表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
406/725

第394話『オベイロンVSファーストドライヴ①』

お待たせしました。

第394話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 試合が始まって早々、オベイロンは剣を抜き、美しい羽を広げる。


 気品あるその姿は、戦士というより舞台の上の俳優のようだ。


 ――幼少期から叩き込まれた王族としての立ち振る舞い、さらに現王としての威厳が備わっているからこその美しさ(パフォーマンス)もあるだろうが、本人はそれを鼻にかけず、ただ毅然とした態度で戦闘(ダンス)を披露する――。


『……行くぞ!』


 こちらから攻めると宣言するように掛け声を上げると、ファーストドライヴへ向けて飛行する。


 明らかな戦闘モードに入るオベイロンに対し、彼女は特に身構えることなく、戦闘中にあるまじき優しい表情で見つめている。


(どういうつもりだ……?)


 この時、オベイロンは戦士としての勘が働いたのか、嫌な予感を覚えていた。


 彼は今まで自分が戦った相手を思い浮かべた。


 ――それは己の欲の為の侵略者。

 ――それはただ戦うだけの為に戦い続ける狂人。

 ――それは愛する者を守る為に戦う戦士。


 どんな強者であろうと、私が剣を向ければ表情を変えて真剣な戦闘を繰り広げていた。


 しかし、彼女はそのどれでもない。とても試合(せんとう)を行うような態度とは思えない。まるで子供を見守る母親のような表情をしている。


(一体何を企んでいる……? それともファーストドライヴ殿には戦意が無いのか?)


 オベイロンは一旦羽を休め、彼女と距離を保って様子を見た。


『あら、来ないのですか?』


 進撃を止めた事がそんなにも意外だったのか、キョトンとした表情を見せた。


『遠慮しなくていいですよ、ほら、試しに攻撃してみて下さい。その全てを私は防いでみせますので』


 攻撃をしてこない相手への配慮とも逆に挑発とも取れる発言にオベイロンは一瞬だけ戸惑いの表情になるが、すぐに表情を取り戻すと、


『言ってくれるな』


 オベイロンは今度こそ攻めに行くぞと言うように剣を向ける。


『今度こそ行くぞ!』


 再び羽を広げ、彼女に攻撃を仕掛ける。


(罠かもしれない。しかし、だからといって何もしないことには始まらない。とにかく攻撃だ!)


『光の精霊よ、我が剣に力を与えたまえ』


 ――剣に光が集う。


 それはやがて、隙間が無いくらいに覆われ、完全なる“光の剣”へと変貌を遂げる。


 オベイロンはそれを空に突き刺すように振りかざすと、


『はああああああああああああ!!!!!!』


 そのまま縦に振り下ろした。


 すると、縦長の三日月のような斬撃が、彼女に向けて放たれた。それはまるで生き物のように目標(ターゲット)に襲いかかる。


 このまま動かずに斬撃をまともに喰らってしまえば、身体が真っ二つになってしまう。それはセカンドドライヴのような強靭な身体であっても、戦闘に支障が出るレベルの傷は負うだろう。


 そんな明らかに殺傷能力の高い斬撃を見ても尚、ファーストドライヴは表情を変えぬまま様子を伺っている。


(避けぬのか!? ノルン殿に蘇生を施されるとはいえ、このままでは真っ二つになるぞ!)


 これから()()なるであろう彼女の凄惨な姿を想像する。


 しかし、そんな未来は彼女によって否定されることとなる。


 触れたもの全てを切断するその斬撃は彼女の前、数センチ先までしか通らず、無念と言わんばかりに散り散りになる。


『そんなバカな……一体何が起こったんだ……!?』


 オベイロンはありえない光景に驚愕の表情を浮かべる。対して彼女の表情は微笑んだまま――


『これはこの世界の魔法ですよ、()()()ですが』


『未来の魔法だと……?』


(確かこの世界には6属性の魔法があると聞いた。だがディーン殿のように一部の者は未来の魔法を使えると耳にした)


『なるほど、それがあなたでしたか』


(そうだとして、ファーストドライヴ殿の魔法は一体どういう魔法なんだ? 攻撃を阻害する……ということは目に見えない壁のようなものを張っているということなのだろうか?)


 思考を巡らすオベイロン。しかし、彼の世界には存在しえない現象(まほう)を、今、分析しようとしても答えが得られるはずもない。


 オベイロンは一旦考えることを止め、(ぶき)に闘志を込める。


(とにかくもう1度攻撃だ!)


 オベイロンは先程と同じように斬撃を放った。


 しかし、結果は同じだった。


(やはり、偶然ではなさそうだ。彼女の前に“何か”がある)


 オベイロンは諦めたように剣を鞘に収めると、精霊界で1番馴染みのある戦闘スタイルに変えた。


『光の精霊よ、我に力を貸したまえ!』


 オベイロンは両手を伸ばして、手のひらの先に“光の弾”を作り出した。


 これは、こっちの世界でいう光魔法とほぼ同じようなものだ。異なる点があるとしたら、精霊の力を借りるか、己の魔力(エネルギー)を消費するかの違いだろう。


 しかしながら、オベイロンの“光の弾”は他の精霊よりも一際強力ではある。それは王族の血を引いているからというのもあるが、それに驕らず、努力と研鑽を怠らなかった結果でもある。


『行けええええええええ!!!!!』


 “光の弾”は今、発射された――。


 それでもやはり、彼女の表情は変わらなかった。その時点で、“光の弾”がどうなったのか考えるまでもなかった。


 先程の出来事を体現(リプライ)するように、“光の弾”は彼女の前で、最初から何もなかったかのように消し飛んだ。


『これもダメか』


(となると、斬撃かどうかはあまり関係ないか。ならば位置の問題か……? であれば――)


 オベイロンは羽を広げたまま彼女の上空回りを旋回する。そうしながら、あらゆる遠距離攻撃を投じ続ける。


 “光の精霊よ、我に力を貸したまえ“

 “炎の精霊よ、我に力を貸したまえ“

 “氷の精霊よ、我に力を貸したまえ“

 “雷の精霊よ、我に力を貸したまえ“

 “風の精霊よ、我に力を貸したまえ“


 様々な属性の精霊の力を間髪入れずに繰り返し繰り返し繰り返し使うことで、怒涛の連続攻撃を実現できる。


 その全ての攻撃は一つ残らずファーストドライヴへ向けられた。


 複数の属性を一気に放った影響で、電撃を帯びる異常で極大な竜巻が発生した。その渦中に彼女がいるため、攻撃が当たったのか守られてるのかも分からない。


(やったのか……? だがこれで終わった気がしない。一応確認しよう)


 オベイロンは警戒しつつ、ファーストドライヴの安否を確認する。


 竜巻の中を覗いてみると、そこにはただジッとその場で待つファーストドライヴの姿があった。しかも無傷で、微笑みすら崩さずに――


(くっ……これもダメなのか……一体どうすればいいんだ……?)


第394話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