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第354話『けんとの邂逅』

お待たせしました。

第354話の執筆が完了しました。

宜しくお願い致します。


 《ルカ視点》


 ――光が視界を覆い尽くす。


 咄嗟に目を閉じた私は光の輝きが弱まるのを待った。


『ん……』


 瞼を開けると、そこには――


『え……は? どういうこと?』


 私は突然目の前に現れた生物を見て目を疑った。


 ――4本足。全体的に整った毛並み。左右に揺れる尻尾。ハアハアと何回も繰り返す荒い呼吸。


 そう、この生物は紛れもなく()である。


 この世界には犬は存在しないはずだが、なぜ突然こんな所に?


 その疑問を解消するように、カレンちゃんがこう推測する。


『コイツハ確カニ犬ノヨウダガ、トテツモナイ(ちから)ヲ感ジル。サッキマデソコニアッタハズノ剣モ無クナッテイル事カラ、恐ラクコイツハ剣ソノモノデハナイカ?』


『剣そのもの……? そんなことがありえるの……?』


『原理ハ分カラナイガ、コノ状況ヲ説明スルニハ1番シックリクル解釈デハアル』


 カレンちゃんは冷静に状況を見ているが、私は頭が追いつかなくて何が何やらさっぱりだ。


 ただ、この犬がただの犬ではない事だけは何となくだが分かる。


『ねえ、あなたは何者なの?』


 なんて犬に分かるはずのない言語でそう質問しながら、頭を撫でた。もちろん質問の答えを求めているわけなどなく、ダメ元でなんて理由ですらない。ただこの愛らしい生物に話を聞いてほしいだけだ。それだけだったのだが――


『僕は元々()()()()だよ』


 なんということでしょう。この犬、開口一番が“ワンワン”ではなく、僕は元々ただの犬だよ(渾身のものまね)と言い始めたではありませんか。


 頭ではそう理解しているのだが、私自身の心が追いついていない。信じきれない私はカレンちゃんにこう質問をする。


『え? 今喋ったのカレンちゃん?』


『違ウゾ。今ノハコノ犬ガ喋ッタノダゾ』


 カレンちゃんがそう断言するのなら、信じるしかない。


『……やっぱり、そう、だよね』


 しかし、まさか人間の言葉をマスターする犬がいるとは……。


 前にディーンさんから『この世界は何が起こってもおかしくないから、どんなに奇想天外な事があってもまずは落ち着いて、それから自分なりに状況を把握してみて』とアドバイスを貰っている。


 そのおかげか、思ったよりも冷静でいられる。まあ多少動揺はしたけれど。


 よし、冷静であるのなら次は状況の把握だ。犬が喋る事自体はホント意味不明だけど、それはひとまず置いておこう。


 この犬が何者なのか、それはカレンちゃんがさっき言った通り、剣が犬になったんだ。


 この剣には何かしらの力が宿っていて、犬に変身することができる。しかも喋ることができると。


 で、犬が剣になって、剣が犬になって喋ることができるということはただの犬じゃなくて剣になれる犬だと、つまり犬が剣で剣が犬で……。


 ……うん、いみわかんなーい!


 まあでも、意思疎通ができるのは大きい。もし普通の犬だったら訳も分からないまま、ただ撫でたりギュッとしたりと癒やされる時間を過ごすところだった。


 ちょっと話を聞いてみよう。


『ねえ、ちょっと聞いていい?』


『いいよー、何を聞きたいイヌ?』


 語尾ワンじゃなくてイヌなんだ……。


『君は何者なの?』


『僕は君じゃないよ、僕の名前は“黄昏のケルベロス“イヌよ』


『黄昏の……ケルベロス?』


『いい名前でしょ! ご主人様がつけてくれたんだよ!』


『え、えぇ、そうだね……』


 そのご主人様という人は中二病なのかな? 犬につける名前にしてはあまりにも重すぎるよ……。


『私の名前は橋本ルカ、ルカって呼んで』


『私ハカレンダ。好キナヨウニ呼ブガイイ』


『宜しくね、ルカにカレン! ――ああごめんね、僕が何者か聞きたいんだよね? さっきも言ったけど僕は元々ただの犬だったイヌ。でもね、この世界に飛ばされて気づいたら剣になってたイヌ』


