第34話『不穏な空気』
お待たせしました。
昨日投稿する予定だったのですが、寝落ちしてしまった為、遅れてしまいました。申し訳ございません。
第34話できましたので、宜しくお願い致します。
※2022年4月2日改稿しました。
――やけに静かだ。
と言ってもここは広い、とにかく広いのに対して、地の女神アースを除けば、たった7人しかいない。故にこれだけ静寂なのも不自然ではないのだが……。
とはいえ、あまりにも静かすぎるような……。
『いや、それよりも早くブロンズちゃんを追ってから、図書室に行こう』
俺は魔王城の違和感を覚えながらも、図書室の方へ早歩きした。
『ん? 誰かの泣き声が聞こえる……?』
どうやら地下で誰かが泣いているようだ。
俺は階段を下り、恐る恐る地下を探ってみると……そこにはシクシクと泣いているシルバーちゃんと、そんなシルバーちゃんを慰めているブロンズちゃんがいた。
図書室にも入らずに地下の廊下でそんなに泣いてどうしたんだろう? 俺は気になって2人に声をかけた。
『あ、お兄ちゃん……それが……図書室の中に入ったらね……地の女神様が血だらけで倒れてたの』
『え?』
全く想定もしてなかった事態が発生し、俺の思考は一瞬フリーズした。
変な汗も出てきて背筋も凍り鳥肌が止まらなくなった。
『女神様……何で……』
『よしよしシルバー姉……女神様は大丈夫よ。だってあの、治癒魔法使いの赤髪ちゃんが治してくれてるんだから』
ん? 赤髪ちゃん?
『赤髪ちゃんもここに来たの?』
『ええ、シルバー姉と図書室に入って、血まみれの女神様を発見した後、赤髪ちゃんがすぐ駆けつけてくれたの』
え? それはおかしい。だってこの図書室の場所を知ってるのはシルバーちゃんと俺だけのはず……なのになぜ赤髪ちゃんはすぐに図書室に来れたんだ?
『お兄ちゃん?』
それを言ったらブロンズちゃんもなぜ図書室の存在知ってるんだと思ったが、おそらくさっきシルバーちゃんと脳内で会話した時に図書室の事を話したんだろうな。
『ということは、赤髪ちゃんとアースちゃんは治療室かな?』
『え、ええ、そうね』
『だとしたら……!』
この時俺は1つの可能性を考えた。そもそも何で赤髪ちゃんが図書室の存在を知っているのか……。
『ちょっと、治療室に行ってくる!』
『あ、お兄ちゃん!』
俺は治療室まで全力で走った。地下から治療室までそんなに距離はないが、それでも走った。まさかの最悪の出来事を想定したら走らずにはいられなかったのだ。
『はぁ……はぁ……赤髪ちゃん!』
バン! と勢いよく治療室のドアを開けた。すると、そこには血がついているナイフを持ってる赤髪ちゃんと、死にかけてるアースちゃんの姿があった。
『ダスト様……!』
『はぁ……はぁ……何……やってるんですか……?』
『ダスト様、現在治療中なので、退室してもらえますか?』
赤髪ちゃんから、さっきとはまた違うとんでもない殺気を感じる。退室しなきゃ殺すと言ってるんだろうな。だけど……。
『赤髪ちゃん……悪いけどここは退けない!』
俺は必死に恐怖を抑え、退けない意志を見せた。すると赤髪ちゃんはキレるわけでもなく呆れたような表情を見せた。
『ダスト様……今はふざけてる場合じゃないんですよ? もう一刻の猶予も無いんです……今すぐこれを片付けないと……』
『殺す気……なんですね?』
『はい、今すぐやらなければ、危険です』
『何で……何で……殺しちゃうんですか……?』
どうしても納得がいかない。アースちゃんを殺す理由は、もしかしたら赤髪ちゃんにはあるのかもしれない……でも……俺は、あの図書室でシルバーちゃんとアースちゃんと3人で笑い合ったあの日々を……守りたい。そして、アースちゃんとまた図書室で笑い合いたいんだ!
『理解に苦しみます。なぜダスト様がこんな忌々しいウイルスを庇うのですか?』
『忌々しいウイルスだと……!』
アースちゃんをウイルス扱いなんて……。
『ダスト様?』
『アースちゃんは……まあ、そりゃまだ短い付き合いだけどさ……でも悪い女神には見えないよ……それなのにウイルス扱いなんて……なんでそうまでして女神様を殺すんですか!』
『え? 女神様を殺す? 何か勘違いしてませんか?』
『え?』
『私が、殺そうとしてるのは、このナイフについていたウイルスの事ですよ?』
ん、あれえええええ?????
『え? そっちか……でもさっき俺に対して殺意全快にしてましたよね?』
『それはそうでしょう? 女神とはいえ乙女の柔肌を晒していたんですから』
よくよく見てみると、アースちゃんは半裸状態になっていた。止めるのに必死すぎて気がつかなかった。
あ……あぁ……なるほど、そういうことか……確かに……これは、完全に俺の勘違い……なんて恥ずかしい事を……。
あれ? じゃあ何で赤髪ちゃんは、図書室に入れたんだ……?
『そうよ、お兄ちゃんの勘違いよ』
俺の思考を遮るかのように、ブロンズちゃんが突然後ろから話しかけてきた。
『あ、ブロンズちゃん。シルバーちゃんも』
2人共俺のあとをわざわざ追ってきたようだ。何度も言うがブロンズちゃんは心が読めるため俺の行動理由がすぐに分かる。だから勘違いした俺を止めに来てくれた……はずなんだが、それにしては、遅すぎる……さては、ブロンズちゃん……。
『ふふ……勘違いしたお兄ちゃん……か・わ・い・い・わ』
か・わ・い・い・わじゃねえよ! 早く止めてくれよおおおおお!
どうやらブロンズちゃんは俺が勘違いしてることを面白がり、治療室のドアの前で盗み聞きしていたようだ。
全く……こんな緊急時でも全然ブレねえな……どんな精神してんだよ……。
『あの……女神様は大丈夫なんでしょうか?』
シルバーちゃんはそれよりも女神様が心配で仕方がないようだ。まあ親友のような間柄だったし、無理もない。
『大丈夫ですよ。もう既に止血は済んでますし、変なウイルスも今さっき全て排除しました。後は勝手に回復するだけです』
『良がっだああああああああ』
朗報を聞いたシルバーちゃんは滂沱の涙を流し、らしくなくブロンズちゃんに抱きついた。これにはブロンズちゃんも思わずシルバーちゃんをなでなでし始めた。
こうしてみるとまるでブロンズちゃんの方がお姉ちゃんみたいだ。
『それにしても……まさか女神様がこの魔王城に住み着いていたなんて……皆さんは知ってたんですか?』
『はい、知ってました。黙っててすいません。内緒にしてほしいと言われたもので』
『なるほど、あ、いや責めたりはしませんよ。ただ少し驚いただけです』
そんな会話をしていると、再びバン! とドアが開いた音がした。
今度は何だ! と振り返ってみると、そこには全力疾走をしたであろうゴールドちゃんが息を切らしながら現れた。
『みんな、ここに……いたか……』
『ゴールド姉? そんなに息を切らして、どうしたの?』
『はぁ……はぁ……大変だ……!』
『ゴールドちゃん?』
『まーちゃんが、いなくなっちまったんだ!』
『え?』
魔王がいなくなった……? 何なんだよ、次から次へと……一体この城で何が起きてるんだ?
第34話を見て下さり、ありがとうございます。
第35話は、今日か明日にでも、仕上げる予定です。
宜しくお願い致します。




