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第391話『わかなVSヘラクレス②』

お待たせしました。

第391話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


※今回は文字数多めです。


 檻の中に閉じ込められたわかなだが、特に表情を変えることなく、腕を組み、その場に立ったまま思考を巡らせる。


 ――ここは雷の檻。1人の人間が入れるギリギリのサイズなので、満足に動くこともできない。いかなる強者であろうと、この檻の中に入ってしまえば、“かごの中の鳥”になってしまう。


(わかなさんを閉じ込めることには成功したが、いずれ時間が経てば雷の檻は消えちまう! その前にわかなさんを倒す!)


 期間限定の監獄を作り出した看守長(ヘラクレス)は投獄早々囚人(わかな)刑罰(こうげき)を執行する。


 だが、彼自身も雷の耐性は皆無だ、触れれば当然感電する。わかなも攻撃不可能だが、ヘラクレスからも近づいて攻撃することもできないという互いが互いに手を出せないという膠着状態に陥っている。


『我をどうする気だ』


 わかなも、これではそもそもヘラクレス殿も我に手を出せないのではないか、と思ったのだが、彼が槍を手にした時、次に何をするのか容易に予想できた。


『そりゃ、(こいつ)をぶん投げるんだよ!』


 ヘラクレスは檻と檻の間に槍を全力で投擲する。これで彼は檻に触れることなく一方的に攻撃することができるという有利な状況を作り出すことができたのだ。


(なるほど、これなら確かに檻に触れることなく我に攻撃ができるな。だが――)


 現状わかなは襲来する槍を回避することもできず、檻の中が狭すぎて満足に身体を動かせないので、拳で吹き飛ばす事もできない。行動が封じられた彼女に成す術はない。


 袋のネズミとはまさにこの事。これで確実に一撃を入れられる。それは彼だけではなく、この試合を観戦してる者達の9割はそう思っていた。


 槍の先端が檻と檻の間を潜り抜けると、わかなはその槍に胸を抉られる前に、素手で掴んで止めてみせた。


『なにィ!?』


(そんな馬鹿な、全力で投げたんだぞ!? 手でキャッチできるスピードじゃねえんだぞ!?)


 想定外の事態に驚愕するヘラクレスだが、雷の檻が解除されるまで時間がない。せっかくのチャンス、このまま何もしないわけにはいかないと、魔力が許す限り炎魔法と雷魔法を放ち続けた。


(さすがのわかなさんもこれで終わりだ!)


『ふむ、致し方ない』


 わかなは、今手に持っている槍をその辺に捨て、頭と心臓を守るように両手を交互に組み、前に出すことで防御姿勢を取った。


『ぬぅぅ……!』


 だが防御と言っても、魔法で防御しているわけではない。ただ急所である頭と心臓に当たらないように腕を身代わりにしているだけだ。


『むう……』


 2つの魔法を交互に浴びるわかな。常人なら倒れてもおかしくないが、彼女の強靭な筋力と鋼のような強い精神があれば(おび)えず、(ひる)まずにいられる。


 とはいえ、確実にダメージは入っている。このまま魔法を撃ち続ければヘラクレスの勝利は揺らぎないのだが、それはあくまでそれが可能な場合の話。


(ヤバい、そろそろ魔力切れだ……)


 彼が撃てる魔法はせいぜいあと2、3発ほど。しかも先程作った雷の檻はそろそろ役目を終えようとしている。


『ちっ』


 ヘラクレスは一旦攻撃を止めて、後ろに下がる。


 そのタイミングで雷の檻は綺麗さっぱり消えていった。


 これで彼女を止めるものは無くなった。


 雷の檻から釈放されたわかなは、瞬時に動き出し、ヘラクレスに殴りかかる。


『……しゃーねえ!』


 ヘラクレスは槍を構え、わかなを迎撃する。


『うおおおおおおおおおおお!!!』


『はあああああああああああああああああ!!!!!!!』


 ――(たましい)(たましい)衝突()つかり合う。


 小細工も魔法などない、ただ純粋に己の戦闘技能を披露するだけ。


 互いが互いの攻撃を弾いているところを見ると、2人の実力は互角で拮抗しているように見えるのだが、実際の2人のレベルの差は100以上もある。


 レベルで上回っているのはわかなの方だが、先程、魔法による連続攻撃を受けていたせいで、それなりにダメージを負っている。まだ戦闘ができるレベルではあるが、少なくとも万全の状態ではない。


