第420話『サバイバルバトル〜青い剣と赤い炎〜』
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《あおいちゃん視点》
試合開始直後、私はフレイさんと出会った。
彼女は私を見て早々、戦意をむき出しに炎纏った拳を振りかざした。
私も剣を抜いて応戦した。
とても交渉しようだなんて雰囲気ではない。きっと彼女の頭の中には同盟なんて微塵も考えてないんだろう。
まあでも、最初から私もフレイさんではなく、ダスト様とルカさんと組むつもりだ。この試合方式を聞いた時から、もう決めていた。
分かっている。フレイさんは強敵だ。私がまともに戦っても勝てないかもしれない。でもここで私が彼女を食い止めておけば、少なくともダスト様がフレイさんにつきまとわれることもなくなる。
元々私には誰かに叶えてほしい願いはない。
私の今の願いは、ダスト様かルカさんのどちらかを優勝させること。私は今、その為の手助けをしている。
そういえば先ほどルカさんが、気配と音がしたからとこちらに来ました。ルカさんは私に加勢しようとしましたが、私はそれを制止し、彼女にある作戦を伝えました。
ルカさんはそれを聞くと、そろそろイベントのバトルの決着が着くであろうダスト様の元へ向かいました。しかし、その時点でダスト様はまだ空中にいます。どこに着地するか分からないはずなのに、ルカさんはその場所を特定できると言い残し、この場をあとにしました。
あとは、この作戦がダスト様に伝わってくれれば……。もっと言うなら私と合流してくれればですが、その前に私がフレイさんに倒されないようにしないと。
――これは彼らの為の戦いであり、私の為の戦いでもある。
だから、たとえここで全力を出して負けたとしても本望。
『おらおらおらおらおらあああああああ!!!!!』
今私はフレイさんとの戦闘の真っ最中だ。お互いの実力はほぼ互角。レベルは彼女の方が少し上だが、勝機が無いわけじゃない。今のままであれば――
『さすがです。やりますね』
『てめえもな!!!』
『では、今度はちょっと強めで行きますよ』
青い稲妻が私の剣からバチバチと放電する。その状態のままフレイさんに斬りかかる。
『うおりゃああああああああああああ!!!』
フレイさんは、まるで動物のような咆哮を上げながら炎纏った拳をこちらに突き出した。
結果、私の剣とフレイさんの拳が衝突した。
刃が拳に当たっているはずだが、その拳には傷ひとつつかない。纏っている炎が防御機能を果たしているのか、それとも彼女の拳が硬すぎるのか。
いずれにせよ、フレイさんの拳が凶器であることは確かだ。まともに殴られれば私でもただでは済まないかもしれない。
『このまま押し返してやるよ!!!』
フレイさんは拳に力を注ぎ、宣言通り私の剣をそのまま押し返そうとする。
力だけならフレイさんの方が上だ。私はこれ以上剣に力を込めても押し返すことはできず、何なら剣に負荷がかかって折れる可能性すらある。
『くっ……!』
私は一旦そこから少し下がり、遠距離で魔法をひたすら放つ作戦に出ようとしたが、フレイさんは猛スピードで距離を詰めて拳を振りかざし、私はそれを剣で受け止める。これを何回も何回も繰り返した。
『参りましたね……なかなか魔法が撃てませんね……』
フレイさんは本能のままに戦うタイプだ。だから下手な不意打ちや小細工はしてこない。でもその分、力が強い。それでいて炎魔法によって攻撃面でも防御面でも隙がないという。道理で強いわけだ。さすが後の炎の女神……侮れない。
ここは炎を打ち消す水魔法を使うべきか。しかし、その程度のことはいくらフレイさんでも想定できるだろう。明らかに弱点があるのに、何の対策もなしに挑むなんて流石にありえない。
まあフレイさんのことだから、本当に何も考えずにただ力だけで相性の悪さをねじ伏せた可能性もあるけど。
そんなことを考えていると、彼女はまるで心を読んだかのようにタイミング良く答え合わせをしてくれた。
『てめえ、色々考えてやがるな? 例えば俺に水魔法をぶちまけるとかな』
フレイさんは戦闘中でありながら、私が何を考えているかを見事に的中させた。なるほど、やはり想定済みだったか。
そして、彼女は思ったよりも鋭いところがありそうだ。それも彼女の本能によるものなのだろうか。
『それは良い手ですね。それでいて単純明快。なのに私としたことが、全然発想にありませんでしたよ』
本当なら見事に正解だと彼女に伝えたいところだが、作戦なんて考えてない奴だと思わせる為に、あえて嘘をついてやり過ごした。
『嘘つくな。誰だって思いつくことだろう?』
『だからこそ逆に思いつかなかったんですよ。難しく考えるとどうしても視野が狭くなってしまいますからね』
『フン、どうだかな』
私の弁解を彼女は疑っている。きっと何を言っても信じないだろう。
まあ、どちらにせよ私が水魔法を撃ったとして、彼女が簡単に倒れてくれるとは思えない。逆に撃った隙をつかれて反撃されるかもしれない。
――こうなったら私の全力を以て迎え撃つしかない。力だけでいうなら私のほうが少し劣るが、私には未来の魔法というアドバンテージがある。ダスト様ほどではないが、私だって魔王城幹部という肩書きに恥じぬように、多彩な魔法を覚えているし、剣術や格闘術だって、お姉様に散々叩き込まれたのだ。
負けるはずがない。
『フレイさん』
『何だ?』
会話しながらも、剣と拳の撃ち合いは続く。
『大変申し訳ないのですが、ちょっと本気を出させて頂きます』
私がそう言うと、フレイさんは突きだす拳を一旦引っ込めた。
『いいだろう、俺もそろそろ全力出してやるぜ』
フレイさんがそう宣言すると、拳の炎がさらに勢いを増した。拳はおろか身体ごと飲み込めるくらいの大きい炎だ。一発のパンチで一体どれだけの火力が出るのか想像もつかないが、辺り一帯の緑が炎に侵されるくらいのことは起きるだろう。
私も負けていられない。全力のフレイさんを蹂躙できるくらいの力を引き出すんだ。あまり使いたくなかったが、私に乗り移ったあの人が残した魔法を使う時が来たようだ――
『変身魔法“鏡映”』
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