第412話『サバイバルバトル〜偽物の空〜』
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澄み渡るような青い空。それは常に世界を見下ろす広大な存在。そこにあるだけで芸術や荘厳を思わせる尊い存在でもある。誰もがそこに手を伸ばしたり、近づいたり、そんな憧れを抱く者もいるだろう。
今この中で誰よりもそれに近い所にいるのに、俺のこの手は空も掴めず、まだまだ遠い存在であると再認識させられる。
しかし、今見ている空は人工的なもの。この世界の女神が現実の世界の空を模したものだ。
なのに、俺はなぜこの偽物の空を見ると、自由に羽ばたく鳥を思ってしまう。今にも鳥の群れがそこら中を飛んでいるようなイメージだ。
まあ、何が言いたいかと言うと、こんな本物そっくりの空を創れるノルン様すげー! ってことだ。性悪女神だけど。
なんて心の中で上司をディスっていると、上から3センチくらいの石ころが俺めがけて落ちてきた。
『いてっ、なんだなんだ?』
空から石ころなんて落ちてくるわけがないので、きっとノルン様の嫌がらせだろう。全くなんて心の狭い女神なんだ。
『ん?』
すると、更に石ころが雨のように降ってきた。
『いたたたたたたたたたっ! 分かった、分かりましたよー! あなたは最高に可愛くて優しい女神様です!』
心にもないことを叫ぶと、途端に石の雨はスイッチを切ったように降らなくなった。
『ふぅ……』
天からの攻撃が止んで、1回安堵したものの、まだ安心できるような状態ではないことを再認識して、緊張感を再起動させる。
現在進行系で下降しているもんで、空が遠くなり、代わりに海と森林がどんどん近づいていく。
もしこのまま墜落して当たりどころが悪ければ、試合どころか人生からも退場だ。
一応何回か死の経験を経ているとはいえ、死ぬ事に抵抗が無いわけじゃないし、慣れてすらいない。
だから、こんなところで死んでたまるか!
『こうしちゃいられねえ! 何か魔法を――』
こういう時は空中浮遊魔法……よりも、転移魔法だ。地面に転移すれば魔力消費を節約して安全に降りられる。それに、いかに広いフィールドだろうと障害物がないこの空中では標的にされやすいからな。一刻も早く身を隠さないと、特にフレイの奴は俺の着地地点で待ち伏せしてる可能性もある。
『転移魔法』
俺は森林に身を潜めるため、空の中をあとにした。
森林地帯に転移した俺は、周りの様子を確認する。
『どうやら誰もいないようだな』
しかし、広大すぎるこのフィールドで人を見つける方が難しそうだ。試合が始まったというのに武器や魔法の音1つしない。本当に試合中なのかと疑ってしまう。まあ、単純にはるか彼方で戦っていて、こちらには聞こえてないだけかもしれんが。
『とにかく進むか。ルカちゃんやあおいちゃんも見つけて話し合わなきゃだし』
俺は探し人を求める旅に出た。
まずは手始めに探知魔法を――。
『………………なるほど』
ここから南に約2400メートル先にファーストドライヴ、更にそこから600メートル先にわかなさんがいる。
次にここから西に約1600メートル先にセカンドドライヴ、更にそこから1000メートル先にフレイとあおいちゃんが戦ってる。
次にここから東には誰もいない。
次にここから北に約1200メートル先にルカちゃんがいる。
――そして俺のすぐ近くにシャイがいる。
『そこにいるんだろ?』
『!』
潜伏がバレたシャイは隠れる事を止めて、美しい銀色の髪をなびかせ、その姿を現した。
『なんで分かったの?』
『なんでだと思う?』
『……うーん、あなた達未来人のことだから、未来の魔法ってやつかしら?』
『そうだな、正解だ』
『そう、じゃあ正解の賞品としてあなたの敗北をくれるかしら?』
『いいぜ、くれてやるよ。ただし俺じゃなくてシャイ、お前の敗北だがな』
我ながらめちゃくちゃカッコイイ。こういう台詞一度言ってみたかったんだ……ドヤァ。
『ドヤ顔がシンプルに腹立つわね。なんだか殴りたくなってきたわ』
『…………………………他人からウザがれるのは慣れてるんでね。お前もあいつらみたいに俺をいじめるのなら、俺がどんな手段を使ってもぶちのめしてやるよ』
ちょっと嫌な事思い出してしまった。あいつの事も、その妹の桐華の事も――。
忘れもしない。俺はいつもいつも殴られ蹴られ、暴言を吐かれていた。俺はそんなクズを許せない。だから復讐を謀った。
その結果が“アレ“だ。
何も気持ち良くなかった。いや、あのクズに仲間を殴らせるのは実に爽快だった。いつも嗤いながらいじめる立場だった奴が顔を歪めて苦しむ様を見て心の底からざまあみろと思ったもんだ。
しかし桐華を人質に取ったことだけは後悔している。あいつに復讐するために必須だったとはいえ、彼女を傷つけていいわけがなかった。もう二度とあんな悲劇は起こさない。
前科持ちの俺だが、それでも背負っているものがある。たとえ俺が快楽を求めるエゴイストであろうとも、正義のヒーローじゃなくても、俺は自分の快楽を守るために。
『ほう、貴様。ずいぶんといい顔をしているな』
シャイは突然口調と雰囲気を変えて俺を褒め称えた。
『あれ、お前誰だ?』
確かに俺と喋っているのはシャイではあるが、先ほどとはまるで別人のようだ。まさか二重人格か?
『私はシャイだ。シャイそのものだ。今も昔も』
『口調が全然違うんだが……』
『気にするな。気合いを入れる時はいつもキャラを変えているんだ』
『そうか』
『うむ、混乱を招いた事は謝罪しよう。すまない』
『いや、別にいいよ。俺の知り合いにも突然名前が変わった奴がいるんだ』
『ほう、その者にいつか会ってみたいものだな』
『会えるさ、一万年生きていればの話だがな』
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