第407話『記憶の残骸』
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まあ酷い! “炎神”状態は遊びだったのね!
そうだ、その通りだ。面白そうだなと思ってやってみただけだ。勘違いするなよ。
というわけで、俺は普通の状態となったわけだが――。
『さっっっっっっっっむ!!!!!』
頭の先から指の先まで凍りそうなくらいの寒冷に地獄のようなイジメを受けている。
氷の城ってこんなに寒かったのか。まあ氷でできた城だから当然といえば当然の話なんだろうが。
ブルブルブルブルブルブル。震えが止まらない。これまでに無いくらい身体が小刻みに右すぐに左と震動を続けている。
手で上腕を擦り続けてもほとんど寒さが払拭されない。何をしていても“寒い”という言葉に支配されて、正直戦うどころではない。
どうしよう、マジで何かないか……この寒さを凌ぐ魔法は……。
『大丈夫?』
フーちゃんは震える俺を見兼ねたのか、俺を気遣ってくれた。
『だ、だだだだだだだだ……だい、だい、だいいいい、だだだ……だ、だだだいいいいいじょ、じょじょ、じょじょじょじょじょ……ぶ』
『全然大丈夫じゃない、棄権を推奨する』
このままじゃ辛いだろうから降参して早く楽になって、というフーちゃんなりの警告をしてくれた。
俺もできればそうしたいところだが、違う。これは罠だ。
そもそもフーちゃんは本気の自分を打ち負かしてほしいと言ってたじゃねえか。なのに棄権を薦めてくるなんておかしい。
おそらくだが、ここで棄権すれば何も成さないままゼウスに勝てない。遠回しにそう言いたいのかもしれない。
であれば――そうであるのならば――
『棄権なんて……ごめんだ』
俺は寒さを凌ぐためにもう一度“炎神”状態となった。
今度は遊びでも試しでもない。“炎神”状態になった上で本気で戦うだけだ。
――たった今、“ダストの記憶”から解放された強力な魔法を良いタイミングで思い出した。よし、これなら。
『探知魔法……さらに分析魔法』
物の探知を行った上で、城の分析を始めた。分析魔法はその名の通り分析をする魔法だ。分析をすればこの城の構造や材質、さらに核の場所を知ることができる。
こんな便利すぎる魔法を覚えた以上、このままフーちゃんの分身を一人一人叩くよりも、一刻も早く核を探して城を破壊する方が早い。
『何をしてるの?』
『いや、何も』
『ホントに?』
『ああ本気だ』
『もし嘘だったら?』
『嘘だったらとは?』
『あなたの言葉に嘘があれば罰ゲームを受けてほしい』
罰ゲームって……試合中にそんな単語を聞くことになろうとは思いもしなかったな。
『へ、へぇ〜、どんな罰ゲーム?』
罰ゲームの定番といえば、苦い飲み物一気飲みとか、変な語尾をつけて1日過ごすとか、……あるいは、好きでもない女の子に告白するとか、色々思いつくが、果たして――。
『もし嘘だったら、今度の休みに私とデートして』
『……へ? デ、デ、デート!!??!?』
何を言うのかと思いきや、デート。え、なんでデート? しかも俺と?? 聞き間違いでは???
『えっと、息の根を止めたいのかな?』
『それはデッド』
『えー、じゃあ日本の首都に行きたいってこと?』
『それは帝都』
『んーと、編み物を始めるのに使うもの?』
『それは毛糸』
『停電の時便利だよね』
『それはライト』
『働いたら負けかなって思ってる』
『それはニート』
こうしてデートという単語から逸れていくと、フーちゃんは顎に両手をつけて、首を傾げて、
『私とデートは嫌?』
無表情系美少女が、最高に可愛いポーズで俺を誘惑してきた。もう自分が可愛いってこと分かってるだろ。じゃなきゃ絶対しないポーズだわ。
でも、か、かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!
俺の中の限界オタクがサイリウムを振って暴れている。このままでは尊死してしまう。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――
――なんて言ってる場合じゃない。試合に集中しなければ。でもまずはフーちゃんとの話に決着をつけなければ。
『全然嫌じゃないよ。むしろ君とデートだなんてご褒美でしかない』
冷静になった俺は俺なりの賛辞を口にした。何か口説いてるみたいだったが、できれば俺は彼女に喜んでもらいたい。会ったばかりのはずなのに、不思議とそんな気持ちが溢れていた。
『褒めてくれて嬉しい』
と、言いつつ彼女の表情は変わらない。でも、どことなく嬉しそうだ。
『懐かしいな、この感じ――ってあれ?』
何が懐かしいんだ? 何で俺がそう感じたんだ?
『フーちゃん?』
彼女は何故か涙を流していた。
やべぇ、何かとんでもない地雷を踏んでしまっただろうか。
『ご、ごめん俺何か癇に障るようなこと言った?』
俺がそう聞くと、彼女は涙を払拭し、いつものテンションに戻してから言葉を発した。
『ううん、そうじゃない』
『そっか、じゃあ泣いてるのは何で?』
『それは――いずれ時が来たら話す』
泣いてる理由は聞かないで、ではなく、今は話す時じゃないということか。
ということはそんなに重い話なのだろうか。
――もしかしたらこの既視感の正体を知ることは、俺の目的の果てを変えることになるかもしれない。
俺の中の記憶……“ダストの記憶”と関係があるのだろうか。でも、何だこの気持ちは……? 何だか懐しいような切ないような、抱くはずのない感情が俺の心を惑わしている。
なるほどな、確かに今その真実を明かすにはタイミングが悪すぎるかもしれない。今はまず強くなることでいっぱいいっぱいだ。
『分かった、その時が来たら話してよ』
フーちゃんは了承したとコクンと頷いた。
『話を戻す。もしあなたが探知魔法と分析魔法を同時に使っているわけじゃないと嘘をついているようなら私はあなたとのデート権を得る。それでいい?』
いや、もうバレてるだろこれ。探知魔法と分析魔法って何でそんなピンポイントで分かるんだよ。
俺はやれやれとお手上げのポーズを取った。
『分かったよ、じゃあ今度俺とデートしようか』
『ありがとう』
さて、話の決着がついたところで――
『それじゃ、試合の続きだ!』
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