第353話『教員生活編〜宿泊行事(迷子の迷子のルカちゃん)〜』
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『ねえカレンちゃん、私さっきまで大きな木に寄りかかってたはずなんだけど』
『アア、ソノ記憶ハ確カナハズダ』
『そうだよね? でも今私の後ろにあるのは大きな木じゃなくて、剣だよね?』
『アア、ソノ認識モ確カダ。私ニモソウ見エル』
ルカが言った通り、大きな木を背もたれ代わりにしていたはずが、気づいたらゲームとかでよく見る“大地に突き刺さっている剣“にすり替わっていた。
『あれ? でも――』
しかし、よくよく周りをよく観察してみると、先程大きな木に寄りかかった時の風景と、今視界に映る風景は若干だが異なるように見える。
例えば、木の枝の数や木の長さ等、間違い探しを思わせるレベルの些細な違いではあるが、魔法でも使わない限り、一瞬の内に変化することなどありえない。
つまり、背もたれにしていた物が変わったのではなく、ルカ自身が転移したと考える方が自然だろう。
しかし、そうなると疑問が生じる。
まず、なぜ転移したのか?
魔法か? それとも精霊の力か、ノルン様の力なのか。
この世界では一般的には転移魔法はまだ普及されていないし、存在すら知らぬ者の方が圧倒的に多いだろう。
もちろんそれが出来る人間は身近にはいる。その人物こそオーガスト・ディーンことダストだが、彼がルカにわざわざ歴史変貌のリスクがある転移魔法を放つ動機はない。
ならば精霊の力か? 現状、この世界でそれを使えるのは、橋本ルカ、カレンちゃん、ルカ・ヴァルキリーの3人のみ。
ルカ・パーシヴァルは別クラスの為、ここには来ていない。
カレンちゃんも特に精霊の力は使っていないし、そもそも転移する能力は持ち合わせていない。
(ということは……ノルン様)
女神である彼女であれば、遠くから1人の人間を別の場所に転移させることなど造作もないだろうが、だとしてもその目的が全く分からない。
ノルンの思考回路の全てを理解しているわけではないが、それでも彼女がルカを別の場所に飛ばしたという確証はどこにもない。
ただ、一応それが可能な者ではあるので容疑者リストには入る。
(うーん、分からないなぁ……)
現状ルカがどんなに頭を回しても、たどり着ける解は出ないだろう。
『よし、推理するのやめよう。全く分からないや』
『……ソウダナ、正直私モオ手上ゲダ……』
犯人探しを諦めたルカが次に思いついた事は、恐らく迷子になっているであろう自分が誰かと合流して外まで抜け出すこと。
だが、この森はあまりにも広い。
見渡す限り、木木木木木木木木木木木木木木木――。
視界の限り、緑緑緑緑緑緑緑緑緑緑緑緑緑緑緑――。
そこに人の姿は見えない。モンスターもいない。風の音すら聞こえない。
まるで時が止まった世界にいるようだ。もしくは絵の中の世界に入ったという表現の方がしっくりくるかもしれない。
ここから移動したところで背景も変わらない、抜け出せる気がしない迷路にいるような気分になるだろう。
そうなると、今下手に歩き出すよりも、ここで誰かが来るのを待つ方が賢明だと考えた。
こういう時の為に監視カメラがあるのも事前に聞いている。今頃私が消えた事でディーンさん達が私を迎えに森の中を動き回っているのも容易に想像できる。
もし1人だったら、いくら冷静であっても寂しくて泣きべそをかいていたかもしれなかったが、幸いカレンちゃんもいるので心細いということはない。
『ルカチャン、大丈夫ダ。タトエコノ先誰モ来ナカッタトシテモ私ガイル。私ガルカチャンノソバニイル限リ、何ガアッテモルカチャンヲ守ル』
『ありがとう、カレンちゃん』
カレンちゃんの暖かい言葉にルカは少しだけ涙を流した。
『ここでディーンさんか誰かが迎えに来るのを待ってようか』
『ソウダナ、賢明ナ判断ダ』
『あ、でも……』
ルカはここで重大な問題に気づく。
それは、食料だ。
今ルカが背負っているリュックの中にはある程度食料が入っているものの、1食分と呼べるかも怪しい微妙な量だ。
すぐに誰かが迎えに来てくれればいいが、もし時間がかかるのなら多少の空腹は覚悟しなければならない。
モンスターがいれば、それを食材にすることが出来たのだが、今この森にはモンスターが存在しない。
しかも、きのみもなければ、きのこも生えていないので、もし本当に食料が何も無ければ草を食べることになるが、サバイバル経験皆無のルカちゃんには酷な話だろう。
『食べ物どうしよう……』
『ソウカ、ソウダッタナ……私ニハ胃袋ガ無イカラ食ベナクテモイイガ、ルカチャンハオ腹ガ空クヨナ』
『……うん』
ルカはワンチャン記憶違いで実はいっぱい食料が入ってないか、リュックの中を確認するが、記憶通りの量で落胆した。
『ディーンさん、早く来て!!!』
今度は自分の居場所を特定してもらうために声を上げるという原始的な方法を取ったが、やはり誰も来る気がしない。
『ル……ルカチャン?』
珍しく大声を上げる彼女に動揺するカレンちゃん。彼女の事を誰よりもよく分かっているつもりだったが、まさかここでそんなことをするとは思わず、驚愕の表情を浮かべている。
『うーん、やっぱり来ないよね……』
ルカは剣に腰掛けたまま体育座りでその場から動かなかった。
『ルカチャン……』
――人形は憂いの表情で俯く主を、作られた瞳に映す。
冷静に状況を把握したルカだが、内心不安に襲われているのだろう。
このまま誰も迎えに来なかったらどうしよう。
食べる物が無くなったらどうしよう。
人間ではない人形には決して知ることのない感情。
しかし、これと同じような光景を1度目にしている。
――それは彼女が親に■■されていた時、ただの人形だった為、何もできなかった人形は無機質な表情のまま、友達が苦しみ傷つく所を――何度も、何度も――
『辛イ……』
人形はまた何もできないのか。
もはやただの作り物では無くなった自分が、
困ってる友達に手すら差し伸べられないのか。
嫌だ。そんなの嫌だ。
何としても、何としても、私は……ルカちゃんを――
『ルカチャン、大丈夫ダ。私ガ必ズ、君ヲ助ケテミセル!』
『カレンちゃん……』
――その時、突如として剣が光を放った。
『え、なに――』
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