第359話『精霊王の回想②』
お待たせしました。
第359話の執筆が完了しました。
宜しくお願い致します。
調査をしてみたところ、橋本ルカの両親も人間でありながら精霊そのものになれる能力を所有していて、それなりに優秀な家系らしいが、彼女は別格だ。我々には無い特殊な能力を持っているし、彼女自身もそれなりに賢い。
しかし、問題がある。確かに王としての素質を持ってはいるが、いくら賢くてもその歳で国を統べるなど到底できはしないということだ。更には本人もそこまで自分が優秀だとは思っていないし、王にも興味を示していない。そもそも自分が王族の血を引いている事を知っているかどうかも怪しいレベルだ。
とはいえ今後橋本ルカが何かしらのきっかけで王に興味を持つ可能性も無くはない。だから私は政府に指示を出し、彼女の両親に娘に余計な事をさせない為に監視するように命令を下させた。
表向きは強すぎる精霊の力を暴走させないようにする為だが、本当は王の座を確実に奪わせないようにする為だ。
彼女に人形をプレゼントしたのは、私からせめてもの償いだ。橋本ルカの精霊の力であれば、人形に心を与えて友達を作れると思ったからだ。それくらいはさせてほしい。
だが、ある日橋本ルカは人形と共に突然失踪を遂げた。
詳しく調べてみると、どうやら彼女の人形が異世界への入口を開いて、橋本ルカと共に入っていったようだ。
なぜそんなことをしたのかは分からないが、好都合だ。このままこの世界からいなくなってくれれば王の座は守られたも同然だ。
――最初はそう思ったのだが、“国民を守る”。その矜持だけはどうしても捨てられない自分がいた。
橋本ルカだって国民の一人だ。もしも異世界で捕まって、何か実験でもさせられたり、乱暴に扱われたりするなんてこともありえる。それを想像して見捨てるほど私は非情になりきれなかった。
だから私は、橋本ルカの救出作戦を立てたのだが、異世界のゲートの開き方を知らない。あの人形はどうやってそれを開いたのか……。
私は秘書や幹部達と共に研究を重ね、ようやく異世界のゲートを開く術を見つけた。これで橋本ルカを救出できる。
そう思ったのだが、ゲートを開くには大量の精霊の力が必要な上、今の我々の力全てを注いでも1回につき僅か5秒ほどしか開けられず、帰ってくる分を考えても精々2名までが限界だった。
だが2名でも十分だ。精鋭揃いの我々であれば、どんな敵が立ち塞がろうと必ず討ち取れる自信がある。
ここは事の発端である人形を橋本ルカに買い与えるように指示した私が行こうとしたのだが、異世界のゲートを開くのは初めてというのもあり、どんなトラブルがあるかも分からない。もしかしたら帰ってこないのかもしれない。
それを恐れた国の幹部達は、無情にも彼女の両親に行ってもらうように提案した。もちろん報酬は用意するし、今後も橋本家を手厚く保護する約束をすれば、娘に興味のない彼らも喜んで行ってくれるだろう。
そのような考えが浮かんだ。
他に案もなかったので、その方向で行くしかなかった。
案の定、うまく交渉が進み、彼女の両親が異世界ゲートの中に入り、自分の娘を取り返す事になった。
2人の戦闘能力はもう既に把握しているので、無傷で橋本ルカを取り返してくれる。そう思っていた。
だが、いつまで経っても彼女の両親は帰ってこず、幹部の一人が精霊の力で2人の安否を確かめて見ると、既に死亡していたことが判明した。
その瞬間、私の中の“何か”がまた蠢いた。
私の愛する国民がまた殺された。
今回は家族でも無いし、一応王族の血を引いている家系とはいえ、あまり関わった事もない相手なので、どこか他人事として見れるはずだった。
だが、彼らの死による怒りと悲しみは確かに私の中に存在した。
まるで本当の家族のように。
“許さない”
復讐を誓う私は、再び異世界へのゲートを開く為に力を貯めた。
今度は二人などと少数ではなく、私を含めた幹部クラスの精鋭15名ほどで進軍する事にした。
待っていろ、私の国民を殺した貴様らの全てを蹂躙してやる。後悔しても遅い。徹底的に破壊してやる。そんな復讐心を抱いていた。
――しかし、今はどうだ?
異世界について早々、仲間達全員たかが2人の人間に葬られ、私は無様に地に伏せた。
1つの国はおろか敵一人にすら傷ひとつつけられない始末。
それがきっかけか、私は私ではない“何か”になった。
憎悪のままに何もかもを破壊する醜い怪物に成り下がった。
もうこの姿では、もはや国王として玉座に座ることも、国に戻る事すらできまい。
もう引き返す事はできない。だから、せめて仲間の仇を討つ。たとえこの身が朽ち果てようと――。
そして、もう1つやることがある。
それは――橋本ルカを元の世界に連れ戻すこと。
理性の無い私だったが、その役目だけは無意識に果たそうとしており、精霊の力で近くにいるであろう橋本ルカをここに呼び寄せた。
『あれ? ここは?』
なぜか神々しい剣を持っている橋本ルカは、この状況を理解できずに唖然としていた。同じ世界出身の私を見ても、ピンとこず、ただ化物を見るような目で怪物を見る。
『ルカちゃん!』
橋本ルカの元へ走る一人の男。まるで家族のように彼女を守るようにして私の前へ立った。
そこで私はようやく知った。この男から死んだはずの精霊の匂いがする。
つまり、橋本ルカの両親を殺したのはこの男だと確信した。
許せない。許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない――。
復讐心から溢れ出た禍々しい何かが、私の怒りを増幅させる。そしてそれは更なる力を得ることになる。
憎いが逆に感謝するぞ。真っ先に殺すべき敵が分かりやすくてな――。
怪物は、私の復讐心に従うままに“国民を殺したこの男を優先的に何が何でも殺す“という任務を遂行するように行動させた。
『ああ、なるほど。そういうことか』
全てを理解したようにそう呟く男。怪物を目前にしながらも後退することはなく、戦意を持って怪物に挑むつもりだ。
『なら決着をつけようか』
『■■■■■■■■■■!!!!!』
第359話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




