン男が口を開く――
『とどめだと? 貴様、何か勘違いしてないか?』
『は?』
勘違いも何も、そんな状態じゃ反撃することも躱すこともできないだろう。一体何を勘違いしてるというのか。
『何を言っている? 今のお前にできることなんてないはずだ』
『確かにこの結界は厄介だ。魔法も使えなければ身体も重く、まともに戦うのは難しい』
『そうだろう? だからとどめを刺すって言ってんだ』
『俺がいつこの状況では何もできないと言った?』
『なに……?』
セカンド・ドライヴは自分に刺さった剣を抜き捨て――気がついたら、俺に向けて拳を振りかざしていた。
『なっ……!?』
間違いなく身体能力低下してるはずだが、それを一切思わせないほどの速さで俺を殴りつけた。
が、一応防壁魔法は張ってあったので事なきを得た。
『防壁魔法か』
セカンド・ドライヴは突き出した拳を一旦収め、何やら呪文らしきものを唱えると、見たことのない黒と紫を混ぜたような色をしたオーラが拳に集約した。
『そんなバカな……だって魔法は結界で使えないはずだ!』
『これは魔法ではない。呪術だ』
『――呪術』
一週間にゾンビ男から黄金達と共に逃げてた時に現れた、イーブルによく似た謎の男。こいつが確か呪術とか言って人をゾンビとして操ったとか言ってたな。それにこの力は“あの方から授かった裏技”だとか。
まさか――
『なあ、セカンド・ドライヴ』
攻撃の真っ最中だが、気になりすぎてしょうがないので空気を読まずに話しかけた。
『何だ?』
『人をゾンビにできる呪術を誰かに教えた事はあるか?』
『なんだそれは? 聞いたこともない呪術だ』
拳は光ったまま、律儀に質問に答えてくれた。
『知らないのか?』
『ああ、だが確かに呪術は魔法と同じように色々な可能性がある。そういうものが使われていても何もおかしいことはない』
『いや、でもこれって“裏技”なんだろ?』
『ほう、ノルンから聞いたのか?』
そういえばノルン様にも呪術について聞いてみたが、ちょっとだけ説明して、なんか途中ではぐらかされたんだよな。確か“あの人”とやらの話題が出たあたりから。
『いや、ちょっと前に俺の生徒がゾンビに襲われ逃げていた時に、ゾンビ化する呪術を使ったっていう男に会ってな。そいつが裏技だとかあの方がどうとか言ってたんだ』
呪術騒動の情報は全て提供した。セカンド・ドライヴの事は嫌いだが、一応味方ではある。共有しておいて損はないだろう。
『なるほど。それは妙な話だ』
光続ける拳はそのままに、少し考え込む。
うわぁ、めっちゃ光ってるぅ。お前への殺意忘れてねえぞと言いたげに存在感をアピールしまくってるぅ。
そのまま消えてくれないかなぁ……。
あれ? よく見るとさっきよりちょっと光が大きくなっているような……気のせいか?
『ふむ、これ以上考えた所で答えは出ないか……。一旦思考をリセットしよう。他に何か質問はあるか?』
質疑応答にめっちゃ付き合ってくれるじゃん。なんか効率厨野郎らしくないな。
『あ、じゃあ、セカンド・ドライヴは呪術を誰に教わったんだ?』
イーブルに似た男は呪術をあの方に教えてもらったと言っていた。この世界では呪術の存在自体が珍しい。それを教授できる者などほとんど限られているはず。
つまり、セカンド・ドライヴも“あの方”とやらに呪術を教わったのではないかと予想できる。もし、そうなら俺は地味に気になる“あの方”の真相に近づけるかもしれない。
『教わる? 違うな』
『違うって、どういうことだ?』
『元々だ』
『え?』
『俺はこの世界に召喚された時から、呪術を使える状態だった』
――誰に教わるわけでもなく、
――ただ必然的に、
――最初からそこにあったかのように、
其れは在った。
『え、そんなことがあるのか?』
『ああ』
『ほえー』
『ん、何だ、思ったより驚いてないな』
もっと俺がオーバーリアクションを取るのかと思ったのか、そう言ってきた。そして、拳の光がさらに大きくなっている気がする。
『いやなに、俺はまだこの世界のシステムを理解しきれてないからな。人によってはそういうこともあるだろうと思うだけだ』
まあ、驚いてないと言えば嘘になるが。
というか、羨ましい! 他の人にはない力が自分にはあるって厨二病なら喉から手どころか足が出るほど欲しいステータスじゃねえか! ずるいぞ! イケメンのくせに!
『そうか。まあ確かに俺も全部を理解しているわけではない。むしろ理解してる部分の方が少ないくらいだ』
『え、そうなのか?』
『ああ』
セカンド・ドライヴって何となく頭も良くて何でも理解できそうなイメージだったが、意外と知らない事も多いんだな。
嫌いな事には変わりないが、何だか少しだけ親近感が湧いてくる。
セカンド・ドライヴに対する好感度が少しだけ上がった時、ずっと横で見守っていたあおいちゃんが――
『ダスト様! 逃げて下さい!』
『え、なに、どういうこと?』
『彼から離れて下さい!』
セカンド・ドライヴから離れろってどういうことだ? そう思って、何となくセカンド・ドライヴの手元に視線を移してみると、黒紫色の光が小さい龍の形となり、蛇のようにうねらせている。
なんかちょっと目を離した隙に、とんでもないことになってるーーーーー!?
『ふむ、バレたか。ならば仕方あるまい』
セカンド・ドライヴは自白同然のセリフを吐き、拳を振りかざす。
ああ、どうやらこの呪術には、この形態になるまで時間がかかるようだ。その時間を稼ぐためにあえて俺と話し相手になったということか。道理でこの効率野郎にしては長々と話すなとは思ってたんだ……。
――だが、それでもまだ防壁がある。俺に攻撃なんて通るはずがないんだ。
『呪いの暗黒龍』
技名らしき名を発音してから拳を突き出した。
いや、なにその厨二ネーミング。もっとちょうどいい感じの技名無かったの?
なんて考えていると――
『え?』
俺の腹は黒紫色の龍に貫かれていた。俺の目の前に張っておいた防壁すら喰らい――
『うそ……だ……ろ……』
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