第413話『サバイバルバトル〜オーガスト・ディーンVSシャイ①〜』
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――こうして俺とシャイの交戦が始まった。
早速シャイが白煙を噴射すると、それは段々と剣の形となり、“光の剣”を出現させ、その手に取る。
次にシャイ自身も光に包まれ、まさにこの世の正義を象徴するような“光の戦士“となる。
これは彼女がルカヴァちゃんと戦った時と全く同じ形態だ。戦術を変えるつもりはないらしい。
ピッカピカ、圧倒的ピッカピカ。眩しい、あぁ、眩しい。
あれは人の姿なのか? 伝説上に生きた戦士のようだ。平和の為に悪を斬るという王道の神話に登場しそうな風貌を前に俺はつい呆然としてしまっていた。
まあ、そんな荘厳な雰囲気を感じつつも、実際はただ光魔法をふんだんに使って、身を固めているだけに過ぎない。
身近にあるもので例えるのなら、貴重な金か銀の折り紙をいっぱい集めて超大作の作品を作って贅沢で豪華な雰囲気を醸し出すような、そんな感じだ。
材料さえあれば俺だって真似できる事をやっているだけなのだが、その材料が膨大な量の魔力なので、誰でも真似できるわけではない。
『なるほど、カメラ越しでしか見たことなかったが、これは確かに神々しい』
皮肉でも何でもなく、ただありのままに褒め称えた。
そんな俺の言葉を聞く気はないのか、それとも聞こえてないだけなのか、シャイは無言で剣を握って俺に斬りかかる。
『防壁魔法』
見えない壁にシャイの剣は弾かれた。
『ちっ、やはり通らぬか……ならば!』
シャイは一旦後ろに下がり、そこから光の弾を連射して俺の身動きを封じようと試みた。
しかし、残念ながら防壁を張ったままでも反撃はできるのだ。シャイは牽制をしているつもりなのだろうが、全く意味がない。
『ほら、光魔法』
俺の光の弾が、襲い来る光の弾集団を飲み込みながら撃って来た本人に突撃する。
『なっ……!?』
身の危険を感じたシャイは光の弾を放つのをやめて、身体は仰け反るように空中を舞う。
木の幹に足が着くと、そこを踏み場に強く蹴り、俺に向けて光の剣を振りかざした――が、その剣が俺に届くことはなかった。
またしても弾かれる攻撃。今度は防壁を足場にその場から離れた。
『くっ……全然効いていないではないか!』
攻撃が通らない事に愚痴る彼女は自棄になったのか、光る身体を全力で動かして、俺に向かって走ってきた。
『体当たりでもするつもりか?』
『さあ、どうだろうな!』
そう簡単に答えを明かすつもりはないと言いつつ、彼女は高く跳び上がり、剣を振りかざす。
そのまま落下する勢いで俺の防壁を叩き斬ってやろうという、力任せの作戦のようだ。
彼女なりに色々考えているようだが、それでは防壁を破ることはできない。防壁はただの硬い壁ではなく、物理的な攻撃を絶対通さない壁なのだ。
『残念だが、それだけじゃこの壁は壊せない』
――案の定、防壁はヒビ1つつかずにご主人に襲いかかる武器を追い払った。
ちなみに、防壁魔法を突破する手段はある。
それは防壁破壊魔法というその名の通りの魔法。
魔法そのものを無効にする結界魔法。
鋭い岩を地面から出現させて相手に直接攻撃する岩石魔法。
――等など、実は意外と手段はあるのだが、どれも未来の魔法であるため、この時代に生きるシャイが覚えているわけがない。
魔法が無理とであれば、単純に力で大地を割って相手を底に落とすという力技があるが、果たしてそこまでの力を彼女にあるのか?
それも無理となると、あとは防壁魔法が維持できないほどの魔力切れになるのを狙って時間稼ぎするという最終手段もあるが、これはあまり現実的じゃない。相手の魔力量にもよるが、今の俺みたいに膨大な魔力がある場合、魔力切れになるまで太陽と月が入れ替わるレベルのとてつもない時間を要するからだ。いくらシャイが丈夫で器用だとしても、そこまでスタミナが保つとは到底思えない。
なので、シャイが俺に勝つ手段はないと断言していいだろう。あるいは俺が油断して集中力を欠いてしまい、防壁魔法が解除される事態になれば話は別だろうが。
『くっ……!』
またしても攻撃が通らず、一旦距離を取るシャイ。
『これならどうだ!』
シャイは両手で剣を水平に持ちながら、突き刺す勢いで俺に襲いかかる。
『おいおい、効かないって言ってんだろ』
でも、さっきと剣の構え方が違うのは気になる。何をするつもりだ?
様子を見ていると、シャイは思いもしなかった呪文を唱え始めた。
『光の精霊よ、その力を以って私に力を与えたまえ』
『は?』
ちょっと待て、精霊の力をシャイが使っただと……!?
『何で精霊の力を使える!?』
『さあな』
『何をとぼけて――あ、もしかして』
おそらくだが、拳を交えたよしみでルカヴァちゃんに教えてもらったんだな。俺やルカちゃん、あおいちゃんにとって敵に塩を送る行為だから本当はできなかったけど、内緒で精霊術を伝授したんだろう。だからシャイは誰から教わったかを話さない。
もちろん確証ではないが、辻褄は合う。
裏切り行為にも捉えかねないことだが、俺には彼女を責めるなんてできない。それが何であれ彼女の決めた事なのであれば尊重するのも大人の役目だ。俺は見て見ぬふりをしよう。
『どうした? 何がもしかしてなんだ?』
『――いや、なんでもない。よく考えたら別に知る必要もないことだ』
『そうか』
さて、こうして会話している間にもシャイの剣に新たな力が加わった。
シャイの剣が異なる色の光に包まれると、その周りから2色の白いオーラが渦巻き、紫色の電気を帯びている。
いかにもめっちゃパワーアップしました、という風貌だが、どんなに威力が上がろうと防壁を破ることは――
――刹那、俺は未来を見た。
数秒後に白いオーラが突き出して防壁を食い破り、俺の腹を貫通するという悲惨な光景を――。
『おいおい、嘘だろ!?』
防壁はあらゆる攻撃を通さないはずなのに、あのオーラだけはなぜか貫通し、防壁魔法の存在意義を否定されてしまった。
疑念と驚愕が混じり合った俺は、身体を横に跳ばして回避することで、悲惨な未来を未然に防いだ。
『マジかよ……』
こいつは厄介な事になったな……。
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