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第436話『サバイバルバトル〜地中の幸運〜』

お待たせしました。

第436話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※文字数多めです。

 ――数分前。


『フン!!!!!!!!』


 防壁の基盤である大地を、早乙女わかなが拳で割った。


 亀裂が蛇のようなクネクネとした動きで島を侵食し、やがて大きな穴となった。


『よし』


 早乙女わかなは、その亀裂の中に入り、降下中に目の前の壁に穴を開け、そこから掘るように上に進むと、謎の白い看板のようなものを発掘した。


『ん?』


 “おめでとうございます。ボーナスタイムスタートです”


 ポップな自体でこのように大きめに記されていた。


『何だ此れは?』


 地中の世界にふさわしくない奇妙な看板。タイムカプセルにしては丸裸の状態で埋まっている。そうなると当然土被りになっているはずなのに、この看板には土どころか汚れ一つついていない。まるで誰かが意図して埋めたような、作為的なものを感じる。


『此れはおそらく――』


 首謀者に気づいた時にはもう既に()()()()()()は始まっていた。


『なんだ?』


 ――その違和感を覚えた刹那、世界の時は停止した。


 ただ一人と首謀者を除いて。


『音が消えた……?』


 今、真上ではフレイとファースト・ドライヴの二人が戦っている。戦闘音は先程まで早乙女わかなの耳に入っていたが、一時停止ボタンを押した直後のような静寂が代わりにこの世界を支配していた。


『まさかもう勝負がついたのか?』


 音が消えたもう一つの可能性、それはフレイとファースト・ドライヴの戦いに幕が下りた時。しかし、その可能性は極めて低い。特にファースト・ドライヴにはあらゆる脅威から身を守る魔法を持っており、この刹那的な時間で決定打となる一撃を貰うとは考えづらい。フレイも、実力があり根性もある。どれほどの強敵が襲ってきても、短時間で意識を奪われるほど柔ではない。


『ということは、やはり』


 時を止めた犯人の名を口に出す前に、彼女がいた世界は白い何もない世界に塗り替えられた。


『む』


 そして、その人物……いや女神様は現れた。


『ノルン様か』


『早乙女わかなさん、おめでとうございます』


 パチパチと拍手をし、祝福の言葉を述べた。


『何故我に祝福を?』


『この看板を見つけた人に、大会を有利に進める特典が貰えるからですわ』


『特典?』


『ええ、説明しますわ』


 今回のこの特典の内容は、未来の魔法を一つだけノルン様に代行して使うことができるというもの。例えば転移魔法を選択すれば、早乙女わかなはこの大会の間、好きなタイミングで転移魔法を使うことができるのだ。


『――以上が、この特典の内容です』


『理解した』


『未来の魔法といっても、星の数ほど種類があります。なので、こちらをお貸しします』


 ノルン様は、未来の魔法の全てが記載されている本を早乙女わかなに渡した。


『陳謝する』


 早乙女わかなは、しばらく無言のまま熟読する。


『悩んでますわね〜、まあ、そうですわよね。この選択が運命を分けることになるんですからね〜』


『ノルン様。すまないが、少し(もく)してもらえないだろうか? 集中できぬ』


『あ、はい。ごめんなさい』


 それから数十分が経過した。早乙女わかなは未だ熟読中。ノルン様は彼女の言いつけを守り、静かにその場に留まっている。


 さらにそれから数時間、早乙女わかなは未だ十分の一すら読み切っていない。


 彼女の本を読む速度は人よりやや遅めなのは確かだが、この本のボリュームも相当多い。読むのが速い人でも最低でも丸一日はかかるだろう。


『……』


『……』


 暇だなーと思い、口に出したいノルン様。しかし、今は彼女には本の熟読に集中してもらわなければならない。そうじゃないと、余計に時間がかかることになる。


 分かっている。分かっているのだ。決して早乙女わかなを困らせたいわけではない。だが、喋ってはいけないこの空間に何時間も居るのは、女神であっても精神的に苦しいものがある。


『……』


『……』


『…………』


『…………』


『………………』


『………………』


 ……………………………………………………。


 ……………………………………………………。


『……………………』


『………………もう』


 彼女の心から思いが込み上げてくる。


『限界ですわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』


 発狂するノルン様。


 長時間静寂を決め込んでいた分が爆発したように彼女の心を騒然とさせる。


『こんな長時間静かになんかしてられるわけねえですわああああああああああああああああああああ!!!!!! キエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!』


