第363話『襲来する美女』
更新遅れてすみません。
大変お待たせしました。
第363話の執筆が完了しました。
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――目を疑った。
まさか家の中で、こんなとんでもない事態が発生していたとは。
『な、何やってんだ……?』
ドアを開けてすぐ廊下の真ん中で、あおいちゃんが半脱ぎの状態で美女に襲われていた。拘束されて身動きも取れないので、されるがままやりたい放題。
とても口では言えないが……もうとにかくすんごい光景だ。俺は今、男子の諸君が特にエキサイトしそうな映像を生で見ている。
“そういう経験”など一切無い俺には刺激が強すぎた為、呆然としているが、パーシヴァルには“こういう知識”は一切入れていないので、特に変なことは思わず状況を冷静に把握している。
もうこれは明らかに俺達の方が、まさしくお楽しみのところをお邪魔してしまったわけなのだが、パーシヴァルにとってこの光景は2人がじゃれ合っているとかではなく、仲間が敵に襲われていると認識している。
『貴様、何者だ! あおいから離れろ!』
『いや、違うぞパーシヴァル。これは違うぞ……』
『何が違うんだ! 見ろ! あおいがあんなに苦しい顔をしているのに……! 熱でもあるんじゃないのか!!』
苦しいというかアレは……その……うん。
『あれは別に病気じゃないと思うんだが……まあある意味熱か』
そんな会話をしているうちに、ようやく向こうが俺達の存在に気づいた。
『ん? なんだあおいの客人か?』
見知らぬ美女があおいちゃんにそう質問すると、荒い息遣いを交えながらこう答えた。
『い、いえ……はぁ……はぁ……彼らは……はぁ……はぁ……さっき話した……はぁ……同居人です……はぁ……』
『そうなのか。おう、わりぃな、邪魔してるぜ』
その人は一万年後とは全く違って礼儀正しさの欠片もない態度で接してきた。
――燃えるような赤い髪。女優を思わせる顔立ち。グラビアアイドルも指を噛んで嫉妬するような健康的な肢体。
忘れるはずもない。人格こそ違えど、その姿は――
『赤髪ちゃん……?』
赤髪ちゃんことマゼンダ。魔王軍最強の幹部でありながら、シスコンであり、美少女が大好物のやべえ奴である。ただ根は真面目で異世界から来た俺の事もお客様として丁寧に接してくれた。
――そんな彼女はここにはいない。ここにいるのは別人でまるで姿だけが念写されているようだ。
『は? 赤髪ちゃんって、もしかして私が赤い髪だからそういう風に呼んだのか?』
『あ、いえ、あなたが知り合いに似てたもので……すみません、忘れて下さい』
『へぇ、まあいいけど、一応私の名前言っとくわ。私はマゼンダ・ウィリアムズ。両親は外国人だけど私はこの国で生まれてこの国で育っただけの美女だ』
自分で美女言ったよこの人。
ん、てかマゼンダだと? 他のみんなとは違って、本名そのままなんだな。
『俺はオーガスト・ディーン。こちらはパーシー・ヴァルキリーです。宜しくお願いします』
『え、アンタ達も外国系の人?』
『は、はい』
マゼンダは俺達の顔をまじまじと見ると、訝しい目で、
『ほんとに? そっちの美人はともかく、アンタはどう見ても日本人顔なんだけど』
これに関しては生徒にも聞かれたことがあるが、当然の疑問だ。俺は元々純粋な日本人で本名も何の面白みもない名字にごく普通の名前で構成されている。俺と同姓同名の人間が同じクラスに居たとしても、特に不思議だとは思わないだろう。
冷静に考えてみれば、何で俺、外国系の名前を与えられたんだ? パーシヴァルは外国系の顔立ちだから分かるけど、ここは日本だし俺まで外国の名前である必要はないよな?
