第439話『サバイバルバトル〜最後の抵抗〜』
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――時はほんの数秒だけ遡る。
ファースト・ドライヴが最後の抵抗と言わんばかりに拳銃をフレイに投げた直後、彼女は足元に投げ捨てたばかりの拳銃を拾い上げた。
そして現在、銃口の先に再びフレイを定めた。
その銃の弾丸は先ほど切れたはずなのに、まるで今から撃つぞと宣言するように――
『残念でしたね』
ファースト・ドライヴは相手に同情する風の勝利宣言を発すると、魔法を込めた鉄の弾を放った。
バァン!
『ぐあっ!!!』
今度こそまともにフレイに着弾した。
『ぐ……ぐぁっ……!』
手で直接傷口を押さえると、そのまま前に倒れ込んだ。
『う……はぁ……はぁ……』
病人のように傷口を押さえたまま、苦しそうに唸る。
――視界がボヤける。
――瞼が重くなる。
身体が意識を強制シャットダウンするように命じているようだ。これに逆らう事は不可能だ。
フレイの電源が完全に切れる前に、
『な、なぜ……その銃に……弾が……?』
弾丸が無いはずの拳銃になぜ弾が入っていたのか、その真相の解明を求めた。
『なるほど、一度投げ捨てたはずのこの銃に何故銃弾が入っていたのか知りたいのですね』
フレイは返事もジェスチャーすらもせずに、目だけで知りたいと訴えた。
『それは単純に銃弾を補充したから――ではなく、あえて銃弾を残した状態で投げ捨てただけなのですよ』
弾が無くなって邪魔になったから捨てたのではなく、そう思わせるために捨てただけだと解説する。
『けっ……すっ、かり……騙さ……れたって、こと……か……』
フレイは自分への失望を口にすると、満足したのか、眠るように意識を失い、その直後に天から召されるように上からの光に呑まれて姿を消した。
飛ばされた彼女はきっと今頃、治癒魔法をかけてもらっているか、ベッドの上で適切な治療を受けているかのどちらかだろう。
これにてフレイは脱落した。残りは六人だが、重傷を負った早乙女わかなもこれからファースト・ドライヴにとどめを刺される運命だ。
『ふぅ……』
残りは二弾。今、早乙女わかなにとどめを刺すには十分な数だ。
『これでやっと結界魔法を解除できる』
銃口を早乙女わかなに向ける。
『くっ……!』
負傷した足はもちろん治癒する手段はなく、血を流したまま痛々しさを表現している。
『さて、わかなさん、お待たせしました。次はあなたです』
このまま貴女にとどめを刺します、と宣言する。
早乙女わかなにはこの状況を覆すだけの策はない。彼女が逆転勝利する未来は完全に絶たれている。
ファースト・ドライヴが早乙女わかなの拳の射程範囲内に立たないように距離を置いている限りは――。
『大丈夫ですよ。貴女の娘さんが幸せになるチャンスくらいは見計らってあげますよ』
わざわざこの大会に優勝せずとも、私が貴女の願いを叶えてあげるとファースト・ドライヴは約束した。
『む、そうか。それは歓喜な申し出であるが』
願いが叶ってラッキー、とはいかない早乙女わかな。
『何か不満でも?』
『個人的な話だ。我の手で勝利を掴めなかった事を悔いているのだ』
純粋に――ただ勝ちたかったと、声を上げた。
『まあ私は未来の魔法を使っている分、かなり有利でしたから、貴女もいずれ未来の魔法を使えるようになれば、もしかしたら私に勝てたかもしれませんよ』
もし早乙女わかなが未来の魔法を使えれば、ファースト・ドライヴが負ける可能性も存在した。
それはフレイも同様、それだけの潜在能力がある。
『其れでも敗北は敗北。我も修行が足りない。運命の時までには必要な力を取得せねばな』
『そうですね。この大会も元々その為のものですからね』
『うむ』
『――話の続きはあとでしましょうか』
この大会が終わった後にゆっくりと――
『そうだな。だがその前に――我の最後の賭け、見るがいい!』
早乙女わかなは床に拳を押し付け、地割れを起こす。
『なっ――』
驚愕する間に床から海の水が凄まじい勢いで溢れ、空洞は完全に魚の住処へと変貌を遂げた。
『――――』
――ここは海の世界。海の生き物が住む世界。人間の居場所はここにはない。早く陸に上がるがいい。ではければ溺死するだけだ。
そう言われている気がするが、海の生き物などこの仮想世界には存在しない。が、人の居場所が無いのは確かだ。
早く地上の空気を取り込まなければ、人類である彼女らは海に亡骸を晒すこととなる。
しかし、ここは元々島の下層部。地上に上がるには多少の距離がある。しかも海の流れが激しく、思ったように前に進めない。水泳が得意ではないファースト・ドライヴにはかなり厳しい状況だ。
この窮地を逃れるには、魔法を使うしかない。だがこの周辺ではまだ結界魔法が機能していて、魔法が使えない。
実質術者である早乙女わかなを早急に仕留めるしかない。それがファースト・ドライヴに残された唯一の生存方法だ。
(まずいまずいまずい、このままじゃ溺れ死ぬ! ……しかし、やられた……まさか、わかなさんがまだ勝負を諦めてなかったなんて……!)
相手の動向を読めない自分も、勝ちを確信し、慢心を覚えてしまった自分に憤りを感じる。
人にどうこう言えた義理なんてないじゃないか。
(だけど、もう過ぎた事は仕方ない。落ち着け、私が今やるべきことは――)
実質死の世界でもある海の中で、狙撃者は標的に銃口を向けるも――
早乙女わかなの姿はそこにはなかった。が、遠くには行ってないはずだ。
息もできないこんな世界にわざわざ居座るなど考えづらい。
大体予想はつく。
(上だ)
早乙女わかなは傷が無い方の足とたくましい両腕を使い、自分一人だけ地上へ上がろうとしている。
片足が動かない上に、泳ぎを妨害するほど海の流れも強いはずなのに、もう既に海の天井である水面の近くまで泳いでいる。
さすが異常なまでの身体能力を有するだけある。と賛辞を送りたいところだが、そんな場合ではない。
もし、早乙女わかなが地上へ逃げれば、ファースト・ドライヴは魔法を封じられたまま海の底だ。
(逃がすか!)
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