第32話『お前の力、使わせてもらう!』
お待たせしました。
第32話ができましたので、宜しくお願い致します。
※文字数多めです。
※2022年4月2日改稿しました。
まあそれはもうめちゃくちゃ混乱した。そりゃそうだろう。だってこの世界が夢の世界じゃなくて、俺の記憶そのものだと言うんだから……でも……。
『本当にそうなのか? 誰か俺と似た人と間違えてるとかないか?』
思わずそう聞いてしまった。それほどまでに信じられない話だからだ。相変わらず情報量多いんだよ。
『いや、間違いなく貴様の話だ。そうだな……より正確に言うなら、この世界の貴様は、転移前の姿だ』
『転移前? どういうことだ?』
ダメだ……全く理解できない……頭の悪い俺には、全く理解できない。うわあああああああ。
『……まあいい、今は理解する必要はない。それよりも、貴様の仲間がピンチだぞ?』
『はっ! ミユウ!』
力尽きそうになるミユウの元にドラゴンが接近していた。俺は咄嗟に銃を取り出し、ドラゴンの口元に弾丸を撃ち込んだ。するとドラゴンの目線は俺の方に移り、ひとまずミユウは助かった。
だがこの後はどうする? 今の俺は意識のないプラチナさんを担いでる状態で空を飛んでいる。まともに戦うのは難しいだろうな……。
『だからさっき言っただろう? 貴様の全力を出せば、あのドラゴンを葬ることができると』
『さっきから考えてるけど、全力ってどうすりゃいいんだよ!』
『俺の力を引き出せばいい』
『お前の力を引き出す……そんな事ができるのか?』
『可能だ。そもそも今の俺と貴様は一心同体……俺の力を引き出すことなど容易い』
本当にそんな事をしても大丈夫なのだろうか……正直、罠のような気もする。それにこういう巨大な力を借りると、大体代償がつきものって決まっている。
『ほう、さては代償があると思っているのだな? 否、そのような事はない。だから安心して使うといい』
お、マジで? ヒャッハー! やりたい放題だぜえ! とはならないな……。やはり、怪しいし信頼できない……とはいえ、今の俺ではどうにもならないのも事実……やむを得ないか。
『分かった。お前の力、使わせてもらう!』
『いいだろう! 剣を出せ!』
俺は剣を差し出した。すると闇のオーラがまるで燃え盛る炎のように俺の剣の刃の部分を包み込んだ。
『これは……』
なんてキレイな黒い炎……闇の力なのに、何故か神聖さを感じる。こんなの……中二病が発症しちゃうじゃないか!
『この力なら……あ、こんな時に今更だが、お前の事は何て呼べば良い?』
『本当にこんな時な上に本当に今更だな貴様、マイペースだと言われるだろ……まあいい。名前については好きに呼べ』
『好きに呼べと言われてもな……あだ名とか無いのか?』
『元より名に興味などない。それに俺にあるのは本名のみだ』
『本名のみか……本名なら呼べないな……』
今まであまり触れてこなかったから忘れかけたけど、この世界では本名を呼ぶのは禁止されてるんだったな。ていうかホント何でそんなルールがあるんだよ。意味わからんし、こういう時マジでめんどくさいな……。
『あ、ああそうだったな……なら、俺の事はダークネスと呼べ!』
『ダ、ダークネス?』
『そうだ』
めっちゃドヤ顔で言ってきたけど、まさかの中二レベルのネーミングセンスだった。まあそう名付けたくなる気持ちは分からんでもないけどさぁ……。そういうのは、黒歴史として心の奥底に封印しておくものじゃないの……?
『クハハハハ! 俺の素晴らしいネーミングセンスに恐れ戦いたようだな!』
別の意味で恐れ戦いたよ……。
『おっと俺を褒めるのは後だ。そろそろ貴様の仲間が危ないぞ』
『ああ、そうだな。決して褒めはしてないけど行ってくるぜ、ダークネス』
ダークネスは、満足げにこの夢から去っていった。って正確には夢じゃないんだっけな。
『そんなことより早く助けに行かなきゃ!』
俺はさっきからずっと担いでいたプラチナさんを安全な場所に置いて、念の為時限式だがバリアを発生させる魔法をかけた。これで安心だ。というかまた無意識に知らない魔法を発動していた。もしかして今の俺……強い?
ってそんなこと考えてる場合じゃねえ!
『ミユウ! 今行くぞ!』
俺は全速力で空を飛びドラゴンの口元に闇のオーラを纏った剣で斬り込んだ。すると闇のオーラはドラゴンを包み込みドラゴンは苦しみ出した。この闇のオーラは、触れた者の体力と免疫力を下げる効果があるらしい。いかにも闇を司るダークネスらしい能力である。
『隊長……ありがとう……ございます……私は……もう限……界です……』
ミユウは魔力をほぼ使いきったようで、意識を失い、そのまま地面に横たわった。ミユウ、お疲れ。
『あとは俺に任せろ!』
今の戦場は俺とドラゴンのみ。
俺は再び剣に闇のオーラを纏わせ、苦しんでるドラゴンの口元中心に、これでもかってくらい斬り刻んだ。正直腕がもげそうだったが、なんとかドラゴンを倒すんだという確固たる信念があった。この感情はダストというよりダスト隊長から出たものだった。
『うおおおおおおおおおおおおお!』
無我夢中に斬っている内にドラゴンは積み重なるダメージにとうとう耐えられなくなり、身体が塵のように崩れ去った。もし闇のオーラが無ければ、ドラゴンを斬り刻む前に反撃されていたであろう。
『ふぅ……なんとか終わった……』
見上げると黒い空は打ち破られ、朝の太陽がこの地を照らしていた。まるで俺達の勝利を祝うかのように。
俺は倒れていった仲間達の元へ足を運ぼうとしたが、先にスカーレットさんが来て傷ついた仲間達に治療魔法をかけてくれたようだ。
『隊長、あの巨大生物を倒したんですか?』
『ああ、なんとかな』
『おおおおおおおお! さすがっす!』
『流石ですよ、隊長』
『この勝負、我々の勝利だああああああああ!』
仲間達は、この勝利をとても喜んでいた。そりゃそうだろうな。勝てそうにないと思っていたドラゴンが相手だったんだ。しかも全員生き残った!
