第401話『オーガスト・ディーンVSフー①』
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俺は、従者に案内されるがままバトルフィールドに足を踏み入れた。
画面越しでしか見たことない場所だったが、実際に見ると広いな。ここでこれまで14人が戦った場所となると、空気も質感もかなり違って見える。
指定の位置に立つと、その直線上には既に対戦相手であるフーが静かに立っていた。俺が現れても特に表情1つ変えないあたり、ますますあの時の女神と同じ雰囲気を感じた。
特にお互いに言葉を発することなく、見つめ合うと、審判が試合開始の宣告をする。
『これより第8回戦、“新時代の先導者オーガスト・ディーン”VS“氷雪の女王フー”の試合を始める!』
お馴染みの試合開始の銅鑼が響き渡ると、俺は早速炎魔法をフーに放つ。
氷には炎、多くの人が分かる相性を考えれば自然と思いつく。
しかし、それだけで倒せるほど特別な少女達は甘くない。それは理解している。とはいえ相手がどういう戦い方をするのか全く情報がないのも事実。まずはこれで様子を見るといったところだ。
防がれてもいい、ダメージが通ってもいい。さあまずは君の戦い方を見せてもらおうか。
まずは様子見して相手の戦い方を知ってから、それにあった対策を考えるという戦法を取ろうとした――のだが。
――刹那、俺は未来を見た。
そこには傷ひとつつかないフーの足元に血まみれで倒れる俺の姿が映し出された。
『!?』
俺は急いで防壁魔法を張った。
すると、ガキンと刃を弾き返す音が聞こえた。まさにその通りで氷の剣を持った彼女が俺の目を盗み、いつの間にか懐に入ったところで俺に斬りかかろうとしたところ、防壁に弾かれて武器を手放してしまい、ノックバックした姿が俺の目の前にあった。
氷の剣が床に刺さると、彼女は丸腰のまま尻もちをつき、スカートの中を顕にした。
思いがけないハプニングに俺は思わず手を止めてしまったが、次の瞬間、彼女は気がついたら俺の真横で氷の短剣をこちらに向けていたが、やはりそれも弾き返され、またしても尻もちをついて下着が見えてしまった。
俺はパンツの事で頭いっぱいになりそうだったが、それよりも未来予知で見た映像と彼女の先程の戦い方について考えた。
なぜ未来の彼女には傷ひとつ無くて俺は血まみれで倒れていたのか、なぜ彼女は俺の懐に入れたのか。
転移魔法という可能性も考えたが、今の時代を生きる彼女に未来の魔法が使えるはずがない。ということは彼女が俺の懐に入るにはものすごい速いスピードを出せるほどの身体能力を有していなければならない。
こうして考え込んでいる間にも、フーは先程から何回も何回も俺に短剣を刺そうとしてくるが、全部防壁魔法によって弾かれている。そして、その度に尻もちをつきパンツが見える。
本人はパンツが丸見えになっていることなど一切気にせず、立ち上がり攻撃を続けた。だが、俺に攻撃が通ることはなかった。
先程の第7試合の序盤の状況と類似しているが、俺は時間稼ぎをしているわけでも命じられているわけでもパンツを見たいわけでもない。
ただ瞬時に移動する彼女への対処法が思いつかないだけだ。パンツも見えるし。俺も反撃したいところだが、度々瞬間移動するとなるとこちらから狙いを定めづらく、パンツも見えてしまう。
あ、またパンツ見えた。
次もパンツ、パンツパンツ。
……俺の頭の中がパンツに支配される前に決着をつけたいところだが、そもそも彼女の能力はなんだろう? パンツ魔法……じゃない、氷魔法を得意とするらしいけど、今のところ使っているのは“氷の剣”か“氷の短剣”のみ。
ということは、あと考えられるとしたら――
『時の魔法か』
俺がそう呟くと、フーは振り下ろす短剣を下ろした。
そして――
『時魔法“時間停止”』
――――――――――
