第417話『サバイバルバトル〜オーガスト・ディーンVSシャイ⑤〜』
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――学習完了。
俺はこれより“勇者ダスト”により近い存在となった。
記憶の中に気になるところがあったが、今は試合に集中しよう。
まずは、この魔法で“アレ”を試してみよう。
『闇魔法“暗黒竜”』
――闇よ、この世の最強種となり、我が願望を叶えたまえ。
黒い禍々しいオーラのような物質が、ドラゴンの形へと姿を変える。
さあ、闇のドラゴンが顕現された。蹂躙せよ、破壊せよ、暗黒の炎で全てを焼き尽くせ。
『■■■■■■■■■■■■■!!!!!』
暗黒の竜は咆哮を上げ、ピリピリとした振動が空気中に広がる。
この感じ懐かしいな。俺は昔こうやって魔法を使役して、あらゆる敵を蹂躙してきたんだよな。そんなあるはずのない記憶が俺の中にある。
『ドラゴンだと……!?』
架空の存在であり、最強種のドラゴンを目の当たりにしたシャイ。さすがの彼女も恐怖に心を侵食されかけているが、やはり剣を手放すことはなかった。
『これは想定外だ……ははは……武者震いが止まらないな』
武者震いと強がっているが、畏怖しているが故の身震いだろう。
『だが、私は諦めない。どんな相手だろうと関係ない!』
そう意気込みをしたところで彼女の周りに長いマフラーのような形をした白いオーラが包み込んだ。
『これはあの時のか、ついに本気を出すか』
ルカヴァちゃんとの試合の時に見せた最終形態。絵本からそのまま飛び出してきたのかと思うほどの神々しさ。これから俺もついにお目にかかれるわけだが、映像越しで見ても目を離せないレベルだったのだ。幻想好きの俺はきっと心の1つや2つは余裕で奪われるんだろうな。
『お、そろそろ見れるか』
白い球状の物体になってから32秒ほどが経過すると、まるでたまごから孵ったように天使となったシャイが現れた。
羽が何本か落ちる勢いで広がる翼。天使の証である頭上の輪っか。それでいて天使というイメージを裏切りかねないような剣は持ったままだ。しかし、そんな欠点など覆い被せられるほど輝いている。
――美しい。思った以上だ。その姿を目に焼き付けるだけじゃ満足できない。写真にして飾りたい。
『光の女神候補シャイニング、この誇りにかけて貴様を討ち倒そう』
『そりゃ光栄だ。だが、倒されるのはお前だ』
『抜かせ』
シャイは大きな翼を利用し、はるか上空まで飛ぶ。
それから、彼女は剣先を向けて隕石のように落下する勢いでこちらに突撃する。
防壁魔法を使えば全然防げるが、途中で精霊の力で防壁貫通されたら普通に死ぬので、ここは別の手段で――
『転移魔法』
俺はシャイの背後に転移した。
俺というターゲットが視界から消えた時点で彼女も瞬時に想定できると思うが、背後から攻撃するつもりで俺は炎魔法を放つ。
一方で俺の暗黒竜もシャイに向けて黒い炎の弾を放つ。
つまり、これは挟み撃ちだ。
翼がある時点で機動力が高いのは想像に難しくない。たとえば俺と暗黒竜が同じ方向から攻撃したとして、彼女は大空という壮大なフィールドを舞ってしまえば、いくら今の俺でも攻撃を当てるのは難しくなる。
別にだからといって勝てない事はないが、あいつとの戦いの為に少しでも魔力を残しておきたい。なるべく時間も魔力もかけずに倒したい。なんて、あの効率厨みたいな考え方をしてしまっている自分が非常に腹立たしい。それはもうめちゃくちゃ腹が立つ。クソが。
『光の精霊よ、我と共に戦え!』
またしても呪文が違うな。呪文の内容を察するに精霊でも召喚するのだろうか。
すると案の定、人間の女性のような白い精霊がシャイの真後ろに現れた。顔は白く覆われているので分からないが、顔立ちは整っているように見え、身体付きもモデル体型のようだ。そして服装も真っ白なので断定はできないが、おそらくワンピースを着用していると思われる。
『頼んだ』
白い精霊はコクンと頷くと、俺の放った炎魔法を防壁らしきもので防ぎ、シャイも暗黒竜が放った黒い炎の弾を光魔法で打ち消した。
『やるな』
白い精霊は引き続き現世に残り、シャイの側に立ったまま、俺と暗黒竜にレーザーのようなものを放った。
『避けろ!』
と、俺が言う前に暗黒竜は翼を広げてその場を回避した。
一方で俺はいつも通り防壁魔法で防ぎ、難を逃れた。
空を舞う暗黒竜は今度はこちらから攻撃してやると言わんばかりに闇のオーラを発しながら、そのままシャイに突撃する。
『天使の裁き』
シャイは剣先を暗黒竜に向けると、そこから砲撃のような光が放たれる。
暗黒竜は負けじと口から闇色の炎を放つも、全て光に飲み込まれ、暗黒竜は滅ぼされる。そして瘴気と化してこの世を去った。
『それで倒したと思ったか?』
俺は瘴気となった闇魔法の残骸に次の命令を施すと、今度は翼の生えた蛇へと変貌した。
『なに……!?』
空を翔ける蛇は猛スピードでシャイの腕に噛みつく。無論痛みはあるはずだが、彼女は痛がっているというより、噛みつかれたこと自体を鬱陶しがっている。
『くっ……邪魔だ!』
シャイは腕を振り下ろしたり上げたりして蛇を振り落とそうとするも、牙が深く入り込んでいるためなかなか離れない。
『こうなったら……』
噛まれてない方の手で光魔法を蛇に向けて放とうとする。
『避けろ!』
すると、蛇はシャイから牙を抜き、命令通りにそこから猛スピードで離れた。
『俺の元へ還れ』
蛇は命令通りに俺の手のひらの中に突進すると、跡形も無く瘴気と化した。
俺はそのまま手のひらに魔力を込めると、そこから溢れんばかりのオーラが激しく暴れる。そして、手の中に収まりきらないほどに増大すると、さっきと全く同じ暗黒竜を出現させた。
『またさっきのあのドラゴン……!』
瘴気になった闇魔法は使い終わった証ではなく、ただの形を失って残骸になっただけだ。それを燃料僅かな車にガソリンを足すように残骸に魔力を注ぎ込めば、また同じように形を作ることができる。
『今度こそ滅ぼせ』
暗黒竜は口を大きく開けて、黒い炎を吐き出した。しかしそれだけでは彼女とさらに俺はその炎に自分の魔力を注ぎ、威力を大幅に高めた。
それを白い精霊は防壁を張って、自分ごと主人を守るも、防壁にヒビが入ってしまい、自分を守る盾は砕け散った。
それでも白い精霊は抵抗して光のレーザーを放つも、俺の魔力を込めた炎には勝てず、飲み込まれ、そして焼かれた。
しかし、白い精霊もただでは死なない。最後の力を振り絞って自身を光の弾に変え、俺へ向かって突進した。
防壁魔法……と思ったけど彼女には精霊の力もあるから防壁も貫通してしまうのだろう。そうなると俺はまた転移魔法で回避することになるが――いや、ちゃんと受け止めよう。最後の最後まで役目を全うしようとする彼女に最大限の敬意を――。
『はぁ、良いだろう。逃げも隠れもしない。今ここで決着をつけよう』
そう宣言した俺は空に手を伸ばした。
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