第371話『めんどうな予感しかしねえですわ』
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日本から遠く離れた美しき島国ヴァルハラ。
唯一の移動手段である空港を除いて、現代の文明に頼らない自然溢れる大地ヴァルハラ。
深林は俺だけを見ろと主張するように、自然の風を利用して木の葉の群像を大きく揺らす。ただ風に翻弄されるだけの存在ではないと強がっているようにも見える。
森を抜けると、野蛮な深林とは無関係だと言わんばかりに、可憐な花は上品に咲いている。
その花の舞台と言える場に傲慢にも小さな細い川が横断する。だが、それは結果的に自然の美しさをより際立たせており、絶景スポットとして愛されている。
そんな花の舞台すら前座にせんとする高貴なる城こそ、この世界を支配する気品溢れる女神ノルン様が住まう。
あらゆる権利を行使できるので、この世界の全てを手の中に入れていると言っても過言ではない。しかし、そんな彼女には征服願望などはなく、ただ世界の秩序を守るためだけにその力を振るう。
それは上品に――華麗に――美しく。女神たるものそうでなくてはならないのだ。少なくとも人々の前では――。
『あ"ー、あのマーリンとかいうクソ女早くくたばってくれねえかなーですわ』
神聖なる玉座にだらしなく座るノルン様。下品な言葉遣いを使い、人々の女神に対するイメージを最大限裏切っている。
だが、そんなノルン様も流石に人前では威厳を保つ方を最優先にしているので、精一杯の正しい姿勢を披露しているが、そうではない場合はリラックスを極めているので、足癖が悪く、たとえスカートを履いていても足を上げたり、広げたりと、下着が見えていてもおかしくない格好をしている。
――まあもっとも、ノルン様は未来が見えるので、誰かが急にここに来たとしても、それを事前に察知して、綺麗な女神様モードに切り替えることができるので、このはしたない姿が人々の目に触れることは未来永劫無いのだが。
『――あと2分32秒でヒルドがここに来ますわね、同じ女とはいえ、こんなパンツ丸見えの格好は見せられませんわね』
ノルン様は足癖の悪さを一時的に直したが、リラックスタイムを失った足は床から離れ、太腿を交差するように足を足に重ねようとつい無意識に動いてしまう。
『おっと、この格好もダメですわね、はしたないですわ』
ノルン様は心底面倒くさそうに足を組むのを止め、今度こそ床と足が離れないように姿勢を正す。
『それにしてもヒルド、このタイミングで何の用かしら?』
未来が見えるとは言っても、何もかもは見えない。分かるのは少しすればヒルドがここに来るということくらいで、要件までは分からない。ただ音声のない映像だけが頭の中に流れるだけなのだ。
『はぁ、めんどうな予感しかしねえですわ……』
――通常、従者は基本的にノルン様に頼ることはない。それはノルン様の“人間同士の問題には手を出さない”という信条があるからだ。言い換えると、人間で解決できる時は人間で遂行する。
だが、人間だけではどうにもならない事態が発生した時は女神が動いてくれるが、本人はそれを望まない。なぜならノルンが本腰を入れて臨まなければ解決できない問題ということは、世界の破滅が起こるレベルの事態が発生したということだ。
女神を頼るということは、そういうことなのだ。頼られること自体を悪とは思わないが、あってはほしくない。そう思っている。
しかし、ヒルドは他の人間とは違って女神に対してまるで友達のように接している。他の従者がここに来る時は世界の破滅なのだが、ヒルドが来た場合は有意義な時間の破滅なのだ。
『失礼します〜ノルン様〜、私の靴下洗濯してたら1ペアだけ合わないのがあるんだけど、もう片方の靴下どこ行ったか知らない〜?』
『知るわけねえですわよ』