みんな、とても疲れただろう。今は、この勝利を祝おう!
『……』
あれ? 口に出しているはずなのに言葉が出てこない……? 身体に力も入らない……!
『隊長……?』
『隊長! 大丈夫ですか!?』
『スカーレットさん、治癒魔法を!』
『分かってます! 隊長! 今、治癒魔法をかけます!』
その瞬間、俺は魔力切れなのか体力切れなのか分からないが、何も言えずに倒れてしまった。まあ疲れてたんだからそれくらい許し……て……。
………………
……あれ?
…………ここは?
…………急に別世界に切り替わったぞ???
…………あれ? 何だこの映像……。
俺の頭に浮かんできたこの映像……それは……。
さっきまで共に戦っていた仲間……スカーレットさんと、アレンが俺の知ってる魔王城に入っていったところだった。
とても楽しそうにしていた。魔王城の中を見てみると兄貴とかつての俺もいた。スカーレットさんとアレンと、あともう1人の美少女が一緒に会話してるようだった。
ん……? あの美少女……いつもと姿が違うから気づかなかったが……。
『あれは……魔王……!?』
見間違えじゃなければ、あれは間違いなく魔王だ……。でも、何であいつが……?
あ、思い出した。赤髪ちゃんから聞いたが、この城の所有者はずっと前から魔王らしい。
まあ魔王なんだし、それもそうだよな……それなら所有者である本人がここに居ても別に不思議じゃないか。
『あれ?』
ここで映像がプツンと途絶えてしまった。
ところでここは何処なんだろう? こんな暗闇の中だけど、まだ夢の中なんだろうか……曖昧な感じだ。
『ん? あれは……光……』
俺は光に手を伸ばした。すると光が俺に反応したかのように大きくなり、暗闇の一切を埋め尽くした。
やがて夢が崩れ去ると――
『――はっ!』
目を覚ますとそこは魔王城の治療室の天井があった。何で治療室で寝てたのか……さっぱり思い出せない。また突然倒れてしまったのか……。
『うーん、とりあえずもう朝みたいだし食堂へ行くか』
食堂へ行こうと治療室を出ようとしたその時だった。突然、また例の視線を感じたのだ。
『誰だ!?』
俺は後ろを振り向いたが……誰もいなかった。気のせいか……。なんか怖くなってきた。寒気も止まらないし、変な汗も出てきた。早く食堂へ行って、みんなの顔を見に行こう。
そう思い、早足で食堂へ向かうと、シルバーちゃんと対面した。
『あ、ダストさん、おはようございます。お体の方は大丈夫ですか?』
『シルバーちゃん、おはよう。体の方はもう大丈夫だよ』
『それは、良かったです……あの、ダストさん……ちょっと耳を傾けてもらっていいですか?』
俺はシルバーちゃんの言うとおりに、耳を傾けた。
『回復したばかりで、申し訳ございませんが、あとで、図書室へ来てもらってもいいですか? 女神様がまたダストさんと話がしたいそうです』
『分かった。あとから行くね』
俺はそう約束をしてシルバーちゃんと一旦別れた。
とりあえず俺がまずしなきゃいけないことは、朝飯を食べるのはもちろんだが、俺の体調が回復したことを皆に報告すること……そして、なぜ俺が治療室に居たのかを聞かなきゃいけない。
『さて、行くか』
『おはよう、お兄ちゃん。どこに行くの?』
『うわっ! ってブロンズちゃんか……お、おはよう』
ブロンズちゃんは、どこにいたのか突然後ろから話しかけてきた。マジビックリした。なんか前にも同じような事があったな。めっちゃデジャブを感じた。この魔王城では不意に話しかけるのが流行ってるの?
『流行ってないわ。それともお望みなら流行らせてあげましょうか?』
ブロンズちゃんはそう言ってニヤリと悪巧みをするような顔でこちらを見た。
『いや、いいです。勘弁してください』
可愛い顔してるのに相変わらずSっ娘だね……。
『ありがと。最高の褒め言葉だわ』
もはやナチュラルに心を読まれている。ていうかそんなに魔法発動して大丈夫なの?
『大丈夫よ、これそんなに魔力消費が激しくないから』
『そうなんだ』
『それよりも、お兄ちゃんに聞きたいことがあるの』
『何?』
『さっきシルバー姉と、図書室について話してたけど……どういうこと?』
そうだった……この娘は、心が読めるから……。でも、どうすれば……。
どうしようと考えていたら、突然さっき別れたはずのシルバーちゃんが戻ってきた。ヘルプミー!
『大丈夫ですよ。ダストさん』
とシルバーちゃんがそう言ったあと、ブロンズちゃんと静かに見つめ合った。それから2分くらい経っても、2人は沈黙を続け、うんうんとシルバーちゃんと、ブロンズちゃんが頷いている。もしかして、脳内だけで会話してるのか?
『分かったわ、シルバー姉』
とブロンズちゃんが言うと、シルバーは笑顔で図書室の方へ去っていった。一体何を話してたんだろう?
『お兄さん、喜びなさい。今日はハーレムデートよ!』
『ハ、ハーレムデート……!?』
第32話を見て下さり、ありがとうございます。
次回も、なるべく早く投稿していきたいと思います。
宜しくお願い致します。




