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第366話『ダストオリジン』

お待たせしました。

第366話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 精霊軍の帰還を見送った後、転移魔法で家に帰る前にヒルドさんに声をかけられた。


 何かと思ったら、以前ノルン様に3等分された俺の魂の内、2つが()()()()()()()()()


 理屈はよく分からんが、俺の割れた魂と別の彷徨う魂を融合させて1つの創られた身体に押し込んだということらしい。


 実は研究班の一員であるヒルドさんも含めて、正常に機能するかどうかもずっとテストしていたようだ。


 そして、ついさっき完成したという報告があって、その完成体をぜひ見てほしいとヒルドさんにお願いされた。


 ルカちゃん達には先に帰ってていいと言ったが、ヒルドさんがこれから共に戦う仲間になる2人だからみんなにも紹介したいと言われてしまったので、仕事が忙しいマーリンと新井さん以外は残ることになった。


 ――研究室に着くと、そこには2人の人間がいた。


 1人は高身長で筋肉質、クールな佇まいで腕を組んでいる。顔は()()()()()()()()()()イケメンの男だった。


 もう1人は隣の男とは対照的に、華奢で長い金髪が美しい美少女。初対面の俺達相手にも毅然とした態度を崩さず、笑顔で自己紹介を始めた。

 

『初めまして、私は“ダストオリジン・ファーストドライヴ”です。ヒルド様から耳に入ってらっしゃると思いますが、私はオリジナルのダスト様の欠けた魂と別の魂を融合させたオルター・エゴです。皆様、以後宜しくお願い致します』


 ダストオリジン・ファーストドライヴは礼法としてスカートの裾を摘んで挨拶をしたつもりが、裾を上げすぎて見えてはいけない神聖な布が目に入ってしまった。しかもただの無地の下着ではなく、荒々しい龍の刺繍があしらわれていた。


 2つの意味で驚いた俺は思わず『うおっ!』と声を上げてしまった。一瞬スカートの中に龍が住んでるのかと思った。


 まさか美少女のパンチラで、ここまでぎょっとするリアクションを取ってしまうとは思わなかったなぁ……。


『おお! そのパンツかっこいいな! どこで売ってるんだ、私も穿きたい!』


 パーシヴァルにはドラゴンパンツが心に刺さったようだ。まるでロボを間近で見た少年のような輝かしい目をしている。


『この下着は私自ら制作しました。宜しければパーシヴァル様用にこしらえることもできますが、いかがでしょう?』


『ホントか!!! ぜひ頼む!!!』


『はい、承りました』


 初めての会話がこれでいいのか?


 そんな2人の会話を横目にもう1人の男が勝手に自己紹介を始めた。


『俺はセカンド・ドライヴだ』


 それだけ言ってその場を後にしようとすると、


『ちょっと〜もっと言うことあるでしょ〜』


 ヒルドさんが、セカンド・ドライヴを引き止めるも、


『ファースト・ドライヴのように自己紹介をしても()()()()()のでな、さっさとレベリング作業に取り掛からせてもらう』


 まるで聞く耳を持たず、さっさとモンスター狩りをしたくてたまらないようだ。


 ()()()の事を思い出したのもあり、少しムッとしたが、俺が口出ししたところで時間の無駄だろうし、放っておこう。


 それからセカンド・ドライヴを引き止める者はおらず、全員で彼を見送った。


『セカンド・ドライヴはああいう人ですが、結構仲間想いな方なんですよ』


『そうなのか?』


『はい。彼が効率を求めてレベリングをするのも、自分が誰よりも強くなって、みんなを守りたいという想いがあるんですよ』


『なんと、だとしたらいい奴じゃないか』


『まあ、ちょっと不器用で誤解されやすい人なんですけどね』


 でしょうね。あいつはそういう奴だし。


 悪い言い方をすると、不可解な行動取ってみんなを振り回す効率厨。こんな奴が一時期ギルドの団長で明るい振る舞いでみんなに慕われていたなんて信じられねえよ……。


 なあ、兄貴(アクタ)


