第352話『教員生活編〜宿泊行事(異変)〜』
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――誰かが私を呼んでいる。
悲しみ……いや渇望だろうか。
感情が流れ込んでくる――――
“ご主人様、ご主人様。今日はどこに行くの?”
“ご主人様、ご主人様。僕とお散歩に行こうよ”
“ご主人様、ご主人様。遊んでくれてありがとう”
“ご主人様、ご主人様。最近忙しいのかな、僕とあまり遊んでくれなくなった”
“ご主人様、ご主人様。何で泣いてるの?”
“ご主人様、ご主人様。何をやっているの?”
“ご主人様、ご主人様。どこに行ったの?”
“ご主人様、ご主人様。僕どうなったの?”
“ご主人様、ご主人様。僕はまたご主人様に会いたいよ”
“ご主人様、ご主人様。僕諦めないよ。どんなに離れていても僕はご主人様を必ず見つけ出すよ”
“ご主人様、ご主人様。あのね僕――”
『――はっ!』
身に纏う毛布を退き、思わず飛び起きてしまった橋本ルカ。それなりに音は出てしまったと思うが、同室のクラスメート達は誰1人として目を開けていない。
『はぁ……はぁ……』
室内は特に暑いわけでもないのに寝汗でパジャマがぐっしょりと濡れている。
『今のは、夢……?』
橋本ルカは朧気ながらも、先程の夢を思い出そうとする。
“ご主人様“
“お散歩“
“遊んでくれてありがとう“
“会いたいよ”
“見つけ出すよ”
これらのワードとその映像がはっきりと浮かんできた。
これは誰かの記憶。目線がやたら低かったのと、お散歩や遊ぶ等のワードから導き出せるものは――
(犬……?)
しかし、なぜこんなタイミングで犬の夢など見たのだろうか。
橋本ルカが就寝する前に犬が出てくる物語やドラマを見たわけでも話題にしたわけでもない。況してやこの世界の犬や猫は伝説上の生き物となっている。現実に存在するはずがない。
ただ橋本ルカが生まれた世界では犬や猫は普通に存在する。しかし橋本家で飼っていたわけではないし、特別思い出があるわけでもないのだが、それでもその存在がいないとそれなりに違和感が生じる。その違和感が逆に犬になった夢を見ることになった原因と考える事はできる。
(そっか、この世界に犬と猫はいないんだっけ……)
彼女はこれをただの夢だと結論付け、寝汗の不快感を纏いつつも、再び毛布をかけて目を瞑った。
――――――――――――
――宿泊行事3日目。
今日は午前中は訓練、午後は自由時間となっている。
明日は宿泊最終日で空港で飛行機に乗るまでは自由時間だ。学ぶ為とはいえ、せめて生徒達に良い思い出を作ってほしいという学院長の意向だ。
本当はもっとレベルを上げてダスト軍の戦力増強に、と思ったのだが、俺達の戦いに生徒達(ルカちゃんを除く)を巻き込むのも申し訳なく思い、関係者だけで作戦に参加しようという話になった。
まあそりゃそうだよな。この世界で起こる大災害とはいえ1万年も後の話だし、俺達のやっていることはほぼ犯罪だし、そんなヤバい事に生徒達を巻き込むわけにはいかないよな。
なので現状のダスト軍の戦力は、俺、パーシヴァル、あおいちゃん、ルカちゃん、ルカヴァちゃん、カレンちゃん、マーリン、新井さん、ノルン様、ヒルドさん、ヘラクレスと、名も知らない従者や部下各数十名程。
脳筋はあくまで一時的なお手伝いとのことなのでこちらの戦力には加えていない。
だが、それでも今のダスト軍は相当の戦力と言える。
俺のようにレベル上限を解放しない限り、この世界でダスト軍を打ち破れる者はいないだろう。
しかし、それで全戦力をゼウスにぶつけても現状勝てる見込みはないとノルン様が断言した。
神のステータスは全てが異次元。少なくともノルン様を1人で倒せるくらいでないと、ゼウスには到底敵わない。
もっともっとレベルを上げる必要がある。
その為には作業作業。
生徒達が起きる前に作業。
仕事の合間に作業。
生徒達が寝静まった後に作業。
雨が降ろうが槍が降ろうが作業。
ノルン様の兵器を食わされる事になろうが作業。
作業をやってはいけない病にかかっても作業。
とにかく作業。
ただ、作業。
作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業作業。
わーい、ぼくしゅうかいだいしゅき。
あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは――。
『主人! 大変だ!』
午後の自由時間、生徒達がトラブルを起こさないように見回る俺の元に血相変えたパーシヴァルが現れた。
『どうした? パーシヴァル』
『ルカと時生がいなくなっちまったんだ!』
とうとう来てしまったか……宿泊行事の生徒失踪イベントが……。
だが、心配はいらない。ノルン様に連絡して管制室の映像を見れば、今どこにいるか一目瞭然だ。
『なるほど、分かった。ノルン様に連絡しよう』
『――もうとっくに連絡した』
『え?』
『カメラの映像も見たが、どこにも映ってないんだ』
『なんだと……?』
どうやら、今ノルン様も学院長達も既に捜索に入っていて、カメラに映らない場所を片っ端から確認しているらしい。
確かにこの森は異常なまでに広い。今はモンスターの出現をオフにしているらしいが、それでもこんな森に1人迷子になれば不安が増すばかりだろう。
まあでも、時生は賢く図太くそれでいて探究心高めだから、きっと1人になっても森の生態について嬉々として調べている頃だろうな。
ルカちゃんには常にカレンちゃんがついている。1人で心細くなることは無いだろう。何なら時生を回収して戻ってくる可能性すら感じる。
ここがただの森であるならそう考えられるが……。
本当にそうだろうか?
そういえば、最近エフちゃん見かけないな……どこ行ったんだ?
森の管理者である彼女がいれば、何か分かるかもしれないのに……。
――嘆いていてもしょうがない。今はルカちゃんと時生の探索が先だ。もしかしたら今2人に危機が訪れてるかもしれない。
『主人、私はあっちを捜す! 主人はそっち方面を頼む!』
『ああ、分かった!』
俺とパーシヴァルは別れて、それぞれの場所を探索した。
とは言っても広すぎる! これじゃ捜すどころか俺が迷子になる可能性すらあるぞ……。
クソッ……何で自由観光の範囲を絞らなかった……少なくともこの森は自由に観光させるべきじゃなかっただろうが……ホント何やってんだよ俺……。
――あれから1時間くらい経ったが、誰とも会うどころか姿を見ることすら叶わなかった。
『広すぎだろ! この森!!!』
本当に誰か探索してるのか、この森は。
人がいるはずなのに、人がいなくなったみたいに静かだ。
人がいないなら、今こそ俺の魔法を使う時だ。
周りを確認しよう。
気配はない、足音も声も聞こえない。
――よし、今だ。
『探知魔法』
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『居た……! ん?』
アレって……もしかして……?
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