『そっか〜、じゃあ私のパンツ――』
『知らねえって言ってんだろですわよ』
『そっか〜、じゃあ最近あおいちゃんに勧められて買ってきたスイーツでも食べましょ〜』
『あなた話の脈絡バグってません? まあ、スイーツはありがたく頂きますが』
『えへへ〜、女子会だ女子会〜』
『仕方ありませんわね、今紅茶を用意しますわ』
『あ、大丈夫ですよ〜、今、料理長と料理長の娘さんが色々用意してくれてるので〜』
『そうなんですの? それは助かります』
2人で少し雑談をしていると、料理長と料理長の娘が、人数分の紅茶と香ばしいクッキーを持ってきた。
『失礼する』
『し、失礼しますぅ』
お揃いのエプロンとナプキンを纏う、2人の親子。
料理長の名前は早乙女わかな。その娘の名前は早乙女みどり。
料理長のわかなは、ノルン様ですらビビるほどの貫禄があり、度々こっそり料理を作ろうとするノルン様を叱れる唯一の人物でもある。
そんな恐ろしい料理長とは大きく違い、娘のみどりは愛らしい美少女の顔立ちをしており、胸部の盛り上がりや引き締まったウエスト、まさに完璧なプロポーションを持っている。
『みどりちゃん、相変わらず可愛いね〜』
『い、いえ、そんなことは……』
みどりの顔は照れを隠せず、頬を赤らめた。
『謙遜しないでよ〜、本当に可愛いんだから〜』
『あ、ありがとうございますぅ』
そうお礼を言うと、母の後ろに隠れた。
可愛らしくも無礼な態度を見せてしまう娘に母は申し訳なさそうな顔で謝罪した。
『ノルン様、ヒルド殿。うちの娘が無礼ですまない、我の教育が行き届いていなかった』
『全然良いですわよ、むしろ可愛いじゃありませんか、もっとそういう一面を見せて下さいな』
『そうか、ノルン様がそういうなら、みどりよ。お前の可愛らしい一面をもっとノルン様に見せるのだ』
冗談交じりで言った言葉が、わかなに通じておらず、娘に羞恥プレイを強要してしまう事態になってしまい、焦ったノルン様は、
『いやいや、さすがに冗談ですわよ!? 可愛いのは本当ですけど!』
『む、冗談か』
『そうですわよ! 冗談くらい察して下さいな!』
『お言葉だが、我相手に冗談はよしてほしい。我は冗談を冗談と見抜くのは苦手故』
『う〜、そうでしたわ、ごめんなさい、もう今後あなたに冗談は言いませんわ』
『うむ、そうしてくれると助かる』
そんな他愛のない会話を遮るように、ヒルドは、
『わかなさん、また一段とすごい筋肉だね〜、修行してきたの〜?』
会話に割り込むヒルドにノルン様はムッとしたが、すぐにまあいいかと怒りを収めた。
『あ、ああ、つい修行したくなってな。最近創られたあの巨人モンスターだったか? それをひたすら倒していた』
『へぇ〜じゃあ今すごいレベル上がってるんじゃないの〜?』
『うむ、おかげで今のレベルは――』
わかなの現在のレベルを聞いてみると、想像を絶する数値がわかなの口から出てきた。
『え、マジ?』
『マジだ』
『マ〜?』
『マだ』
――この瞬間、ノルン様は頭の中にある発想が浮かんできた。ある意味悪巧みではあるが、お互いを競い合う心を燃やすことができるのでは、と考えている。
『いいこと考えましたわ』
『ん、なに〜?』
『とりあえず皆さんお茶でも飲みながら話しましょう、わかなさんとみどりさんもどうぞ』
『あ、ああ』
『し、失礼します』
ノルン様は自分の考えている事を3人に話した。
『へぇ〜それは面白そ〜』
『す、すごいことになりそうですねぇ』
『それに我が出ていいのか?』
『いいですわよ、むしろ、あなたに出てほしいのです』
ノルン様は不敵な笑みを浮かべた。その姿は女神ではなく、まるで悪魔のようだと後世に伝えられたのであった。
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