第377話『マリンVS橋本ルカ①』
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橋本ルカは剣を振りかざし、マリンに斬りかかる。
マリンは水魔法で大人1人を余裕で覆えるほどの大きな水の塊を、真正面から橋本ルカに放った。
それを橋本ルカは真っ二つに斬った。しかし、斬られて落ちるはずの二切れの水の塊は、まるで意思があるように橋本ルカを挟むように突撃する。そして役目を終えて四散する。
『うっ……!』
左右から巨漢が全力で体当たりしてきたようなダメージを受けた橋本ルカは怯み、その隙にマリンは目の前に先程出したのと同じサイズの水の塊を出し、片手で親指と人差し指だけを伸ばして銃のポーズを作った。
『な、なに……?』
マリンの前に浮かぶ水の塊に嫌な予感を覚えた橋本ルカは真正面ではなく、高速で右往左往しながら、ターゲットに収まらないようにマリンを惑わす。
『面倒な事を……でも、これは避けられるかしら?』
マリンは水の塊に人差し指を突っ込むと、その中から僅かな水を水弾として放出する。
水弾は弾丸よりも早い速度で、橋本ルカの膝横を掠る。
『うっ!』
それだけでは終わらない。水弾は間髪入れずにマシンガンのように橋本ルカに襲いかかる。
『水魔法!』
橋本ルカは水魔法で自分よりも大きい水の盾を作り出し、水弾を全て吸収する。
『なんですって……?』
まさかの防御方法に驚愕を覚えたマリンは、水弾の撃ち過ぎで目の前にある大きかったはずの水の塊が、サッカーボール程に小さくなっている事に気づき、すぐに水を補充し、身体を覆うほどの水の塊を作った。
しかし、もう1回水弾を撃ち込んでも、あの水の盾によって塞がれてしまうことは簡単に予想できる。
それならばと、マリンは水の塊を4本の水の槍に変換し、水の盾ごと橋本ルカを貫こうとする。
『あんまりやりたくなかったけど……ごめんなさい、こうじゃないと貴方に勝てそうにないの』
マリンは苦い顔をしながら、殺意を持って槍を一斉に発射する。
『ルカちゃん! これに当たったらかなり痛いでしょうけど、ノルン様が元に戻してくれるから安心して!』
確かにマリンの言う通り、例えこれで落命したとしてもノルン様が蘇生してくれる。何なら、ついでに虫歯や尿管結石等も治してくれるだろう。
すっかり水の槍が当たる事を前提に言っているマリンだが、橋本ルカは、回避するまでもなく、その水の槍を全て真っ二つに斬ってみせた。
『なっ……!?』
そんな……まさか私の水の槍を全部斬っちゃうなんて……と言いたそうな顔をするマリンは、この瞬間、隙が出来てしまった。
橋本ルカはその隙を逃さず、超高速スピードでマリンの懐に入り、そのまま水平に剣を振るう。
『しま――』
いかに人間や精霊よりも優れている女神であろうと、あと数ミリの距離に刃がある状況で完全回避や防御は困難だ。このままではまともに刃を肌に通してしまうことを許し、大きなダメージを受ける。それが聖剣ならば尚更だ。
あ、これ負けたわ。
マリン自身もこの時勝負を諦めていた。けれど、それでも良かった。彼女は元々戦闘はあまり好きではない。人を傷つける事そのものに抵抗があるからだ。もちろん、大事な試合である以上は真面目に臨むし、相手が極悪非道な敵か憎っくきサンであれば容赦なく蹴散らすが、こういった仲間同士の試合ならば話は別だ。
――参ったわ。例え可愛い女の子でも手加減無しで戦うつもりだったのに、思ったより本気が出せない。
特に橋本ルカのような美少女であれば、尚更手が出せない。
まあ最もちゃんとマリンが全力を出せたとしても、橋本ルカに勝てたかどうかは分からないが。
――サンをぶっ潰せないのは残念だし、賞品も欲しかったけど、まあいいわ。ルカちゃん、今回はあなたに勝利を譲ってあげるわ。
マリンは僅かな時間ながら刃を受け入れる姿勢を取った。その瞬間を捉えた橋本ルカは――
振るう剣を寸止めした。傷1つすらつけずに。
『ルカちゃん、何で……?』
マリンは困惑した顔で橋本ルカにそう訊く。
それに対し、橋本ルカは眉間にシワを寄せて、怒り交じりにこう言った。
『何で? それはこちらが聞きたいです』
『どういうこと?』
本当に何もわかってなさそうな顔をしているマリンが癇に障ったのか、橋本ルカはマリンのスカートの裾を掴み、下着が顕になるように上へ捲り上げる。
『きゃああああ! ちょっと、何するのよ!』
橋本ルカにだけではなく、カメラ越しの全員に下着を見られるという羞恥プレイを受けたマリンはスカートを押さえながら、スカートめくりの犯人をにらみつける。
『これで私に殺意が湧きましたか?』
『ルカちゃん……?』
キョトン顔のマリンに、橋本ルカは怒りの表情を抑えて、自分の想いを話す。
『私ね、ディーンさん達に助けられたから恩返しがしたいの。でもね、今の私の実力だとディーンさんの願いは叶えられない。私はもっともっと強くなりたい。その為にはマリンさん、あなたのような強い人と死闘を繰り広げて、どんどん経験値を稼ぎたい。だから、あなたに勝負を諦めてほしくない』
『ルカちゃん……』
『もちろん、これは完全に私のお願い。マリンさんがどう思って、どう行動しようと、他人である私が干渉するべきじゃないのは分かってる。でも、それでも、マリンさんと本気の戦いをしたい。だからお願いします。最後まで諦めずに戦って下さい』
『そう……分かったわ。じゃあ本当に本気出して戦ってあげる。あ、でも勘違いしないでね、別にさっきは本気出してなかったわけじゃないわ、ただ……あなたが強すぎただけよ』
『そうなんですか? でも私に斬られる直前諦めたような態度を取ったじゃないですか』
『え、嘘、そうなの? 気づかなかったわ』
『無意識だったんだあれ』
『何で私が諦めたの分かったんだろうとは思ってたけど、今の一瞬で察したってことね。すごいじゃないルカちゃん。あぁ、確かにあなたのような強き者には最初から全力を出すべきだったわ!』
瞬間、渦が螺旋状にマリンを包み込み、大きな水球となったそれは更に回転し、そこから勢いよく漏れ出すように水をフィールド上にばら撒く。
『わわわ!』
橋本ルカは流れ出す水に翻弄され、うまく身動きが取れなかったが、黄昏のケルベロス……聖剣が魔法を発動し、橋本ルカに水の上を歩けるようにすることに成功した。
『ありがとうケルちゃん! でもこれ何の魔法? まさかディーンさんが言ってた未来の魔法?』
『ううん、ただの水魔法だよ、ルカちゃんの足に水魔法をかけて水の上を歩くことができるイヌよ。理屈はよく分からないけど』
『そうなんだ』
魔法って奥が深いんだなと、橋本ルカは少し魔法に興味を覚えたが、今はそれどころではない。
水位が橋本ルカの身長くらいになった時、マリンを包む水球は違う形へと変貌し、メッキが剥がれるように表面だけが弾け、その姿を見せる。
『あれは……!?』
それは、誰もが知っているであろう。しかし、現代で実際に見たものはいない伝説の生き物。上半身は人間、下半身は魚。海の中でしか生息しないあの生き物だ。
『人魚……?』
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