第428話『サバイバルバトル〜夢と現実〜』
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《早乙女わかな視点》
我はどうやら1万年後、とある人物によって怪物にされて、その後、娘とその仲間によって我は浄化されるようだ。
死にゆく我をみどりは激しく愁い、最後に良い報告を聞いた。
そんな映像が夢として上映された。
我が死ぬと同時に娘が涙しながら親友ができたと口にした夢。最初は悪夢のようだったが、最終的には暖和の感情を得ていた。
夢は所詮幻想でしかない。しかして、我の魂は共鳴する。此れは未来の我の成れの果てであると。
だが、我は疑問を呈する。我が如何に人を超えた存在であれ、1万年後という膨大な時間を生き長らえるなど不可に等しい。故に夢の中の我は我ではなく平行世界の我の記憶を閲覧していることになる。で、あればなぜ我の本能は疼くのか。
みどり……人見知りだったお前は、仲間達とあんなにも親しげになっている。それこそ夢のようだ。我が思い描いていた理想そのものだ。
だが、あまりにも出来すぎている気もする。やはり幻想か……?
否、我の本能に狂いはない。
そうだ、これは未来の我からのメッセージである。魂が天に還る間際に、過去の我に送ったのだ。
まるで未来の我と同期したようだ。それを解した今、我のすべき事が頭に浮かぶ。
こうしてはいられない。
我は自分が抱えている問題をノルン様に打ち明けた。
『話は分かりました。対策はこちらで考えますので貴方はその時を待っていて下さい』
『ノルン様、感謝致す』
我が女神には頭が上がらない。普段こそ素行も口も悪い淑女ではあるが、持ちうる力は確かなものだ。きっと未来を良き方向に導くだろう。
だがそれは、完全な他力本願ではない。我にも役目はある。来るべき時に動けるようにしなくては。
良き未来のためにも、みどりのためにも――
――――そして、現在。
大会の最中だが、森の中に何故かダンベルやいちごのショートケーキ等、背景と身の丈に合わないものが上から糸に吊るされていた。
『なんだこれは? 先程までこんなものは無かったはずだ』
まさかまたイベントかと思ったが、そんな知らせは来ていない。
となると、他の参加者の誰かが作戦を立て、このような奇怪な光景を作り出したということになる。
何者かが見ない間に糸に餌をつけた、のか? 何故だ? 罠にしては目立ち過ぎる上に糸に一つ一つ餌をつける時間があるのだろうか?
『……』
これはまるで怪奇現象ではないか。そう呼べるような事態だが、未来の者が存在するこの世界で、常識で物を図るなど烏滸がましい。
故に我はこれを未来の魔法の一種ではないかと推測した。
無論、未来から来た者の仕業だろう。其の情報だけでは誰が犯人かなど到底暴けないが、一応整理はしておくべきだ。
犯人の候補は、
未来人であるオーガスト・ディーン殿、あおい殿。
現代生まれでありながら未来の魔法が使用できるファースト・ドライヴ、あるいはセカンド・ドライヴ。
こことは異なる世界線から転移した精霊の力を使用する聖剣使いのルカ殿。
いずれも、我の知らぬ領域にて力を奮う者。もはや誰がこの面妖な魔法を使えたとしても不思議ではない。
だが、今問題視すべきなのは、犯人は誰かではなく、我はこの状況を如何にすれば乗り越えられるのか。
糸に垂らされた餌は触れるべきでないことは我にも理解できよう。では、それ以外はどう注意すればいい?
それぞれの試合を見る限り、炎や雷だけが飛んでくるとは限らない。未来の魔法、どんな魔法を使うのか想像すらできない。もしかしたら、先ほどのような謎の大爆発が不意に起きるやもしれん。
『油断禁物であるな』
我は警戒心を強めながら、餌を無視し、先へ進む。
他の参加者はどこだ?
我は目を酷使させてでも選手を見つけ、仕留める。それがたとえ我を一度倒したセカンド・ドライヴであろうと――
とはいえ、セカンド・ドライヴ相手に真正面では挑まぬ。ただでさえ敗北してしまい、ペナルティとしてさらにレベル差が広がってしまった以上、我に勝ち目は無い。ならば不本意ではあるが、背後から奇襲を仕掛けるしかあるまい。あるいは、他の者と同盟を結び、二人で叩くか。
うむ、後者の方が確実か。
まずは同盟者を探すとしよう。
しかし、この仮想空間、あまりにも広大。我がただ歩行し、見て回るには時間が足りぬ。
どうしたものか……。
『ん?』
どこかで何かの音が耳に入った。これは……何の音だ?
バシュッ、シュルルといった、何かを吐き出し、巻き付くような擬音。ほんの僅かな音であるため、聞き取りづらく、空耳ではないかと自分を疑うほどだ。
しかし、小さな生物もいない風も吹かないこの空間で音がすること自体が不自然だ。
『いるな。向こうに』
我は音のする方へ足を運ぶ。
すると、そこで我が目にした光景は――
糸で縛られていたセカンド・ドライヴの姿が在った。が、話がついたのか解放され、自由の身となった。
『あの二人、一体何をしている?』
我は木陰に隠れ、様子を伺った。
それから二人は少し会話をすると、セカンド・ドライヴは承諾したように頷き、空の彼方へ飛び跳ねた。
一体どこに行ったのか、行動の原理すら不明だが、何か作戦があるのだろう。我はよく聞こえなかったが、『俺はあちらを始末する』と口にしていたような気がする。
何をしているのか我には想像もつかず、首を傾げているとファースト・ドライヴがこちらにやってきて――
『やあ、わかなさん。盗み聞きとは貴女らしくないですね』
と、我らしからぬ行為を指摘され、我は反論の余地もなく話を進めた。
『貴様、ここで一体何をしていた?』
『同盟ですよ。セカンド・ドライヴくんと同盟を組もうって話になったんですよ』
『なるほど。そのセカンド・ドライヴは空へ跳躍していったが、あれはどういうことだ?』
『なんでだと思います?』
『我の知るところではない』
『貴女は知らなくてもいいんですよ。なぜなら、ここで私に退場させられるんですから』
既に同盟を組んでいる彼女に同盟を望むのは困難。本当は二対一が望ましいが、それも不可能。退くにしても、いつの間にかファースト・ドライヴの糸が我の退路を塞いでいた。
この状況を打破するには、彼女に勝つしか道はない。
『それはこちらの台詞だ。我にも叶えたい願いが在るのでな』
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