第425話『サバイバルバトル〜前世の怪物〜』
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今、ファーストドライヴを追いかけても効率が悪い。おそらくまた罠を仕掛けてくるに違いない。
他の参加者を狙った方がよほど堅実的ではあるが、ファーストドライヴは今の俺以上に魔法のレパートリーが多い。このままファーストドライヴを放置して時間を与えてしまえば、俺でも対処不可能な、とんでもない魔法を繰り出してくるかもしれない。
そうなると、効率以前の話だ。早急に対処しなくては。
『こうしてはいられない。急いでファーストドライヴのところへ向か――ん?』
――気づいたら、そこに蝶がヒラヒラと舞っていた。
『しまった――』
俺は腕を交差するように前に出して咄嗟の防御態勢を取った。不完全な防御だが、何もしないよりはマシだ。
しかし、
『ん?』
本来ならばもう爆発してもいい頃だが、結局爆発はしなかった。
『なに? 爆発しないだと……?』
蝶は俺の気も知らずに、優雅に舞う。戦闘など知らぬ顔で。
『いや待て、時限式かもしれない。油断は禁物だ』
念を押した俺は、その場から離れようとすると、蝶は何の前触れもなく四散し、辺り一帯を包み込む霧に変わった。
『霧か……!』
視界が白い霧で埋め尽くされた。が、こんなものすぐに吹き飛ばせばいい。
俺はいつも通りに拳を突き出すと、要望通り霧は完全に晴れたが、真横からまた蝶が現れた。
『また霧か……!』
拳を出していたが故に僅かだが隙が出来てしまって反応が少し遅れたが、それでも間に合うと思い拳を突き出そうとするも――
蝶は霧にはならず、今度は羽が糸に変化し、次に一本一本が密着する。それは触手のような形になると、まっすぐに伸びて、俺の腕に巻き付いてきた。
『ほう、今度は糸か』
今度は糸か。だが、こんなものすぐに引き剥がせば――
『引き剥がそうとしても無駄ですよ』
そう言って、カツカツと足音を鳴らし、その正体を現した。
犯人が誰かなど考えるまでもない。ファーストドライヴだ。
俺が罠にかかるまで、どこかで様子を見ていたのだろう。
そして、見事にその罠にかかってしまった。ファーストドライヴの言う通り、この糸は非常に硬く、引き剥がそうと力を入れても、全く解けない。
『この糸は何だ?』
『これですか? これは誰だろうと解くことができないめっちゃ硬い糸です。たとえ神々だろうと』
『神もだと……?』
『これ、未来の私から聞いて、最近開発したんですけど、感想はどうですかね?』
『俺にレビューを求めるな』
だが、この糸は確かに強力だ。これならどんな相手でも力関係を無視して、身動きを封じることができる。
知恵を振り絞った者の革命的アイテム。やはり発明家は世界を変える力があると認めざるを得ない。
しかし、疑問点がある。こんな糸があるなら、わざわざダストをこの時代に送らずとも、ゼウスを封じる事ができたのでは?
俺は自分が疑問に思った事をそのままファーストドライヴに質問した。
『そう思いますよね。私も同じ事を未来の私に聞きました。そしたらですね、何とその糸の存在をゼウスは知っていて、予め歴史から抹消したようです』
『歴史から抹消だと……?』
『ええ、でも抹消というのは物理的な意味ではなく、封印されたという意味ですね』
『封印?』
『ゼウスは未来、自分にとって不都合な物全てを未来のとある場所に封印したのです。そこには前世のあなたの証である武器も』
『俺の……前世……!』
――蘇る。
――俺の記憶。
――前世の俺の名はグングニル。ただ生きる為にあらゆる敵を倒してきただけの冒険者。そこには夢も希望もない。複雑に入り組んだ茨道を進むだけの人生。
どこもかしこも生物だった者の成れの果てが、オブジェクトのように転がっている。そんな戦場の跡地が常に俺の居場所だった。
人と接していないという意味では孤独だったが、俺のそばにはいつも俺の武器がいた。俺がこの世界に転生する直前までは――
『だが、分からない。前世に置いてきたはずの俺の武器がなぜ現世にある?』
『あなたを追いかけてきたんですよ』
『追いかけてきただと……? そんなことが――』
『あるんですよ。特にあなたの武器は特別。たとえ輪廻転生しようとも魂が消滅しない限り、主人の元へやってくるでしょう』
『待て、その話が本当ならば、何故俺の武器は手元に無いんだ?』
『もう既に封印されたんですよ。あなたの手元に行く前に、ゼウスによってね』
『ゼウスが……?』
『ゼウスはこの世の全てを知ることができる。だから不都合な物がこの世に現れた瞬間に対処することができるんですよ。でも何故か破壊はされてないみたいなので、安心してください』
『そうか、じゃあ俺の武器は、この世界のどこかに……この大会が終わったら迎えに行こう』
『いえ、セカンドドライヴくん。ゼウスに封印されたことが、武器である彼女の狙いなんです』
『狙い……?』
『ええ、未来を見た彼女はわざと封印されて、時が来たら、あなたにテレパシーか何かで封印を解く方法とその場所を教えてくれる事になってます。だからその時まで封印を解かずに待っていてください』
『……』
『おや、黙ってしまってどうされましたか? 不器用ですが多少聡明なあなたなら理解できると思ってましたが、少し情報量が多かったですか?』
『いや、少し未来を見ていた』
『へぇ、あなた未来予知の魔法使えたんですね』
『いや、ただの予測だ。もっと言うなら計画を練っているところだ』
『なるほど……でもあなた一人では難しいでしょう』
癪だが、その通りだ。俺一人では計画が破綻しかねない。
『私が協力致しましょう。そうすればより安定した計画を立てることができます。その方が効率的でしょう?』
正論だ。俺は一人で考え過ぎていた。俺は神でも何でもないただ人より力が滅法強いだけの人間だ。何でも一人で出来ると自信過剰に思っていた所があったのかもしれない。
『うむ……そうだな。ファーストドライヴ。頼む、俺と協力してくれ』
『ええ、もちろんです。全ては良き未来の為に』
大会中ではあるが、こうして俺はファーストドライヴと手を組むこととなった。それが新たな未来を開く事になると信じて――
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