第433話『サバイバルバトル〜とある脳筋は時に鋭い観察眼を持つ〜』
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『おらおらおらおらおらおらーーー!!!!!!』
戦いが始まると、フレイは真正面から、
殴る、殴る、殴る。拳から血という視覚的警告が流れてもお構いなしだ。
しかし、それも全て防壁魔法で弾かれてしまった。ダメージ0。
次に、
『セイセイセイセイセーーーーーーーイ!!!!!』
蹴る、蹴る、蹴る。オーダーメイド超高性能の靴が威厳を失うくらいボロボロになったとしても、蹴ることをやめない。
また防壁魔法で弾かれてしまった。ダメージ零。
さらに、炎の弾をいくつか作って、
『ヒャッハーーーーーーーー!!!!!!!!』
投げる、投げる、投げる。たとえ魔力が尽きたとしても、絞り尽くした歯磨き粉をさらに絞る時のように捻り出そうとするだろう。それでも出ないものは出ないが。
炎の弾が連射されたことによって、炎が広がり、ファースト・ドライヴの周りを囲うと、まるで爆炎に巻き込まれたような状況を作り出した。
これで壁ごと木っ端微塵だ! そうに決まっている。フレイは本気でそう思っている。
『やったか!』
フレイはフラグを立てるような台詞を吐いた。
案の定、防壁魔法で弾かれてしまった。ダメージZero。
『あーもう、なんでだよ!!!』
あまりにも攻撃が通らなさすぎて、指先に怒りを込めながら頭をかき始めた。
『いや、貴女私の試合見てましたの?』
トーナメント形式でのファースト・ドライヴの試合を見ていれば分かるが、彼女はがっつり防壁魔法を使っていた。オベイロンのように魔力の根源を見ることはできなくとも、ただ殴るだけでは意味がないことくらいは理解できるだろう。
『見てたけどよぉ、やっぱ分かんねえー!』
綺麗な髪が彼女の手によって翻弄されていく。せっかく整えた髪型も、まるで起床したばかりのようにぐちゃぐちゃになってしまった。
『コラ! 頭かかないの! 髪がぐちゃぐちゃになっちゃうでしょ!』
『てめえは、いつまで俺のかーちゃんやってんだよ!』
『マジレスするような娘に育てた覚えはありませんよ!』
『てめえに育てられた覚えがそもそもねえよ!』
『今、育ててるのよ!』
『強引すぎるだろ!』
戦いの最中に、ふざけた水かけ論が続いていく。
『あぁ、もう! ホントふざけんじゃねえよ!』
いい加減茶番になんか付き合ってられないと、拳を突き出すも、ファースト・ドライヴの目前で見えない壁に激突する。
『くそっ! 何で俺の拳が当たんねえんだ!』
『それじゃ当たるわけないでしょ……防壁を張ってるんだから……』
『壁ならぶっ壊せばいいんだろ!』
『壊せない壁なの、これ』
『あぁ? どういうことだよ……』
『物理的に壊すことができない、つまり殴ったり蹴ったりしても壊れることがないの! 分かる?』
『壊れねえ壁なんてあるわけねえだろ!』
『あるんですよ! さっき貴女が殴っためっちゃ硬え壁がそうです!』
『あぁ、なるほどな! 確かに硬え壁だったな!』
半ギレ気味の説明でようやく防壁魔法というものを理解したようだ。
フレイでなくとも、そもそも現代の人間に未来の魔法を理解するのはなかなか難しいところがあるのも事実だ。
だが、理屈は単純であるため、早乙女わかなのような分析もできなくはないが、頭が筋肉なフレイに、そんな器用な戦い方ができるかと言われると………………。
なのでこの戦い、残念ながら今のフレイには勝ち目がない。
ただ殴る事しか頭にない彼女に、防壁魔法の攻略は不可能だ。
『そうそう私の前にあるのは、どんな攻撃でも壊せない鉄の壁だ。それをどう攻略するか、それが君が成すべき課題の一つなのさ!』
まるで教師目線のように、フレイに試練を押し付ける。
同じ参加者のくせに何なんだと思われるだろうが、それも彼女の任務だ。
ノルン様はこの大会を通して、みんなに強くなってほしい。その意図を理解しているからこそ、ファースト・ドライヴは参加者でありながら、みんなの教師役のようなポジションに立っている。
『なんだてめえ、どういう目線で喋ってんだよ』
ファースト・ドライヴの不自然な物言いに違和感を覚えたフレイからごもっともなツッコミが飛んできた。
『私達ばかり未来の魔法を使ってるから不公平だと思ったので、ちょっとでもヒントを与える事で公平にならないかなぁと思いまして……』
それらしい理由を述べるも、フレイの表情は訝しいまま。
『てめえ、何か企んでるだろ?』
ファースト・ドライヴの裏に踏み込もうとするフレイ。先ほどよりもより強く目を鋭く光らせる。
『はて? 何の事でしょう?』
私は何も知りません顔でその場を凌ごうとする。
『とぼけんじゃねえ! てめえの目的は何だ!!』
声を荒らげて、ファースト・ドライヴを尋問する。
『目的? そりゃ優勝以外ないですよね?』
『てめえにはその優勝以外の目的があるんだろ?』
思ったより鋭い人ですね……と内心困惑しているが、決して表情には出さない。
まあ、ノルン様の思惑をバラすこと自体は特に大丈夫なのだが、問題はその先だ。話した相手によっては参加者同士は対等でなければならないのにこれではフェアプレーとは言えないと失望されたり、ブチギレられたり、と、何かしらの反感を買う可能性があるからだ。そうなれば信頼を失い、共に戦う仲間が減るかもしれない。
それを恐れているからこそ、ファースト・ドライヴは絶対に口を滑らせない。どんな手を使っても、この秘密は事が全て片付くまで心の中にしまっておくつもりだ。
『どうした、黙ってないで早く喋ったらどうだ?』
『だから私は何も知らないんですけどね……いいから早く戦いません? いい加減喋ってばかりで疲れたんですけど』
『確かにそうか、じゃあ力ずくで口を開かせてやるよ!』
フレイは性懲りもないのか、学習能力がないのか、またしても壁があるのに殴り続けた。
『まったく……だから言ってるじゃないですか……そんな方法じゃ――』
『不可能だ』
フレイの声ではない聞き覚えのある声がファースト・ドライヴの台詞を奪った。
『わかなさん!』
彼女の存在に気づいた時には、既に宙を舞っていた。
拳をファースト・ドライヴではなく、地面に向けている。
早乙女わかなは防壁魔法の弱点を知っている。だから彼女がやろうとしている事はすぐに分かる。
『しまっ――』
どうにかわかなさんを止めないと。と思う間もなく、拳は地面まで到達し、地割れを引き起こした。
ひび割れた部分がさらに引き裂かれ、防壁は地の底に墜ちていった。
『今だ、フレイ!』
フレイの味方に加わったかのように早乙女わかなはそう叫んだ。
当のフレイは、あまり良い顔をしなかったが、拳を引っ込めずに、無防備なファースト・ドライヴに向けて容赦なくぶっ放した。
『うおりゃあああああああああああああああ!!!』
顔面に見事に命中し、ファースト・ドライヴは勢いあまって軽くふっ飛ばされた。
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