第355話(Bパート)『やってくる』
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第355話のBパートの執筆が完了しました。
今回は文字数はいつも通りです。
宜しくお願い致します。
――数分前。
ルカちゃんと時生を捜索している俺だったが、突如として未来予知魔法が勝手に発動した。
少し先の未来で起こるであろう光景が頭の中に映像として流れた。
どこかで見た黒いホール、人型を模す精霊の軍勢、3匹のモンスター。そして、血で染まった森。それを見て唖然とする俺。
戦慄した俺は急いで教員用の端末を取り出し、即座にノルン様に全てを報告した。
すると、外で観光中の生徒達はノルン様の権限によって城の前に強制送還され、最も安全な城の中へ避難した。
突然の出来事に生徒達は、原理のよく分からないマジックのせいで観光の邪魔をされたとブーイングの嵐だったようだが、これから起こる大悲劇の被害者にならないだけはるかにマシだ。
まあ、とはいえ生徒達は何一つ事情を知らされてない。そちらからしたら突然楽しい時間を取られた挙句、有無を言わさずに城の中へ閉じ込められるのだから良い気分ではないだろう。
この埋め合わせは後で考えておこう。
さて、あとはまだ回収できてないルカちゃんと時生だ。なぜかこの2人だけはノルン様の権限行使に影響されなかった。
どうやら、よほど特殊な空間にいるようだ。それも神ですら干渉できない聖域に。
しかし、その空間に居続ければ精霊やモンスターの襲撃も受けずにそのままやり過ごす事ができると、ノルン様からの解析も聞いた。
それなら2人は大丈夫そうだな。
よし、次はあの精霊軍を全部ブチのめせば、緊急クエストは達成する。
討伐メンバーを紹介しよう。
まず主に戦うのが俺、ヒルド、ヘラクレス、そして脳筋の4人だ。
遠くからの援護はマーリン、ノルン様(めちゃ不仲で不安だが)。
まだレベルの低いパーシヴァルや新井さんは待機。とても敵う相手ではないからな。
『うわ〜あれはすごいね〜、もうめちゃくちゃだよ〜』
こんな状況でも表情を崩さないヒルドさんは、呑気そうな声でそう言った。
しかし、ヒルドさんにとって、その台詞は敵の強さを褒め称える最高の賛辞だ。
今のダストにも劣らない実力の彼女でもそう言ってしまう程だ。相当強いのだろう。
しかし、それはあくまでモンスターにしてはという意味である。
『おい! あのモンスター全部俺がやっていいか?』
『いや、フレイだと森ごと燃やしそうだから駄目だろ』
『なんでだよ! というかその森はもう既に半壊してんじゃねえかよ! なあ、いいじゃねえか! ヘラクレス!』
『この森は壊れていても少しでも根が残っていればあいつが修復する。その根すら根絶やしにする可能性があるから駄目だと言ってるんだ』
ヘラクレスはフレイが暴れてはいけない理由を冷静に述べた。
合理性のある指摘だが、それでもフレイは納得していない。ただでさえ生徒達の宿泊行事のせいでろくに巨人型モンスターを狩れなくてイラついていて、せっかく目前にその娯楽があるのにも関わらず、それさえ制止されている。
このままでは、フレイはせっかくの楽しみを取り上げられた子供のように暴れ回り、根本まで燃やされた森は二度とその姿を現すことなく思い出の中だけで生き続ける事になるだろう。
そうなる前に俺は――
『俺が行ってくる』
そう言い残し、転移魔法でモンスターのすぐ近くまで転移し、必要最低限の威力でモンスターの首を適当な攻撃魔法で狙い撃つ。
かかった時間は1匹につき大体2、3秒くらいだ。
ステータス上巨人型モンスターよりも強いみたいだから期待してたんだが、妖精界のモンスターもこの程度か、正直物足りなさすぎる。
『なんだよ! 俺が倒したかったのに!』
『いや、あのモンスター正直全然強くないぞ』
モンスター基準であれば最強種みたいだが、レベルを上げすぎた俺達の相手ではない。
さて、今頃精霊達は自慢のモンスターが倒されたと驚いているだろうな。
今すぐ全員倒しに行ってもいいが、あまりにも森の被害が大きすぎるとエフちゃんが悲しむ。
『あいつら退かすか』
この手の結界魔法は初めて使うし、魔力の消費も馬鹿にならないので少し不安だが、やってみるか。
『結界魔法“ハコニワ”』
この魔法は発動した際に、大きな箱が作られ、結界の範囲内にいる全ての生物をその箱の中に収納する。術者が自ら解除あるいは魔力切れ・死亡しない限り永遠に閉じ込めることができる。
『よし』
――結界魔法の発動は成功した。
俺を含めた戦闘員の4人と、精霊軍の全てを箱の中に入れる事ができた。マーリンとノルン様は箱の中にはいないが、外部からの干渉を術者が許可したので引き続き援護に入ってもらう。
逆に内部から外部への影響を一切遮断したので、これ以上森への危害が加えられる事はない。
そうすれば少しでもエフちゃんの修復作業を減らす事にも繋がるし、フレイもこれで思う存分戦えるだろう。
『貴様ら、何のつもりだ』
“冠をつけた美男“が不愉快そうな顔でこちらに分かる言葉で投げつけてきた。
この箱の中はそれほど広くはなく、遮蔽できる物もないので、誰が箱の中にいるのか見るだけで把握することは容易い。
こちらは4人なのに対して、精霊軍は15ほど。
数で言えば精霊軍が当然有利なのだが、こちらは不意をつくわけでもなく、真正面から堂々と現れた。
“冠をつけた美男“はその光景を見て我々は舐められていると解釈した。それが不愉快の理由である。
『その人数で我々に勝てると?』
『さあ、どうだろうな。それより話し合わないか?』
『そんな余地はない、我々は同胞を殺した貴様ら人間を滅ぼしに来たのだ』
『交渉の余地はないと?』
『ああ』
『本当にいいのか?』
『うるさい、いいと言ったらいいんだ!』
『そうか、残念だ』
――刹那、銃声が箱の中を轟かせた。
精霊軍の誰一人として反応できないまま精霊が一柱、消滅した。
仲間の精霊達は何をされたのか瞬時に理解できず、慌てふためいていたが、王であろう男だけは、煙が立つ銃口の持ち主を睨みつけていた。
『さすがヒルド、百発百中だな』
『えへへ〜、すごくてかわいいでしょ〜』
『かわいいまでは言ってないんだが』
交渉決裂が確定した瞬間、ヒルドさんは目にも止まらぬ速さで銃を抜き、弾丸を放った。
まっすぐと起動に乗った弾丸は精霊の急所ヘ直撃し、仕留める事に成功した。
その間僅か2秒ほど。
さすが、この時代のヒルドさん。強さも技量も半端じゃねえ……。
これ、下手すれば俺の出番無いんじゃないの?
第355話のBパートを見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
次回も宜しくお願い致します。




