第437話『サバイバルバトル〜結界の中の魔法使い〜』
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『お二人共、動かないで下さい!』
ファースト・ドライヴは懐から拳銃を二丁取り出した。
一つはフレイに、もう一つは早乙女わかなにそれぞれ銃口を向ける。
射程範囲内に収められた二人は、少しだけ驚愕の表情を浮かべたが、すぐにいつも通りのテンションで口を開いた。
『まさかそんなものを隠し持っていたとはな』
『んだよ、銃とかみみっちい武器なんて使いやがって! 男なら拳でドンと構えやがれってんだ!』
フレイはそう言って拳で空を裂く。
『いや私、男じゃないんですけど』
まあ、確かに男装が趣味ですが。と付け加えた。
『それでどうする気だ?』
『もちろん、このまま撃ちます』
『撃ったところで、弾丸など容易に振り払える』
『俺も銃弾くらい避けようと思えば全然避けれるぜ』
弾丸を放ったとしても、二人なら難なく対処できる。が、それは普通の弾丸だったらの話だ。
『私が持っているこの銃はただの銃ではありません。魔法で作られた特別な銃なのです』
これは後に”魔法銃”と名付けられる。魔法を弾として銃に装填し、込められた魔法を弾丸のように放つことができる。
たとえば、炎魔法を魔法銃に込めれば炎の弾丸ができる。他には水、雷はもちろん、転移魔法のように攻撃魔法ではない魔法も可能だ。ただその場合は、撃った先が転移の対象となり、転移先もランダムな為、実用性は低い。
『魔法で作られた銃だあ?』
『忘れたか。ここには結界魔法が――いや、そうか。そういえばそうだったな』
早乙女わかなは何かを思い出し、納得した模様。
『ええ、この魔法を無効にする結界は文字通り魔法が使えません。ですが、既に発動した魔法は無効にできるわけではありません』
魔法銃に魔法を込めた時点で、魔法の発動は完了している。トリガーを引く行為自体は魔法の発動ではない。
実はファースト・ドライヴが持つ魔法銃には既に弾が込められている。こういう事態の為に昨夜から準備していたのだ。
ただし、この結界内では新たに弾を込める事は不可能だ。なので今装填している弾だけがファースト・ドライヴの唯一の武器だ。
彼女が持っている魔法銃の弾の数は六弾。それが二丁あるので合計十二弾。
強豪揃いの大会を制するにしては少々不安を覚える数ではあるが、魔法銃は一弾一弾の重みが普通の弾丸とは大きく異なる。
バァン!!!!!
一発目が放たれた。――それはあまりにも速く――まっすぐに早乙女わかなの踵を貫いた。
『ぐ、ぐおおおおおお……!』
早乙女わかなは、負傷した踵を押さえた。傷からは血が流れただけではなく、小さな稲妻が火花のようにバチバチと放出している。
『今回のは、雷魔法を込めた弾丸を撃ってみました。どうでしょうか? 痛いだけじゃなくてビリビリするでしょう?』
『雷魔法の……弾丸か……』
(そんなバカな。弾丸程度であれば拳で弾くことも、避けることもできた。最悪当たったとしても、これほどのダメージを受けることはない。全て我の鍛え抜かれた肉体が守るからだ)
『しかし……参ったな……これは、どうしようも……ない』
絶対的な自信の表れである強靭な肉体ですら、弾丸の餌食となることを許してしまった。
『な、なにがあったんだ……!?』
先程放たれた弾丸が速すぎて、フレイは早乙女わかなの身に何が起きたのか理解できていない。
攻撃された、とは思うが、何でかまでは分からない。
しかし状況的に考えるのなら、銃口を握る者がいて、トリガーを引く指がある以上は弾丸で攻撃したのだろうと結論づけるしかない。
では、あの速度は何だ? 普通の弾丸の比ではない。
普通の弾丸の速度ならフレイでも見極める事ができるが、あの魔法銃は速さも攻撃力も別次元と考えるべきだろう。
『ちっ……!』
魔法銃の恐ろしさを知ったフレイは、標的にされないように高速で部屋中を駆け回った。
『ちょこまかと……』
一方で早乙女わかなはもう動けない。いくら戦闘能力に長けていても、機動力である足が負傷してしまえばただの石像同然だ。もし彼女が遠距離から攻撃できる手段があれば幾分かマシな戦いが出来ただろうが、魔法を使わない戦闘が主流なので、今大会での活躍はほぼ期待できないだろう。
『わかなさんはどうせ動けないでしょうから、あとでとどめを刺すとして、今はフレイさんを狙いましょうか』
二丁の魔法銃は、フレイに標的を絞った。
しかし、常に高速で動き回る標的を撃つのはかなり難易度が高い。連射してフレイを牽制したいところだが、残りは十一弾、早乙女わかなにとどめを刺す用に一弾は取っておきたい。なのでフレイとの戦闘で使える弾数は実質十弾。大して射撃の練習もしていないファースト・ドライヴには、より重い緊張がのしかかる。
『ここだ!』
バァン!
二発目が軌道を走った。が、そこにフレイは居らず、代わりに石の床が少し抉られ、そこから水が僅かに溜まっていた。
『この!』
バァン!
三発目が続いて空を滑らせた。しかし、やはりフレイの姿は着弾地点にはなく、石の壁が身代わりとなった。そこから僅かに発火したのだが、すぐに消え去った。
『なかなか当たりませんね……』
残りは八弾(プラス一弾)。二回連続で外した以上、ここからはより慎重になって撃たなければならない。
ただ闇雲に撃ってもフレイに当たる気がしない。常に高速で動き続ける的を当てるようなものだ。それを射撃精度ド素人レベルの彼女が成し遂げる可能性などほぼ無に等しい。
それでも、どうにか隙をついて発砲するしかないのだが、その隙はどうやって作ればいいのか。
――考える。
――頭を回す。
――計算する。
彼女の脳はあらゆる未来を想定し、策を捻り出そうと必死だ。
しかし、そうこうしている内に、フレイもアクロバティックに動きつつ、ファースト・ドライヴを直接攻撃する作戦を決行している。が、拳を出す瞬間と出した後には必ず隙が出てしまう。特に拳を出した後はかわされた場合、至近距離で撃たれる時間を十分に与えてしまう。
だからフレイも慎重に動かなければならない。必ず拳が当たる瞬間を狙っているのだ――
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