まさかマーリン(未来の方)、面白そうとかかっこよさそうとかそういう理由だけでこの名前をつけたのか? うーむ、あいつならやりそうだ。未来に帰ったら、ちょっとお☆は☆な☆ししなくちゃな……。
『おい、聞いてるのか?』
『え、あ、あぁ、すみません』
――で、どうする? どう誤魔化すのか正解なんだ……?
『えっと、あの……その……』
ええい、もう自棄だ!
『ククク……オーガスト・ディーンとは仮の名だ! 我の本当の名は、インフィニティ・ダークネス! 闇の力でこの世を統べる者だ!』
俺は手を顔に置き、厨二っぽいカッコよさそうなポーズを取った。
かなり無理やりな話題の逸し方だが、教師でありながら裏では厨二病を患った末期患者として誤魔化しておこう。
『あー、なんかよく分からんけど、アンタが人生楽しんでる事だけは分かったわ』
なんか俺がスベった感じになってしまったが、マゼンダはこれでも厨二病の俺をディスらずに配慮した回答をしてくれたのは意外だった。てっきり『だせえwww』とか言われるものかと思っていた。
更に俺は釘を刺すようにこう言った。
『ククク……人間よ、俺の詮索はしない方が身のためだ』
『あ、うん。そうするわ』
マゼンダは、心底興味無さそうに視線を外して、乱れた彼女へ再び視線を向けた。
『おい、あおい。人も来ちまったし、しょうがねえから一旦休憩にすっか』
『は……はい……』
赤い髪の美女は疲弊しきってるあおいちゃんをお姫様抱っこし、リビングへ連れて行こうとしたが、床に垂れた汗を見て、自分達が汗だくであることに気づいた。
『あー、シャワー借りていい?』
『ククク……構わぬ……』
『悪りぃな』
赤い髪の美女はあおいちゃんを連れてシャワールームへ向かった。
2人を見送った後、パーシヴァルが疑問を呈した。
『あの女誰なんだ? 主人にしては敵意を向けてないから知り合いなのかと思ったが、違うのか?』
『あれ? パーシヴァル覚えてないか? あの赤い髪の女と同じ姿をした女の人が魔王城に居たんだが』
『あー、そういえばそんな奴居たような居なかったような……居たっけ?』
パーシヴァルは赤髪ちゃんとの面識はそれほど無かったのか、記憶を辿ってもあまりピンと来てないようだ。
『えっとだな、一万年後の彼女の名前は赤髪ちゃん。本名はあの人と同じマゼンダだが、性格は真面目で礼儀正しい。ただ女好きの変態ではあるがな。そんな赤髪ちゃんだけど、魔王軍最強の幹部なんだ』
『マジか!』
『ヤバい人だけど、根は仲間想いの良い人だぞ』
『最強と聞くと、その赤髪ちゃんとやらと戦いたくなってきたな……ひひひ』
パーシヴァルは悪そうな顔で拳を握っている。もし目の前に一万年後の赤髪ちゃんが現れようものなら、拳を突き出して暴力事件に発展するだろう。
『まったく……』
でも、それでも、もし赤髪ちゃんが助けに来てくれたらどれだけ頼もしいことか。そう考えれずにはいられない。
だが、いつまでも赤髪ちゃんに甘えるわけにもいかない。今いるメンバーでどうにかしよう。
俺だって強くなっているし、パーシヴァルもあおいちゃんもルカちゃんも、頼もしい仲間がこんなにいる。
それなのに一瞬でも弱気になった俺が恥ずかしい。
『俺もまだまだだな……』
――その後、シャワーから出たマゼンダ達と雑談から夕飯まで一緒に、更に泊まることにもなった。
まるで家族の一員のように溶け込む彼女に凄まじい陽キャ感を覚えた。
家主であるマーリンとも、あんなに仲良さそうに……。
まあ、そんなこんなで小さい騒動はあったが、今度こそ俺はこの時代の日常に戻ったのであった。
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