第423話『サバイバルバトル〜あからさまな罠〜』
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ルカちゃんからあおいちゃんの作戦を聞いた俺は、ルカちゃんと共にあおいちゃんの元へ向かおうとしたのだが――
『なんだ!?』
少し向こうから爆炎が空を差すような光景を見た。その方向には、あおいちゃんとフレイいるはずだ。
『あおいさん!』
爆炎の中、または付近にいるであろう彼女の名を呼ぶルカちゃん。当然返事などない。
『そんな……』
仲間の退場に膝から崩れ落ちるルカちゃん。あの爆炎を見て無事だと思うのは難しい。認めたくないが、どちらも退場したと考える方が自然だろう。
『あおいちゃん……』
よほど激しい戦いをしているのかと思ったが、あの爆発の規模を考えると不自然だ。あれだけの爆炎を起こせば、術者自身も巻き込まれる可能性が高い。自爆覚悟なら、この結果は頷けるが、個人戦のこの大会ではまるでメリットがない。あおいちゃんもフレイも優勝して叶えたい願いの1つや2つあるだろう……多分。
つまり、あの爆炎は他の何者かが横槍を入れた可能性が高い。複数人で行う試合である以上は十分に起こり得ることだ。別に不自然な事は何一つない。
しかもあの爆炎は、ただのめちゃくちゃドでかい炎魔法ではなく、未来の魔法である爆炎魔法だ。炎魔法の進化版ではあるが、魔力の消費量が多い上にコントロールが難しいので、上級者向けと言われている。ただめちゃくちゃかっこいいので、爆炎マニアや厨二病の方々には大人気の魔法らしい。
一応誰でも習得可能な魔法ではあるが、これは未来の魔法だ。それを繰り出せるのは当然未来の魔法を知っている者に限られる。
容疑者を絞ることはできるが、一体誰がやったのか、現時点で考えても答えは出ない。真実を知るには現場に行くのが1番手っ取り早いが、さっきのような爆炎を不意に撃たれると俺もルカちゃんもただでは済まない。
なので、万が一を想定し、俺とルカちゃんに防壁魔法を張っておいた。これで爆炎に巻き込まれても無事に済むだろう。
もしかしたら、あおいちゃんもあの爆炎をギリギリ回避してなんとか無事かもしれないし、急いでそこに向かおうとしたのだが――
『なにこれ……?』
蜘蛛の糸のようなものが上から何本か垂れ下がっていて、その先端にはソフトクリーム、ぬいぐるみ、本、ゲーム機、美少女フィギュア等がくっついている。
お祭りの屋台によくある糸を引くあみだくじを彷彿とさせるが、肝心の引っ張る糸がない。そう、これはまるで――
『釣りエサか?』
エサを垂らして、それに食いつくと釣り針に引っかかり、釣り上げられ、最終的に人の栄養と化す。それが太古の時代から行われている“釣り”という獲物を獲得する手段だ。
中には釣った魚を食べずに水槽の中でペットとして飼う場合もあるようだが、まあ、どのみち自由を奪われる事には変わりない。
『ということは、これ全部触らない方が良さそうだね』
『うん、そうだね……』
だが妙だな。こんなあからさま過ぎる罠を設置する意味はあるのか? こんなの引っかかる奴は……脳筋ならワンチャン罠にかかりそうだけど、他はほぼいないだろ。
ということは、なにか別の目的があるのか?
分かりやすい罠を仕掛けることで得られるメリットは何だ?
分かりやすい……つまり目に見える……目……視線……!
あぁ、そうか。おそらくこれは、あえて注目させる為に置いた罠だ!
『ルカちゃん! 周りに気をつけて!』
『!?』
俺はすぐさま辺りを見回した。
すると、そこら中に人型の機械らしきものが俺達を取り囲んでいる光景が広がった。
どうやら、俺とルカちゃんが釣りエサに気を取られている間に事を進めていたようだ。
ガシャン、ガシャンと機械にふさわしい音を奏でている。それは人の形をしてはいるが、顔にあるはずのパーツが1つも無い。代わりに丸い小さなガラスが2つ、人間でいう目の位置に埋め込まれていた。
武器は剣か槍のどちらかを持っていた。どれも上質とは言えないが、それなりに使えるものではある。
『なんだこいつら!?』
俺は慧眼魔法で人型の機械を1つ1つ見てみたが、どれも魔力は流れていなかった。武器を前に出しているところを見ると、連中はどうやら魔法を使わない暴力でねじ伏せるだけのようだ。
『ディーンさん、ここは私に任せてもいい?』
ルカちゃんは鞘から刃を見せて、やる気を示している。
彼女の力量であれば、あの機械の集団を蹂躙することは容易い。
ちょうど俺は、時が来るまで出しゃばらないようにするつもりだったので、話が早くて助かる。
『分かった。俺はここで見守っているよ』
そう言うと、ルカちゃんはニッコリとかわいい笑顔を見せてくれた。しかし、次の瞬間彼女の顔つきは百八十度変わり、戦場で屠る戦士のように、人型の機械を順番に斬って、斬って、斬って、燃やして、斬って、斬って、無双した。
『終わったよ、ディーンさん』
『お疲れ、ルカちゃん』
労いの言葉をかけるが、彼女の実力ならば当然だ。きっと邪魔な虫をちょっと追い払う程度の労力しか捧げていないだろう。
人型の機械だったものは、辺りに散らばったまま、戦場の跡を演出している。
『援軍は来ないみたいだね』
『ですね』
毎度お馴染み超便利な探知魔法を使っても、近くに反応はなかった。決して油断していいわけではないが、少し息を整える時間を貰ってもいいだろう。
『それにしても、なんだったんだあの機械の集団』
上を見ると、いつの間にか釣りエサは全部消失していた。まるで最初から何もなかったかのように。
『もしかして、ディーンさんが言ってた未来の魔法なのかな?』
『そうだね、あんな芸当ができるのは未来の魔法しかない』
それともこのステージにはそういうギミックがあるのか? いやでもそんな話、運営から聞いてないよな。もしくは言ってないだけ?
でも、それにしてはあの人型の機械、そんなに強くないよな。この大会の参加者全員、苦戦するほどの相手とは思えない。どうせギミックとして採用するなら、もっとシンプルに強いやつとか、厄介な魔法を使うやつを置くだろう。罠もあんな分かりやすいやつではなく、罠を罠と気づかないような巧妙な罠と呼べるものを設置するべきだろう。
そこまで用意するの面倒くさいからと言われればそれまでだが、あの性悪女神が嫌がらせに手を抜くとは思えない。
なんて思っていると、空から尖った石がボロボロと落ちてきた。
『なんか石落ちてるよ、まさかまた未来の魔法!?』
『あぁ、これは多分嫌がらせだから無視無視』
さっき防壁魔法を張っておいたので、全て弾かれている。
とはいえ、今度は防壁を貫通するようなヤバいものを落とされそうなので、さっさと移動して成果を天の神様にお見せしよう。
『とりあえず行こうか』
『どこに?』
『行ってみれば分かるよ』
行き先はあえて伝えずに、俺達は目的地へ向かった。
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