 お前は未来(いまごろ)魔王城でゼウスやプロメテウスと戦ってるんだろう。みんなを守るために。でも、そんなお前ですら時間稼ぎにしかならない。そんな事実(はなし)を聞かされて、俺は改めて戦慄した。


 俺が未来に戻るまでに、俺は少なくともアクタを超えなければならない。


 超えられるのか、俺があいつに……。


 アクタが俺を殺そうとした時の殺意、そして威圧感。それだけであいつがどれほど強者なのか肌で感じた。


 レベル千を超えた俺でさえ、アクタを倒せる気はしない。


 どうしよう、今になって不安感が襲いかかってきた。


 できない。できない。俺には無理。無理。無理。


 だって俺は無能、無能。何もできない。


 負の肩書きがあまりにも多い。


 そんな俺にゼウスとプロメテウスを倒すなんて無理だ。


 元々あって無かったような自信が悉く打ち砕かれる音がした。


 怖い、怖い。


 想像してしまう、俺がレベルを上げまくって未来に帰り、ゼウスにボコボコにされる未来が――


 圧倒的な力の前にただ頭を垂れることしかできない。


 無理だ。


 もう無理だ。


 嫌な方の想像が現実になる。


 そうに決まってる。


 やるなら俺じゃなくて、赤髪ちゃんやヒルドさんのような戦いの才能に溢れてる者がやればいいんだ。


 そうだ、何も俺じゃなくてもいいじゃないか。


 元々戦いの才能なんて無いんだ。


 ヒーローってガラでもないし、そんな俺は主人公ではなく、モブがお似合い。というかそれがいい。


 そうすれば痛い思いも辛い思いもしなくて済む。


 俺は平穏に暮らしたいんだ。


 そうと決まれば、ノルン様にお願いしてこよう。


 俺には無理だと。俺の寿命は伸ばさなくていい。ここでただの教員として何も起こらないまま生涯を終える。まあその場合教員を辞めさせられるかもしれないけど、それでも普通にバイトとか何かやってのんびりと一生暮らそう。


 これが1番理想じゃないか。


 ああ――すっきりした。


 俺はただの男の子に戻りま――


 “お兄ちゃん助けて”


 声が聞こえた。


 “私は許さない。一生償ってもらうわ“


 償い……。


 “分かったよ、俺、一生ブロンズ様とシュタインをプロデュースするよ。いや、ぜひそうさせてください!“


 アイドル……約束……。


 “ちゃんと責任取ってよね“


 ブロンズ様――あぁ、そうだよな。


 諦めたくない。


 そうだ、君の歌を聞いた時、俺は胸が弾んだ。


 俺は君を見る度に愛おしい気持ちが溢れてくる。


 君が幸せに笑っていられたら、魔王城のみんなが、仲間達が毎日幸せに過ごしていたら、それはもう……最高の快楽。


 そうだった。なぜ忘れていた。


 俺はあの日常を取り戻さなくてはならない。


 俺が無力すぎた故に破壊されたあの楽しい日々を――


『なんか俺もレベル上げしたくなってきた、ちょっと行ってくるわ』


『えぇ〜ダスト君まで〜、それなら私も行く〜』


『ちょっと待て、ずるいぞ主人! 私もレベル上げをさせろー!』


『ディーンさんが行くなら私も行こうかな、もう1人の私はどうする?』


『え、あの、私も……行きます』


『コッチノルカチャンニハワタシガツイテイル、思ウ存分ソノ剣ヲ振ルッテキテネ』


『ありがとう、カレンちゃん!』


 俺に続いて、ヒルドさん、パーシヴァル、ルカちゃん、ルカヴァちゃん&カレンちゃんが、レベリングをする為に走り出した。


 ――その誰もが幸せそうに笑って。

第366話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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