第372話『俺に当たるまで誰にも負けんじゃねえ』
お待たせしました。
第372話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
教員生活に戻ってから数ヶ月が経ったある日のことである。
突然ノルン様からダスト軍全てに招集がかかった。
またどこかから襲撃でもあったのか、それとも自分の絶望的な料理センスの無さに気づいて謝罪会見でも開くのかと思ったが、どうやらそういうわけではなく、各々の戦い方や戦闘能力を確かめ合うためにバトル大会を開きたいとのことだった。
『トーナメント形式?』
『はい、参加者16人でそれぞれ2人ずつ試合を行い、競って頂きます。そして勝ち残った優勝者と準優勝者と3位の方には素敵な賞品が貰えますよ』
用意された賞品というのが、3位は世界旅行券、準優勝者は1000万円、そして優勝者は……ノルン様からどんな願いでも1つだけ叶える権利だ。
破格すぎる賞品に一同は大盛りあがりだ。俺自身も優勝した時の妄想を広げているくらいにはテンションが上がっている。が、参加するメンバーを見て俺のテンションは天から地へと急降下した。
――
参加者リスト
皇帝陛下マーブル
フレイ
フー
サン
マリン
シャイ
ヒルド
ヘラクレス
ダストオリジン・ファーストドライヴ
ダストオリジン・セカンドドライヴ
オーガスト・ディーン
パーシー・ヴァルキリー
シアン
橋本ルカ
ルカ・ヴァルキリー
早乙女わかな
――
色々ツッコミたいところもあるが、まずフー、サン、マリン、シャイは誰なんだと思ったら、どうやらフレイと同じ“特別な力を持つ6人”の内の4人らしい。ノルン様からフレイに通じて、バトル大会に招待したようだ。今回は1人だけ長期休暇を取るとかで欠席しているようだが、それでもフレイとほぼ同等の力を持つ者が4人……かなりハイレベルな大会になりそうだ。
しかし、俺にとってこの大会はただ激戦になるというだけではなく、精神的な苦痛を伴うある意味やべえ大会になる。
未だに苦手意識が消えないフレイは参加するだろうとは思ってたからまだ覚悟はしていた。しかし、意外すぎる来客である皇帝陛下に、最強に嫌味な(言ってない)チート野郎のアクタに、聖剣を持った美少女ルカちゃんと内気だけど燃えるような闘志を持っている美少女ルカヴァちゃんまで参戦するときた。
何が不満なのかというと、皇帝陛下はあのふざけた爺さんを連想してしまうので、どうしても調子が狂うし、そうじゃなくても以前戦った時にちょっと痛い目に遭ってから、何となく苦手意識を持ってしまっている。トラウマとも言えるかもしれない。
次にあの効率厨野郎ことセカンドドライヴは、皇帝陛下と似た理由だが、アクタと同じ姿をしているせいでやりずらいし、1回殺されかけた事もあって、トラウマが蘇ってしまう。ふざけんなあのイケメンチート効率厨が!!!
そんな天才様のセカンドドライヴは、今や俺のレベルを軽々超えている。とにかく誰よりも効率良く経験値タンクこと巨人モンスターを1人で倒しまくった結果、暫定1位だったルカちゃんのレベルすら大きく引き離すという事態に。そんな独走状態のあいつに今の俺が勝てるわけがない。だから決勝まで当たりたくないのだ。
あとは、ルカちゃんやルカヴァちゃんだが、戦闘能力の差でも、生徒と教師の立場の問題でもなく、単純に俺が彼女達と戦いたくないのだ。それは彼女の冷遇されていた家庭環境に繋がるものがある。家族同然である俺が神聖なる試合とはいえ、攻撃を、その柔肌に傷をつけることになってもいいのだろうか。それが彼女達のトラウマを引き起こしてしまったらどうしよう。俺はそれが気がかりなのだ。
もちろん分かっている、彼女達は下手したら俺よりも強いし、本人は強くなるために積極的だ。だからもし対戦カードが当たったらお互いの戦闘能力を確かめる為にも真剣に戦わなくてはならない。
まあこのように色々な意味で戦いたくない奴ばかりで、この時点で俺の戦意はかなり削がれている。
出来れば今ここで、お腹痛いと言って仮病したい。
決して賞品が欲しくないわけではないが、戦いたくない理由の方が強い。
しかしノルン様が主催する以上は、そんな願望など許されるはずもない。もし断るようなら容赦なくどこかへ幽閉されるか、“シュヴァルツシルトトマトブラッドバーニングラインヴァイズ”という名の毒カレーを食わされるハメになるかもしれない。
……うん、参加しよう。仮病ヨクナイ。
俺は腹を括って参加することを決意した。まあ既に俺の参加前提で勝手に話が進んでいるんだがな。
『よっしゃー!!! キター!!! 存分に暴れてやるぜ!!!』
パーシヴァルは、案の定ではあるが、限りない喜びを分かりやすいくらい表現している。俺とは真逆だな。
『おい! オーガスト・ディーン! 今度こそてめえをぶっ潰してやるからな!!!』
フレイは俺に指を指して、宣戦布告を投げかけた。トーナメント制だから俺と当たる前にどちらかが負けたらその願いは叶うことは無いのだが、そんなことフレイは1ミリも考えていないだろう。
『なあフレイ、お前もしかしてトーナメントをご存知でない?』
『バカにするな、俺だってそれくらい知ってる』
なんだ知ってるのか、じゃあ何でさっき俺と対戦できるとは限らないのに宣戦布告したんだ? と言おうとしたが、その前にフレイがこう言った。
『俺に当たるまで誰にも負けんじゃねえ、いいな?』
『お、おう……』
フレイはそれだけ言って、地べたに座ってめいそうを始めた。
『一体何なんだ?』
そんなフレイを謎に思っていると、続々と参加者の面々が集まってきた。マーブルだけは仕事の影響で少し遅れるとのことだったが、スムーズに大会を進める為、先にくじ引きで対戦カードを決め、貼り出されたトーナメント表に選手の名前が1人ずつ書き込まれていく。唯一まだここにいないマーブルは最後に残ったくじを必然的に引くことになるので、それに記載されているナンバーに当てはめる。
――こうしてトーナメント表は完成した。
――
第1回戦 シャイVSルカ・ヴァルキリー
第2回戦 マリンVS橋本ルカ
第3回戦 パーシー・ヴァルキリーVSフレイ
第4回戦 シアンVSサン
第5回戦 ヒルドVSダストオリジン・セカンドドライヴ
第6回戦 早乙女わかなVSヘラクレス
第7回戦 皇帝陛下マーブルVSダストオリジン・ファーストドライヴ
第8回戦 オーガスト・ディーンVSフー
――
俺の相手はフーという人のようだ。宝石のように美しい青い髪のショートヘア、華奢な体付き、透き通るような真っ白な肌、それに童顔の美少女ときたか。誰もが口を揃えて、まるでお人形さんのようだと言われるであろう可憐な容姿だった。
――というか、彼女どう見ても、時の女神じゃねえか。
第372話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




