第362話『戦いの後』
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かくして精霊の王オベイロンの暴走は、やたら神々しくなったルカちゃんによって止められた。
全員ほぼ無傷での生還、完膚なきまでの勝利ではあったが、泣いているオベイロンを見て、素直に喜べなかった。
まるで子供相手に本気で勝負に勝ってしまった時のような、そんな後ろめたさが心のどこかにあったからだ。
まあとはいえ、あっちも本気で俺達を蹂躙しようとしたんだし、むしろ泣くだけで済んだのだから、こちらからの温情に感謝してほしいくらいだ。
――なんて思ったけれど、ルカちゃん曰くオベイロンがこの世界に来た理由はルカちゃんを救出する為だったみたいだし、俺がもっと気を利かせて、なんとか異世界ゲートを作って向こうの世界に行って、オベイロンとルカちゃんの処遇について話し合っていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。
ルカちゃんの意志を尊重したかったとはいえ、ちゃんと通すべき筋があったのも事実。
俺は教師でありながら、子供のような過ちを犯してしまった。
こちら側にも非はあったということで、オベイロンの治療と、消滅させてしまった精霊軍全員の蘇生をノルン様にお願いした。
彼女の能力ならば、消滅した肉体を再生させたり、彷徨う魂を肉体に押し込む事もできる。
本来は死んだ者を生き返らす事自体あってはならない禁忌ではあるが、今回は特別ということでやってもらった。
だが、それには多少時間がかかるようなので精霊軍全員が復活をはたしてから、改めて話し合いの場を設けるつもりだ。
――そして、宿泊行事最終日。
名残惜しいが、生徒と教員達は空港に向かい、小さくも神秘的な国ヴァルハラへ別れを告げる時が来た。
城の中から出ることを禁止された時間はあったものの、戦いの後処理を終わらせてから、すぐに思う存分自由行動させたので、生徒達は何一つ不満を零さずに宿泊行事を楽しんでくれた。もちろんレベルアップや、実際の戦闘の経験値も溜まったので学ぶという意味でも欠かす事は何一つなかったと言える。
あとマーリンや新井さんには話したいことが山ほどあったけど、仕事が忙しいとのことで、一旦は保留となったが、とりあえず最低限話したいことは話したので、不安はあるがひとまずは大丈夫だ。
そういえば、昨日行方不明になった生徒2人の内の1人である黒田時生の事だが、あの時どうやらルカちゃんと同じく、剣を拾っていたらしく、その剣は以前話していた聖なる泉に投げてほしい聖剣だったようで、早速その泉に放り投げた。
ちゃんと選ばれた者に確実に持たせる為にパスワードも設定した。
“エクスカリバー”と。
俺はてっきりルカちゃんが持ってたそれが、対象の聖剣なのかと思っていたのだが、どうやら違うみたいだ。というかよく分かってない。
ノルン様ですら、ルカちゃんの剣を解析できず、犬に変身できる不思議な剣くらいしか分からなかったが、もしかすると没になったはずの剣が、何らかのバグで現れたのではないかと予想も立てられた。
まあ、別に持って使っても特に異常は見られなかったので、そのままルカちゃんに持ってもらう事にした。
――しいていうのなら、その剣を持った後からルカちゃんのステータスに“勇者”と記されていたことくらいか。
現時点で考えても全く解が出てこなかったので、この件は一旦保留となった。
――さて、旅行気分を最後まで噛み締めたい生徒達の思いは虚しく時計の針は容赦なく進んでいく。そろそろ出航の時間だ。
『あれ? せんせーは帰らないの?』
『いや帰るよ。ただ今じゃないだけ』
本来であれば、教員である俺とパーシヴァルも日本へ帰らなければならないのだが、まだここでやり残した事があるのでまだ帰れない。
とは言っても、休み明けはちゃんと学院で仕事するし、ヴァルハラでの任務も進める。
実は、ノルン様の助力で転移魔法の消費を大幅に減らしてくれたのでいつでも日本に帰ることができるし、学院で教員として仕事しながらも、コンビニに行くよりも軽いフットワークでヴァルハラに移動することができるようになった。
前向きな言い方で言うと、いつもの日常を保証され、更にいつでもヴァルハラで頼まれた事を進められて、より一層俺の願いに近づける!
後ろ向きな言い方で言うと、学院でもヴァルハラでも良いようにこき使われてしまうこと。ヴァルハラにはフレイもいるだろうから、行く度に喧嘩を売られること間違いなしだ。
しかし更にめっちゃ前向きな言い方で言うなら、大変だけど美女に振り回される日常を過ごすという貴重すぎる体験ができるということ。あわよくばラッキースケベ的なムフフな展開を期待できるということだ!
そこで更にめっちゃ後ろ向きな言い方で言うなら、ノルン様特製の“シュヴァルツシルトトマトブラッドバーニングラインヴァイズ”を食べさせられる可能性があるということだ。それを食べればただでは済まない。
最初食べた時は運良く記憶が消失していたが、ヒルドさん曰く、もし記憶に残った場合は一生モノのトラウマを背負うことになるようだ。どんな味なのか逆に気になってきたが、すげえ後悔しそうだから詮索しないでおこう。あと、今後はノルン様の料理を食べるイベントの全力回避する術を今のうちに学んでおくとしよう。
――まあ、いずれにせよこれから忙しくなる。そうじゃなくてもこれから何が起こるか分からない。レベルアップもそうだが、どんな敵が来ても大丈夫なように対策を立てる必要があるだろう。そこはノルン様やヒルドさんとヘラクレスにも助言を頂きたいところだ。
これまで以上に気を回さなくちゃな……。
宿泊行事完全終了後、今後についてノルン様達と話し合い、パーシヴァルのレベル上げをサポートして、それから一旦マーリンの家に帰って、パーシヴァルの共に教員としてのいつもの日常に戻ることとなった――はずだったのだが――
『ただいま……って、え……?』
扉を開けると、目に映った信じられない光景に俺とパーシヴァルは驚愕を顕にした。
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