第378話『マリンVS橋本ルカ②』
どうも
ちょっといつもより更新が早いのですが、
第378話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
人魚に見惚れていく内に、水位はバトルフィールドの高さ半分くらいにまで上った。それに対応するように審判も顔色1つ変えずに上の足場へと足を乗せる。
『この姿になるのは久々ね!』
――美しき人魚姫。水の上から水の岩場を作り、そこに身体全体を見せつけるように身を置いた後、水面を踏む橋本ルカを見つめる。
『へえ、くつの裏に水魔法をかけて水の上を歩くなんてなかなか面白い発想ね!』
『マリンさんこそ驚きました。まさか人魚になれるなんて……!』
『別に人魚そのものになったわけじゃないわ。ただ人魚を模した姿になっただけよ。人魚なんて見たことないから絵本で見るようなイメージだけどね』
ただ見様見真似で人魚になってみたとマリンは言う。しかし、これはマリンが特別だから出来たことであり、どんな魔法上級者でもそんな真似はできない。
『さて、ルカちゃん。これから私は本気であなたを倒すわけだけど、感想はあるかしら?』
マリンは挑発するように橋本ルカにそう聞いた。
『嬉しい限りです! どこからでもかかってきてください!』
橋本ルカは改めて剣を構えて、水の大地を踏む。その度にピチャピチャと水飛沫が跳ねる。その水飛沫が――
『ルカちゃん! 危ないイヌ!』
『え?』
本来戦闘では何の役割のない水飛沫が、まるで意思を持つように、極小の水弾となり、橋本ルカに襲いかかる。
――小さい水隕石。それは流星群のように並行する。一見当たっても大したダメージはないと思ってしまうが、速度は弾丸よりも早く、マリンによって自動で攻撃用にコーティングされている為、針のような硬さでできている。
『水魔法!』
聖剣は咄嗟に橋本ルカの背後に水の壁を作り、水弾を全て吸収した……かに見えたが、それは水の壁に留まらず、そのまま貫通する。
『ああっ!』
グサリ、グサリ、グサリ、グサリ、グサリ……。
踏んで水飛沫が出来た数だけ、彼女の柔肌を突き刺す。
痛みに耐えられない彼女は前に傾き、やがて水の中へ身を落とした。
――痛い、痛い、痛い、痛い、痛い……だけど、ディーンさん達の為に、こんなところで負けてられない! ケルちゃん!
彼女は聖剣に問いかける。今の自分ではマリンに勝てない、だからマリンさんを倒すだけの……いや、ディーンさん……初恋の人を守れるだけの力が欲しいと――。
――もちろん、そのつもりだよルカちゃん。君と初めて会った時から、君の覚悟は伝わってるんだから。
聖剣は静寂な水の中で、凄まじい力を彼女に与えた。
一方でマリンは、一向に浮かんでこない橋本ルカを心配していた。もしかして溺れてるのではなかろうか。だとしたら助けないといけないが、審判からは何も言ってこない。
審判は選手の安否状態を常に更新し続け、戦闘不可能であれば勝敗を決し、続行できるのなら特に何も言わない。
ということは、後者の続行できる状態ということだ。冷静に考えれば分かることだが、マリンは橋本ルカが好きだ。ノルン様の権限があるとはいえ、彼女にもしもの事があれば、保護者以上に悲しむだろう。そんな未来をつい想像してしまい、視野が狭い状態になっている。
『ルカちゃん、大丈夫かしら……ねえ審判さん、彼女の安否を――』
――刹那、水の中から光のオーラを纏う橋本ルカが大量の水飛沫を上げて浮上した。無論、浮上した事で発生した全方位からの水飛沫は針のような水弾と化して、橋本ルカに一斉攻撃をする。
四方八方の針を避ける手段はない。しかし、橋本ルカは目にも止まらぬ速さで水弾を全て斬り伏せる。
『え、何が起きたの……?』
マリンですら、目の前に起きたことが目で捉えきれず、ただ、いくつもの水弾が突然機能停止したようにしか見えない。
――私の水魔法が機能しない? そんなはずはない。信じられないけど、ルカちゃんがあの剣で水弾を全て斬ったんだろう。そうと分かれば、じっとしていられない。
『遅いよマリンさん』
『え』
気がつくと、マリンは背中を斬られていた。ただ実際には肌が傷ついたわけではなく、装甲が斬られただけだ。マリン自身にはダメージはなく、流れてるのは赤い血ではなく、透明な水だ。
『水……?』
『捉えたわ』
瞬間、分散した水は剣となり、槍となり、橋本ルカをめがけて自らを発射する。
その距離僅か数十センチ。回避は不可能。
万事休すか……そう思った橋本ルカに聖剣が水魔法の奥義を繰り出す。
――ルカちゃんの魔力かなり貰っちゃうけど、これなら……!
