第393話『選手の想い〜?????とファーストドライヴ〜』
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特に何事もなく、休息時間の終了が宣告された。
第7試合の件だが、代打選手が見つかったそうだ。
その者の名は、オベイロン。かつて橋本ルカを助け出すために異世界から来た侵略者だ。だが今は同盟を結んでいて、何かあれば協力し合う良好な関係となっている。
まさか、このような形で助けられるとは誰も思わなかったが。
『今回欠席した者に代わり、この私オベイロンが大会に出場させて頂く運びとなった。宜しく頼む』
王の威厳はそのままの彼は控室で丁寧に自己紹介をして、橋本ルカとルカ・ヴァルキリーに対しては物腰の柔らかい感じで軽く挨拶と会話を済ませると、早々にバトルフィールドに向かった。試合の準備は既に万全のようだ。
『では皆様、私も行ってきますね』
後を追いかけるようにファーストドライヴもバトルフィールドへ向かった。
試合が始まる直前まで、雑談は続く。
『ディーンさん、まだ帰って来ないね……』
ルカは残念そうな表情で、まるで自分のことのように焦りを感じている。
本当に彼は試合までに帰って来れるのか、そんなに大規模なトラブルなのか、であれば、私が大会を放り出してでも手伝いに行きたい。彼女はそればかりを考えている。
その心配が感染ったように、“彼を想う者”全員が同じような表情をする。
彼と面識のない者達も、とても歓談できるような空気ではないと、小さな声でこっそりと話をする。
そのまま沈黙に近い空気の中を過ごしていると、場の空気を読まない液晶が、いつもの仕事をこなすように試合の様子を映しはじめた。
『お、試合始まるみたいだぞ』
『きたきた〜』
この世界では見慣れぬ精霊という種族の戦い。中には既にオベイロンの戦いを目で見た者もいるが、物珍しさで興味を湧く者も少なくはない。
『精霊か、我々は映像でしか見たことがなかったが、どのような戦いを見せてくれるのか、なかなか見物ではないか』
『あなたと戦ったルカちゃんも一応は精霊でしょ? まあ彼の方が“上位”というものらしいけど』
『そうだったか、いや、そうであったな。だが上位とは一体どういうことだ? あのルカ・ヴァルキリーよりも強いということか?』
『さあ、私も聞いただけだから、よく分からないわ』
『ふむ、そうか。まあ試合を見れば自ずと解ることか。ところでフーは先程から上の空だが、一体何を考えている?』
『私は、“彼”が気になる』
――――――――――
《オベイロンの場合》
ほんの数十分前、ノルン殿から連絡があった。大会に欠員が出てしまったので出場してくれないかと。
ちょうど休日だったので、参加すること自体は可能であった。とはいえ突然の依頼だ、すぐに決断できるわけもなく、少々戸惑いの声を上げてしまった。
以前、彼に同胞を殺されたとはいえ、あれは我々にも非があり、むしろ迷惑をかけてしまったこともあり、私の大事な国民を丁重に扱ってくれた事に恩義を感じている。
私が大会に出場することで、彼らを助けられるのなら私は喜んで協力する。その旨を伝えるとノルン殿は大変お喜びの声を上げていた。
私は秘書にこの事を連絡し、すぐに支度を済ませ、再びこの世界へと赴いた。
大会の趣旨は既に説明を受けた。試合方式はトーナメントを採用しており、優勝〜3位まで賞品があるそうだ。中でも優勝賞品の願いを叶える権利というものが実に魅力的であった。
異世界人の私でも優勝すればその権利を授けて下さるそうだ。もちろん、それが無くとも私は喜んで参加しただろうが、私も叶えたい願いがある。それは――家族のような友人が欲しい。
実は私には立場故か友達といえる者はいない。同年代の者と会話を試みても、私を神のように崇め奉る。そんなに畏まらなくてもいいと言っても、畏れ多いです! と断られてしまう。これではとても対等な関係とはいえない。
王宮内の者も1人残らず私に平伏する。私の家族が存命であれば……と思わなかった日は無かった。
素直に、より簡潔に言ってしまえば、私は寂しいのだ。
本音を語り合うことも、心の底から笑い合えることもなく、このまま一生終えるのは、さすがの私も堪えるものがある。
だから、私は本気で優勝を目指すことにしたのだ。ただの穴埋め用員ではなく、精霊の王としてでもなく、一介の願望者として。
――――――――――
《ファーストドライヴの場合》
私には叶えたい願いなどない。私はただゼウスの襲撃を止めるためだけの道具だ。――というのは建前で、本当はゲームを作るための道具と環境がほしい。
もちろん、自分に与えられた任務を優先する。私が言っているのは、“その後”の話だ。
ゼウスの襲撃を完全に阻止すれば、私はもうお役目御免だ。そうなったら自由にしていいとノルン様にも言われている。
だったら、私はこの世界でゲームを作る。
私はそれだけの為に生き、ゼウスの計画を破綻させるのはその過程に過ぎない。
ただ、私は知っている。未来の自分から私宛に送られた記憶。それは誰の願いも叶えられない絶望的な世界の映像であった。
これでは願いを叶えるどころではない。
だが、ちゃんと勝算はある。未来の自分から送られたものは記憶だけではなく、計画書も。そして彼の真実を知る資料も、ここに――
――――――――――
2人の選手は、バトルフィールドに着くと、向かい合うように所定の位置に立つ。
互いに特に口を開くことなく、審判に指揮を委ねる。
『これより第7回戦、“異界の精霊王オベイロン”VS“魔術の最高峰ファーストドライヴ”の試合を始める!』
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