第434話『サバイバルバトル〜狂戦士はそれでも立ち向かう〜』
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――まただ。
私はまたしても殴られた。
熱い。身体も心も熱い。
(全く、今は男装してるから紛らわしいとはいえ、私だって元はか弱い乙女なんだぞ。少しは加減くらいしてほしいものだよ……)
ファースト・ドライヴは考えた。
防壁魔法を破った彼女達に次はどのような試練を与えようか。
とはいってもフレイ。彼女は明らかに一人だけでは攻略できなかった。ただ感情のままに暴力を行使するだけ。それではただの不良と何ら変わらない。
そうはいっても、彼女は変わる気などないのではないか?
いいえ、彼女は変わります。
一応フレイにも洞察力がある。ちゃんと心を冷静に留める何かがあれば彼女だって、あるいは――
強烈な一撃を叩き込まれたファースト・ドライヴ。周りの生い茂った緑も巻き込まれ、宙に舞った後は死体のように地に落ちていくのみ。
『いたたた……』
ファースト・ドライヴは殴られた箇所に治癒魔法をかけながら、立ち上がる。
すっかり痛みが抜けた身体は身軽さを取り戻し、戦闘モードに再起する。
『治癒魔法か』
『ちゆ?』
『怪我を治すことだ』
『なに! 回復しやがったのか!』
せっかくぶん殴れたのに無駄になったのかよ、とさらに憤るフレイ。
『その通りです。さてどうします? 防壁を破ったところで、魔力ある限り無限に回復できてしまいますが、どう攻略しますか?』
などと問題を出す教師のように言い出すが、本人は本人で、ノルン様の要望に応えつつ勝利する計画を構築している。
二人には未来の魔法に対抗できるように遠回しな稽古をつけ、最後の最後にとんでもない無理難題を押し付けて、勝利を収める。このように考えている。
しかし戦闘自体は全力だ。ただ限られた中での最善を尽くすといったところだが。
さすがのファースト・ドライヴも、早乙女わかなとフレイの二人を相手するのに舐めたプレイはできない。
『うむ、無限治癒であるか……どうしたものか……』
腕を組んで頭を回す早乙女わかな。
『フレイよ、何か案はあるか?』
『あぁ? 俺はいつからてめえとチームを組んだ? 言ったはずだ。俺の邪魔をするなとな!』
戦いに割り込む選手を睨みつける炎の戦士。しかしそう言ってる彼女も最初、二人の戦いに水を差したのだが、そこはツッコまずに話を進める。
『……恩着せがましいが、先ほど貴様がファースト・ドライヴに攻撃することができたのは我が手助けしたからだ。作戦もろくに立てられない貴様にそれが可能か?』
図星を突かれたフレイは、表情をさらに怒りで歪ませ、拳を強く握り、今にも手が出そうな勢いだが、早乙女わかなの言葉に反論はできなかった。
フレイ自身も、確かに一人ではまともにダメージを与えられないと分かっていた。ろくに案を立てず、ただ感情に身を任せ、戦い続けることがどれだけ無謀で醜いか。
――でも、抑えられない。俺はとにかく怒らねえと殴らねえと俺の中の怒りが発散できねえ。
『んなこと分かってらぁ、だが俺は、それでも戦う。目の前に目標がいる以上、たとえどんなに厄介な敵だったとしても、殴ることをやめねえ!』
フレイは効率よりも信念を優先する。
どれだけ高い壁だろうと壊れるまで衝突し続ける。
まさに猪突猛進。戦いに飢えた狂戦士。
彼女にふさわしい称号を連想している間にも、炎の戦士はしびれを切らして、張り直された壁を殴り続ける。
――ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン――
工事を実施してるような打撃音が響き渡る。
無論、防壁魔法の術者にはダメージ一つない。
『だから殴り続けるだけじゃ無駄ですって、せめてさっきわかなさんがやったみたいに地面にヒビを入れるとか、工夫の一つでもしてみて下さいよ……』
呆れながらも、敵にアドバイスを送る。しかし、当の彼女は聞く耳を持たない。
なんて非効率な人なんだ。これじゃいくら彼女の力が強くても、その真価は発揮されないままではないか。
常に効率を求めるセカンド・ドライヴとはまるで真逆だ。
『うむ、仕方あるまい』
早乙女わかなは、フレイとチームを組むことを諦め、二人の戦いに拳を入れる。
『フン!!!!!!!!』
魔法に頼らない戦士は先ほどと同じように地割れを起こした。
すると、ファースト・ドライヴの防壁は倒れて再び無防備な状態となった。
せっかくのチャンスだが、フレイは攻撃を止め、地割れをした犯人に睨みつけた。
『だから割り込むんじゃねえよ! てめえから潰してやってもいいんだぞ!』
フレイの目標をファースト・ドライヴから早乙女わかなに切り替える数秒前、その本人は既に姿をくらましていた。
『あ? あいつはどこだ? まさかあいつも未来の魔法を!』
まさに魔法のように消えてしまった早乙女わかな。しかし彼女は未来の魔法どころか現代の魔法すら使わない。故にこのような芸当は不可能なはずだ。
すると空か? いや、空には何一つ舞っていない。となると海か? いや、海から音がしない。
では一体どこに――――――
『まさか……!!!』
この時、ファースト・ドライヴは一つの可能性を思いついた。空でもなければ海でもない。だが地上にはいない。となると他に唯一その姿をくらませることができるのは――
『地中だ!』
それに気づいた時にはもう遅かった。
地面から生えたかのように、大きな手がファースト・ドライヴの足を掴む。
ホラー展開を思わせるような光景に、掴まれた本人は恐怖心を抱いた。
いや、分かっている。この手はわかなさんだ。きっと地割れした後にそのまま裂け目に飛び込み、そこからさらに穴を開けて、掘るように上へ進んで、このように地中から私の足を掴むことができたんだ。
『くっ……』
掴む手を振り払うように足を動かそうとするが、早乙女わかなの力が強すぎて一ミリもたりとも動かせない。
フレイはそれを好機とは思わず、むしろ怒りの感情だけが浮かび上がっている。
『気に食わねえ……!』
フレイは、生えてきた手に蹴りを入れて妨害しようとする。
しかし、そんなフレイの行動を読んだかのようにもう一つの手がフレイの足元を襲う。
『マジかよ!』
捕まえたぞ、ともう一つの手はフレイの足を確かに掴んで離さない。
『くそっ! 何で分かった!?』
フレイのその疑問は解決しないまま、両者、地中の世界に引きずり込まれた。
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