 ――しかし、それだけでは差は縮まらない。


『うおっ!?』


 手に持っていた槍が拳に弾かれると、回転しながら宙に舞い、床に突き刺さる。


『しまった!』


 丸腰の状態となったヘラクレスに容赦のない猛攻が襲いかかる。


 まず1発目。


『ぐおおおおおっ!』


 次に2発目。


『ぐあああああああっっ!!』


 続いて3発目。


『うああああああああああああああっっっ!!!』


 更に4発、5発、6、7、8、9――


 とてつもなく重い拳で殴られ続けたヘラクレスは意識朦朧としながらも、倒れることなく、立ち尽くしている。


『あ……あ……』


(意識が…………飛びそうだ…………………………反撃………………しないと…………俺の……槍は…………どこだ………………)


 本人はまだ戦う気でいるのだが、身体はもう限界を超えている。今の彼に反撃できるだけの力はない。


 あと1発でも攻撃が決まればヘラクレスの敗北は決定する。いや、何もしなくても勝手に倒れるだろう。誰が見ても今の状態のヘラクレスに勝ち目があるとは考えていない。


 ――もはや勝敗は決した。この試合(しょうぶ)はわかなの勝利だ。


 それはノルン様の未来予知でも確認している。わかなの猛攻を受けた時点で敗北は確定していたのだ。


 ――だが、ヘラクレスの闘志の炎はまだ消えていなかった。


『まだだ…………まだ…………終わってねえ!』


 ――力尽きる寸前の戦士は最後の力を振り絞り、わかなに戦いを挑む。


『おお……そんな身体でまだ諦めてないとは……その闘志、我は大いに感服した。いいだろう、ヘラクレス殿。我も全身全霊を持って、そなたの覚悟、受け止めよう。そして我が勝利を頂戴する!』


 ――猪突猛進の勢いで2人は衝突した。


『はあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』


 ――空気が振動する。戦士と戦士の戦いに共鳴しているようだ。


『うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』


 死にかけの男は一体どこから力が湧いてくるのか、先程よりも攻撃の勢いが激化している。


 攻撃に粗があるといえばそうだが、それ以上に槍に込める力が強い。攻撃の命中率は不安定だが、その分威力とスピードが増している。


 さらに、


『喰らええええええええええ!!!!!!!』


 槍を投げる寸前、槍に雷魔法と炎魔法を付与し、雷と炎が渦巻く殺傷能力が著しく上がった槍が完成した。これは元からあった技術ではなく、彼が咄嗟に編み出した新しい戦術である。


『ふむ……』


 至近距離での事なので、拳の風圧で槍ごと雷と炎を吹き飛ばすのは現状難しい。だからといって、諦めて防御するにしても、雷と炎の槍の攻撃を許すのはかなり痛い。


(回避するしかあるまい)


 しかし、今更回避しても完全に槍を回避することはできない。少なくとも槍の先端が身体のどこかには刺さる。


『ぬうぅ!』


 結果、彼女の肩を掠る程度で済んだ。しかし、雷と炎の付与効果により、火傷と身体の痺れが発生した。


 わかなが傷ついた肩を押さえている間に、ヘラクレスは最後に雷魔法を放った。


『とどめだああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!』


(抜かった、間に合わぬ)


 回避することすらできずに、雷魔法が直撃した。これは彼の諦めない力が生んだ結果だ。しかし――


『ほう、魔法は撃ち切ったと思ったが、この時のために僅かに魔力を残していたか』


『なっ……!?』


 わかなは雷を受けて尚、倒れることはなかった。


『素晴らしい、狂戦士(バーサーカー)のフリをして、咄嗟に魔法を使用するとは我の範疇ではない。恐れ入った』


 彼女は相手に賛辞を送る。その賛辞を彼は素直に受け入れるも、それ以上に脱力感と自分への失望感、悔恨、そして何より――


『いや〜参った参った、もう負けましたよ、あっはっはっは!』


『ほう、もう降参か?』


『ええ、もう俺限界ですよ。魔力もないし、力も入らないし、何より立ってられないし』


 そう言うと、ヘラクレスは震える足を休ませる為に、その場に座り込む。


『でも、楽しかったです! 機会があったらまた戦いたいです!』


 彼は敗北者とは思えない満面の笑みでそう言った。彼の中にも確かに悔しいという感情はあれど、それ以上に戦いを大いに楽しめたという満足感があったのだ。


『そうだな。我もなかなか滾る戦闘(しあい)であった』


 わかなは膝をつくと、試合相手への敬意として握手をしようと手を出してきた。もちろんヘラクレスはそれに応じて、互いに手と手を握った。


 ――こうして第6回戦は激戦の末、料理長わかなの勝利という結果に終わった。


第391話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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