第432話『サバイバルバトル〜正義と執念の炎〜』
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特別な力を持つ少女達の一角、炎魔法の使い手フレイ。
常に燃え上がる闘争心を剥き出しに多方面に喧嘩を売る姿は勇ましくもあり、落ち着きがないようにも見える。
実は色々な人から苦情が寄せられていて、ぶっちゃけすげえ迷惑だ。
そんな彼女だが、中身は善性。基本的に人は助けるし、悪を許さない正義の味方である。故に彼女を慕う者も存在する。
そうでなくとも、中性的な顔立ち、モデル体型、美しい朱色の髪。世の女性達が羨む程のスペックを持っている。
そんなフレイが、今、未知の敵に挑む――
『ここに居やがったか!』
怒り心頭のフレイが、ファースト・ドライヴを視界内に入れると、すぐに拳を握り、真正面から殴りかかる。
『まあまあ、フレイさん。頭を冷やして下さいな』
そう言って、ありったけの水弾を連射した。
それをフレイは飛び上がったり、木の幹を足場にしたりすることで回避していく。
『これ以上濡れてたまるかよ!』
フレイは海を横断して既に水を纏っている。乾かす間もなく強襲したので、服が水で重くなっているのだ。
『ちょっとあなたにしては動き鈍くないですか? 一度水を切ってから挑んではどうです?』
洞察力高めなファースト・ドライヴは、フレイにそう助言するも、本人は聞く耳を持たず睨みつける。
『うるせえ! こんなの大したことはねえ! てめえをぶちのめすには十分だ!』
この程度ハンデにもならねえと言い張るが、実はわりと結構煩わしさを感じている。
『いやいや、服めちゃくちゃ水吸ってるじゃないですか。嘘つくのやめてもらっていいですか?』
『う、嘘じゃねえよ!』
威勢良く反論するが、動揺が隠しきれていない。まるで格好つけたい男子のような反応だ。なんか可愛い。
『もう、子供じゃないんですから……ほら服乾かしてきなさい』
まるでお母さんのように注意を促す。
『なんでてめえに指図されなきゃいけねえんだ! てめえは俺の母ちゃんか!』
『じゃあそのお母様のお言葉を代弁しましょう!』
ファースト・ドライヴは、すぅぅと息を吸う。
『いいから服着な!!! 風邪引きたいのか!!! アンタは!!!』
ファースト・ドライヴ史上最高の声量で怒号を放った。
『うるせえなババア!!!!!!』
フレイは反射的に反抗期の不良のように暴力的な反論をした。
『誰がババアだ!!!!! アンタご飯抜きにするよ!!!!!』
『いや、てめえは俺のご飯作ったことないだろ』
憤怒の勢いでの反論かと思いきや、冷静なトーンで元も子もないツッコミを入れた。
ファースト・ドライヴも演技をやめて、冷めた空気に心の凍傷を受けた。
『いや、そこはマジレスしないで……』
『マジレスってなんだ? 強えのか?』
『はぁ……ダメだこりゃ』
話が通じないフレイに、ファースト・ドライヴは肩を竦めた。
『風魔法“温風”』
ファースト・ドライヴは、有無を言わさずフレイの服を乾かした。
『おぉ、乾いた!』
服にのしかかった水は瞬く間に消え去った。
あれだけ意地を張っていたフレイも、文字通り身が軽くなった思いだ。
『これでまともに戦えるでしょう?』
『ああ、サンキューな! でも俺は敵なのに何でわざわざ乾かしてくれたんだ?』
フレイの疑問はもっともだ。衣服が重くなれば当然動きづらくなり、戦いにおいて不利な状況だ。それをファースト・ドライヴはわざわざ自分の魔力を使って解消したのだ。気になって戦闘に集中できなかったから、かもしれないが、とはいえ、敵が背負っていた枷を外したのは勝負する上では悪手と言えよう。
『別に、貴女から水滴が飛んできてちょっと鬱陶しいと思ったからですよ』
わりとマジである。
『そ、そうか。そりゃ悪かったな』
フレイは、先ほどの怒りはどこへやら、素直に謝罪した。
『ずいぶん素直に謝るのですね』
フレイの普段の言動から、この素直さは想像できなかったようだ。
『そりゃ、悪いことはちゃんと謝れって母ちゃんから教わったからな』
フレイの根は善性だが、まだまだ人に喧嘩を売りまくるやべー奴だ。だが闇堕ちしなかったのは母親の存在が大きいのだろうと思ったファースト・ドライヴであった。
『そうですか。ずいぶんと素敵なお母様ですわね』
――あれ、そういえば私の母はどうだったっけ? どんな人だっけ? そもそも居たっけ? 前世の記憶が曖昧であまり覚えていないが、何故か心が暖かくなる。この気持ちは何だろう?
『おう、ありがとな』
フレイにしては珍しく笑顔で返答した。普段から機嫌が悪そうな顔をしているので、にこやかになる事自体が、SSRをガチャで当てるくらいの確率なのだ。
しかし、ファースト・ドライヴはフレイと出会ってまだ日が浅い為、この光景がどれほどレアなのか知る由もないのであった。
『話は変わりますが――というか戻しますが、貴女はこれからどうしますの?』
『どうするって?』
『最初貴女は私に殴り込みに来たじゃないですか? 今はどうですか?』
ファースト・ドライヴはあえて怒りを思い出させるようにフレイを誘導する。
『ああ……そうだな』
一緒に組もうぜ、なんて言葉は期待していない。なぜならファースト・ドライヴは既にセカンド・ドライヴと手を組んでいるからだ。
ダスト達のように三人で組むという作戦はそもそも発想にない。
たとえフレイからチームに誘われたとしても、残念ながら断る他ないのだ。
『決まってんだろ。ファースト・ドライヴ。お前をここでぶっ倒す!』
フレイは不敵な笑みを浮かべながら、拳と手のひらを合わせて、戦意を示した。
どうやら彼女の心は最初から決まっていたらしい。
だが、フレイからファースト・ドライヴへの怒りの感情は綺麗サッパリ消えていた。それは乾かしてくれた恩で相殺されたのか、ただ単にどうでもよくなったのか、それともそのどちらでもないのか。理由は定かではないが、少なくとも気持ちの良い試合ができることは確信している。
フレイからの返事に安堵したファースト・ドライヴは口角を上げながら、体内の魔力をオーラのように放出する。
『そうですか。では私も全身全霊でお相手しなくては!』
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