『なるほどね、ってあれ? 前居た世界の記憶があるの?』


『うん、あるけど……何かおかしいイヌ?』


『私のね知り合いというか仲間というか先生が言うには、この世界の9割の人間は転移前の記憶を一切持ってないみたいなの』


『そうなんだ、じゃあ僕は記憶がある1割の方かな。それとも剣になれる(ぼく)はまた特別ってことかイヌ』


『うーん分からないけど、君が特別な存在なのは確かだと思うよ。だって剣になれる犬なんて聞いたことないもの』


『特別といえば、ルカとカレンもそうだよね? 他の人には無い力を感じるイヌよ』


『分かるの?』


『分かるイヌよ。ルカに精霊の血が流れていることも、カレンが元々ただの人形だってことも』


『ナント……ソコマデ分カッテイタトハ……黄昏ノケルベロスヨ、一体ナゼ分カッタノダ?』


『僕にはどうやら人のステータスを覗くことができる権限があるらしいんだイヌ』


 この世界では本来、ステータスはフレンド登録をしなければ覗けないが、黄昏のケルベロスの場合はその工程を省いて直接ステータスを見ることができるようだ。


『ホウ、ソンナコトガデキルトハ……』


『この世界には存在しない精霊の力……きっとご主人様もびっくりすると思うイヌ、だから……僕と手を組んでほしいイヌ』


『貴様ト……私達ガカ?』


『うん、僕は君達の剣になりたい。それで僕は――ご主人様に会いたいんだ』


『ご主人様……? 会いたい……?』


 ――今朝見た夢を思い出した。私が犬になって“ご主人様”と過ごした夢。でもそのご主人様が突然いなくなって、(わたし)は――。


『ルカ、ボーッとしてどうしたイヌ?』


『え、いや何でもないよ?』


 私は手を振って否定のジェスチャーをすると、気持ちを切り替えてこう質問をする。


『ねえ、聞きたいことがあるんだけど、何で君は見ず知らずの私達に協力を持ちかけたの? もし私達が悪い人達だったら君は良いように利用されるだけされて捨てられる事もありえるんだよ?』


 他にも聞きたいことはあったけど、今私が1番聞きたい事はこれだ。黄昏のケルベロスの詳しい事情は分からないけど、手を組んでほしいだなんて、初対面の相手に、それも会って数分の人間に言えるセリフじゃない。


 私達が裏切れないように何かをするのか? 実はまだ私達には言ってない権限(ちから)があって、それで私達を服従する事ができるとか? でもそれがあったら最初からやってるよね……。


『うん、分かってるよ。だからこそ君達を()()()()()()


『え、呼んだってどういうこと……?』


『実は――』


 ――その真相が明らかになりそうな時、この森に異変が起こる。


『ン? ナンカ様子ガ変ダゾ』


『何かが暴れ回ってるイヌね』


 カレンちゃんと黄昏のケルベロスは早くも異変を察知し、警戒態勢に入っている。


 それに比べて私は何も感じない。もしカレンちゃんと黄昏のケルベロスがいなかったら、私は異変にも気づかずにのうのうと森の中に居座っていただろう。


『どうやらモンスターが大量出現して、大変なことになってるみたいイヌ。それもすごく強い』


『モンスターが大量発生!?』


 何で……今日この森にはモンスターが出現しないって話だったのに……。


 しかも強いだなんて……一体何が起こってるの?

第354話を見て下さり、ありがとうございます。

皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)

次回も宜しくお願い致します。

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