第431話『サバイバルバトル〜磨かれた力は未来の技術すら壊す〜』
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両者、気持ちを新たに戦闘を再開する。
『では、遠慮なくゆくぞ』
まず足を踏み出したのは早乙女わかな。異次元の脚力で大地を割り、類まれなる速度を以て、ファースト・ドライヴに接近する。
間近に迫ったタイミングで、早乙女わかなは身体を捻らすように地面を離れ、勢いで拳を落とすつもりだ。
『私だって、遠慮はしませんよ!』
防壁魔法……を発動するつもりだったが、早乙女わかなが走り出した際に大地を割っており、防壁をうまく立てられない状態だ。
それならばと、未知の魔法使いは別の手段で攻撃を回避する。
『網魔法“蜘蛛ノ糸”』
ファースト・ドライヴの手のひらから文字通りの網が、誇り高き女戦士を包囲する。
体勢を変えられない早乙女わかなは、回避する術もなく網という名の牢屋に収監された。
『ぬぅ、小賢しい!』
早乙女わかなは、纏わりつく網を手で押し退けた。
『今だ!』
隙が現れた早乙女わかなに、岩石魔法で生成した硬い岩をぶん投げた。
岩は見事に衝突し、僅かに怯んだ早乙女わかなだが、やり返してやると言わんばかりに岩を拳で破壊した。
粉々になった岩は破片の集合体のように一つに固まり、その状態のまま早乙女わかなに突撃し、今度こそ役目を終えたように砕け散った。
『ぐっ……!』
ろくに防御体勢も取れなかった彼女は、先程よりも長く怯み、その隙をファースト・ドライヴは逃さずに攻撃魔法を連射する。
『ぬぅ……!』
簡易的な魔法であるため、威力は下がるが連射性には長けている。
無防備な状態で一発でも当たれば、動体視力が異常に高くない限り反応する間もなく連続攻撃を受け続けるだろう。
――だが、早乙女わかなの場合は、
『フン!!!!!!』
身体全体に溜めた力を放出し、向かい来る魔法を全てかき消した。
『うそーん!?』
いくら弱い威力の魔法とはいえ、一発でも当たればそれなりにダメージは受けるはずだ。
しかし、早乙女わかなには鍛えられた肉体という名の装甲がある。それでいて力も桁違いだ。
攻撃面においても防御面においても最強。現世において人類を超えた彼女に倒せない敵はいないのだ。
『えぇ……まじモンの化物じゃん……』
未知の力を持つファースト・ドライヴにとっても、彼女の力は異常だ。人智を超えた魔法を、筋力だけでかき消すなど本来あってはならない。というか無理だ。
(これは下手をすれば、私の魔法全部有効打にならない可能性すらあるな。攻撃魔法はもちろん、精神系の魔法も、そもそも彼女の精神が強靭すぎて効かないかもしれない)
もちろん彼女には他にも魔法のレパートリーはいくらでもある。魔法を組み合わせれば無限に戦術が生まれる。
(大丈夫、まだ手はある)
『ファースト・ドライヴよ。まさかこれで終わりではないだろうな?』
『ええ、これはまだ序の口。これからですよ、私の魔法はまだまだ温存してますからね』
『そうか。それを聞いて安堵した』
早乙女わかなは不敵な笑みをこぼしながら、再び拳を構え直した。
『そんなに戦うのがお好きなんですか?』
『むぅ、そう問われると回答に難儀が生まれる。争いは無くすべきだが、我としては強者と戦いたい』
命を奪う戦争は絶対にやめるべきだが、こういう試合形式での戦いは大歓迎だと言いたいようだ。
『そうですか。では、そんなバトルジャンキーな貴女に問います。私は貴女の相手にふさわしいですか?』
早乙女わかなにとってファースト・ドライヴは戦い甲斐のある強敵であるかどうか。それを聞いた。
『無論だ』
『そうですか、ありがとうございます』
(それならば、私も全身全霊を以て彼女を倒そう)
『では、もう遠慮なく行きま――』
二人だけの戦いはここで打ち切られた。
『見つけたぞ!!!』
海から打ち上げられたように空中を舞い、濡れた身体から水しぶきを落としながらその人物は現れた。
これから二人の本気の戦いが始まる時に、炎を纏う拳を振りかざす赤き戦士に二人は視線を移していた。
『フレイさん!?』
『覚悟しやがれ! ファースト・ドライヴウウウウウウウウウ!!!』
わざわざ名指しで殴りかかるフレイ。無防備な空中にいるため、容易に反撃される状態だ。
『風魔法!』
ファースト・ドライヴは手のひらを突き出すと、そこから突風をフレイに向けて噴出する。
向かい来る突風に、フレイの拳の炎は激しく煽られ、そしてあっさりと消え去った。
『うおわああっ!』
フレイ自身も突風に呑まれ、押し返された。
しかし、フレイは諦めずにまた拳の炎を再燃させ、今度は地面に着地し、目にも止まらぬ速さでファースト・ドライヴに殴りかかった。
『転移魔法!』
フレイの拳が肌に触れる前に、その場から消える。
『どこに行きやがった!!!』
フレイは血眼になりながら、辺りを捜索する。
『ファースト・ドライヴならば、おそらく転移魔法とやらでどこかに避難したのだろう』
早乙女わかなは、親切にフレイに助言を施した。
『転移魔法って、オーガスト・ディーンが使ってたやつか!』
『うむ、だが遠くへ転移したとも限らぬ。油断はするな』
『油断なんかするかよ、って、てめえ敵なのに何で俺にアドバイスなんかしてんだ?』
『ファースト・ドライヴは一人で簡単に倒せる相手ではない。故に我と組む事を推奨する』
『はっ、誰かと組むなんてごめんだ。俺はあいつをぶん殴らねえと気が済まねえ! 俺とあおいとの決闘中に横槍を入れやがったからな!』
今まさにフレイも、早乙女わかなとファースト・ドライヴの戦いに横槍を入れているのだが、そこは突っ込まずに話を進めた。
『此れは二人だけの試合ではない。横槍の乱入など容易に予想できるのではないのか』
『それでもムカつくもんはムカつくんだよ! 何度も言わせんじゃねえ!』
『何度も言っていないが』
『とにかく! 俺の邪魔をしやがったら承知しねえからな!』
フレイは早乙女わかなに圧をかけるように睨みつけると、ファースト・ドライヴを探しにその場をあとにした。
一人取り残された早乙女わかなは腕を組んで、こう呟いた。
『難儀なものだ。年頃の娘というものは』
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