『水魔法!』
今度は水の壁ではなく、水の機関車を作り出し、水の剣や槍ごとマリンに突撃する。
『うっ!』
水とはいえ本物の機関車にも劣らない硬さを誇る水列車に轢かれ、さすがのマリンも大きなダメージを負った。
彼女はとても動くことができなくなり、水の岩場で病人のように横になっている。
『あっ……はぁ……はぁ……まだ、まだ……よ……』
既に虫の息のマリンだが、闘志はいまだ燃え続けている。
『いくわよ……これが……わたしからさいごの……!』
『え、なに』
――突如、波は異常事態を示しているかのように荒ぶり、水面積の真ん中の部分だけ切り取られると、それは龍の形と成る。
『あれは……龍?』
その龍は橋本ルカを捉えると、即座に口から破壊光線ならぬ、水の破壊光線を撃ち出した。
これがマリンの最後の一撃、水弾とは威力も段違い。まともに喰らってしまえば、どんな強者であろうと戦闘不能になるだろう。
――だから、受け止めるしかない。マリンさんの想いも、ケルちゃんを信じて、私は私の願いを――
『叶える!!!』
彼女の想いに応えるように聖剣は光った。
『やあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
橋本ルカは力を込めて真上に振りかざし、水の龍めがけて破壊光線ごと斬り落とすように、まっすぐに振り落とした。
――瞬間、破壊光線も水の龍はおろか、バトルフィールド全ての水は四散した。
橋本ルカもマリンも、高い水位の上に居た状態だったので、水が無ければ当然空中にいるのと同じ状態だ。
まだ動ける橋本ルカはまだしも、もう動けないマリンは高い所から硬い床に落下することになる。
『マリンさん!』
橋本ルカは精一杯の空中跳躍でマリンを抱きかかえ、安全に着地した。
『危ない危ない……ん?』
橋本ルカの視線の先には大きな2つの柔らかい山があった。遠くから見ても大きいと思ったのだが、近くで見ると、これはなかなか……と惹かれていくように、ついガン見をする。
『ちょっとルカちゃん、どこ見てるの?』
『はわわ! ごめんなさい!』
橋本ルカは慌てて熱い視線を外し、マリンを丁寧に降ろした。
『ルカちゃん……ありがとね。私の負けよ』
『あ、はい……ありがとうございます』
『ねえルカちゃん』
『何ですか?』
『私のスカートを捲ったり、胸をガン見してきたのは一体誰の影響かしら?』
マリンは、どこか圧があるような、にこやかな笑顔でそう質問した。
『え、いや、それは私がマリンさんと戦いたいから怒らせただけで、誰の影響とかでは……』
『いや絶対オーガスト・ディーンさんの影響でしょ? だってあの男私の胸をチラチラ見てたもの。同じ男のヘラクレス君はちゃんと目を見てくれたのに』
『え、そうなんですか? それはちょっと世間(主に私)は許してくれませんよね』
橋本ルカも怒た。後にオーガスト・ディーンことダストは美女と美少女に色々とOHANASIすることになるのだが、それはまた別のお話。
――こうして、2回戦は橋本ルカの勝利で幕を閉じた。
勝敗が決まった後、2人はお互いに握手をし、談笑しながら選手専用の医務室へと足を運んだのだった。
第378話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
今年もありがとうございました。
最近はPV数もブックマーク数も増えてきているので、嬉しい限りです。
これも、時間を割いてまで見て下さっている読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
そろそろこの物語も終盤へ向かう頃ですが、その後も続きを書こうと思えば書けますが、一旦伏線を全て回収して完結する方向にしたいと思います。
その後ですが、カクヨムでずっと更新が止まっている別ルートの更新をしつつ、新作もなろうで書いていこうかなと思っております。もしかしたら予定が変わってしまうかもですが、そこはご了承下さると助かります。
来年は体調に気をつけつつ、小説を書いて書いて書いて、いずれは書籍化……は今の自分にはかなり難しいかもしれませんが、目指していこうと思っております。
長くなってしまいましたが、
皆様、今年もお世話になりました。
来年もよろしくお願いします!