 とうとう噴火してしまった彼女は、何の意味もなく飛び上がったり着地したりを繰り返し、それから大して強くない拳を交互に突き出し、めっちゃ細い脚を少し振り上げ、素人丸出しの蹴りを繰り出す。


『……』


 早乙女わかなは完全に集中しているのか、そんなノルン様の奇行など気にもとめず、ただ目で文字を追いかけ、理解する作業に没頭している。


『イヤッホオオオオオオオオオオオオオイ!!!!!』


 ノルン様の特異な行動は止まず、誰かがやめろと言うか己の気力・体力が消沈まで続くだろう。


 ――それから3日後……。


 早乙女わかなは、ついに本をパタッと閉じた。


『完読した』


 そして、未来の魔法を全て理解した。


『ふむ、実に良い勉強となった。陳謝するぞ、ノルン様……ん?』


 早乙女わかなが目を向けると、そこにはブリッジをして『うるせえ、ばーーーーか、ばーーーーか!!!!!』と誰かを罵倒するように奇声を上げるノルン様の姿があった。


『何をやっている?』


 早乙女わかなは、この異様な光景を見て呆気に取られながらも、冷静さを保ちつつ、ノルン様(やべーやつ)に職務質問をする。


『何って、暇だったからブリッジしてるんですわよ』


 ノルン様は何の恥ずかしげもなく、今自分がしている事を簡潔に伝えた。


『ふむ、そうだったか。ところで下着が見えているが大丈夫か?』


 ブリッジしたことにより、神聖な布が見えている。それに気づいたノルン様はスカートを伸ばして覆い隠した。


『おっと、これは失礼。はしたないですわ』


 少し頬を赤らめ、恥のない姿勢に正した。


 コホンと咳払いをすると、女神らしい顔を作り、本題に入った。


『では、早乙女わかなさん。魔法は何を選択致しますか?』


『我が選ぶ魔法は――』


 選択した魔法を口に出すと、ノルン様は『了解致しました』と承諾の返事をもらった。


『これにより貴女の選んだ魔法は、この大会中のみ使用可能となります。使用する魔力も私が全て肩代わり致しますので、どうぞご自由にお使い下さい』


『承知した』


 こうして話は終わり、気づいたら元の場所……ではなく、島の下層部である空洞にリスポーンした。


 地中に復活すると、何かシステム的に良くないからだろうかと考えるが、今はそれよりも大会に集中するべきだと自分に再考させ、時が止まっている間に考えた作戦を実行した。


 その作戦の最初の一歩としてフレイとファースト・ドライヴをここに連れてきた――


『というわけだ』


 時は戻り、島の下層部にて回想(せつめい)を完了させた。


『なるほど、そういうことですか』


 戦闘は一時中断し、フレイもファースト・ドライヴも早乙女わかなの話に真剣に聞き入っていた。


 だが、話が終わるとフレイは、


『けっ、んだよ。結局てめえがラッキーだったってだけの話じゃねえか』


 もっと壮大な話を期待していたフレイは、途端に興味を失くし、もういいからさっさと戦おうぜと言わんばかりに拳を構えた。


 これも十分壮大なはずだが、未来の魔法や未来人の存在のせいで感覚が麻痺しているようだ。


『うむ、そうだな』


 早乙女わかなも、戦闘の再開を望んでいるのか不敵な笑みを浮べながら拳を構えた。


『……』


 ファースト・ドライヴ的には、結界魔法が張られたこの空洞で戦うのはかなり不利だ。


 早乙女わかなが選んだ魔法は結界魔法。それも魔法を無効にする結界だ。


 ファースト・ドライヴの戦闘手段は魔法のみ。その魔法が無効化されるとなると、もはや丸腰の弱々しい少女以外の何者でもない。


 だが当然、ファースト・ドライヴも決してこの展開を想定してなかったわけではない。未来の魔法を使うのはなにも自分だけではない。ダストやあおいちゃん、セカンド・ドライヴが結界魔法を使う可能性もゼロではないのだ。


(あまい、あまいですよ早乙女わかなさん。この程度で私を封じたつもりでしょうけど、私にはこういう時のための策があるんですから)


第436話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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