――この瞬間から俺とフー以外の地球上の生物の時は停止されたようだ。こっちからでは控え室の様子が見えないので、本当に止まっているかは確認できないが、探知魔法で控え室を探知すると、誰の魔力も微塵も動いていなかった。
世界全体の時が止まっていること自体は前にも経験したことがあるから、それほど驚きはしないが、目の前にそれをやってみせる者がいるという事実だけで恐怖を抱かずにはいられない。だって、やろうと思えば今俺の時を止めて、殺めることだって容易いだろうからな。
『これは君がやったのか?』
もはや自明の理だが、一応そう聞いてみる。
『その通り、これは未来の私の能力。時を止める力』
時の女神お馴染みの独特の喋り方でシンプルな説明をした。
『未来の私ってことは、やはり後の時の女神か』
フーはそれで合ってると言うようにコクンと頷いた。
さっきの戦いで急に俺の懐に現れたのも、彼女が特段足が速いわけではなく、一時的に時を止めたからか。
『待てよ、人の時も止められるなら、俺の時を止めたまま刺すことができたんじゃ……?』
そうすれば、俺は防壁魔法すら発動できずに刺されて終わりだった。
『それは不可能。なぜなら時魔法は発動中に攻撃すると、その直前に強制解除されるようになっている』
なるほど、時魔法はあくまで時間を止めるだけでそれ以上の事はできないのか。まあ、無抵抗の相手に一方的に攻撃できたら、さすがにチートすぎるしな。
『だから攻撃される前に抵抗できる間があったってことか。それは分かったんだけど、なんで未来の力を今の君が使えるの?』
『“君”じゃない。“トッキー”あるいは“フーちゃん”って呼んで』
『ごめん、じゃあフーちゃん。さっきの質問に答えてくれる?』
『分かった。私はあなたの分身、ファーストドライヴから未来の私の記憶を現在の私に受け継いだ』
『記憶を受け継いだ? ファーストドライヴから?』
『うん』
なるほど、だから時の女神の力が使えたのか。俺も神様から授かった“ダストの記憶”のおかげで色々な魔法を使えるもんな。
『時の魔法の所持については分かった。でも、なんでファーストドライヴがフーちゃんの未来の記憶を持ってるの?』
『彼女もまた未来の自分の記憶を持ってるから』
『え、マジで?』
『マジ』
未来と言うと一万年後のことだろうが、ファーストドライヴが俺の知る未来に存在してて、何らかの魔法で時の女神の記憶を過去の自分に送ったということか。
やってることが相変わらず壮大でめちゃくちゃだけど、そこはツッコんでいるとキリがない。
『理解した?』
ここまでは頭がついてきてるのか確認したいようだ。まるでこの先もまだ説明することがあるよと言うように。
『なんとかな、既に頭がこんがらがりそうだが』
これ以上説明されるとキツイと遠回しにアピールした。
『分かった。休憩しよう』
フーちゃんは、俺の言いたい事を察し、俺が今望むものを用意してくれた。
『ありがとう』
俺はフーちゃんに、わざわざ俺のペースに合わせてくれた事に頭を下げてお礼を述べた。
『大丈夫、気にしないで』
『あ、でも時の魔法ずっと発動してるの辛くないか?』
時の魔法を解除すれば、当然時が動き出すので、試合の続きをしなければならない。
俺達が休憩するためには、その間ずっと時を止めておく必要がある。
『大丈夫』
彼女は無表情でそう言い切ってみせた。喜怒哀楽を表さないせいで、実は我慢しているのか本当に大丈夫なのか判断ができない。
『本当に?』
『大丈夫』
『……』
『……』
本当に大丈夫なの? と訝しい目を向けるが、フーちゃんは眉一つ動かさない。
『……』
『……』
沈黙が続く。コミュ障にとっては地獄の時間だ。
まあ、フーちゃん可愛いから目の保養にはなるけどさ。
『……』
『……』
これ、いつまで続くの?
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