第350話『教員生活編〜宿泊行事(変化)〜』
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――宿泊行事1日目。
まずは生徒達には、このヴァルハラの観光を楽しんでもらう。
観光する場所なんてあるのかと思ったが、実はこんな過疎化寸前の大地にも絶景スポットが多数存在する。
エフちゃんが管理する森もそうだが、宝石のように輝く綺麗な湖や、ファンタジー感溢れる洞窟、エメラルドグリーン色の海なんかもあるらしい。
さあ、楽しい楽しい学校行事の始まりだ――なんて楽しんでばかりではいられない。
観光する先にはモンスターが生息する。
だが出現するのは巨人型モンスターではなく、それほど強くないゴブリンや猪系のモンスターばかりだ。
実はノルン様が生徒達のレベルに合わせて、出現するモンスターを調整してくれたそうだ。
――そう、これが目的。レベルを上げるのは俺やパーシヴァルだけではなく、ルカちゃんを含めたクラスメート達全員だ。
今回は生徒達にレベル上げる他に戦闘経験そのものを積ませる目的があるので、我々教員組は見守るだけで戦闘には参加しない。
『あ、モンスターだ!』
『みんな、作戦通りにいくよ』
モンスターの遭遇を想定した訓練は学校で散々授業をした。
近接戦闘をする者、魔法で援護する者、罠を張って効率的に倒す者と多種多様のやり方でモンスターを撃破していく。
うちの生徒達のレベルの平均は30。弱いモンスターになら余裕で勝てるし、少し強いモンスターが来ても作戦通りに動けば倒せるレベルだ。
『よっしゃー! 勝てたぞ!』
勝利に雄叫びを上げる生徒が数名。
今回の戦闘の反省点を振り返る生徒が数名。
互いに労る生徒が数名。
無表情でただその光景を瞳に映す生徒が数名。
――そして、俺に構って欲しそうな可愛らしい女子生徒が1人。そう、ブロンズ様と全く同じ外見をした白鳥銅だ。
黄金と銀河も来ているが、モンスター討伐にはあまり積極的ではないようだ。故にレベルも平均よりも低めである。
『ねえ、せんせー』
『どうした銅』
銅は俺の裾を掴み、少し照れくさそうな表情をしながら、
『寂しかった』
その一言に俺の嵐の如く荒んだ心は快晴の空を取り戻した。
ありがとう、ありがとう。
最高に可愛いをありがとう。
『俺もだよ』
『先生……!』
銅は嬉しそうに俺を見る。そして主人に甘えるペットのように抱きついてきた。
周りの視線などお構いなし、教員と生徒とはいえ異性への距離感の無さは異常。
この光景を実の姉の2人は見逃さなかった。
銀河は頬を赤くし、黄金は俺を鬼の形相で睨みつけている。
他の生徒も、
『あー、銅ちゃんが先生に抱きついてる!』
『え、銅って先生の事好きなの?』
『ちくしょー! 銅の事、実は俺も狙ってたのに!』
『俺もだよ、クソーーー!!!』
『私も! 銅ちゃんと私の胸押し付けあってキャッキャウフフしたかった!』
等と様々な声が上がる――ちょっと待て最後の何だオイ。
『ちょっと待てみんな! これはただの久々の再会だぞ?』
俺は必死に弁明するも――
『えー? 久々って言ってもたった5日じゃん? そんなに久々ってほどかな?』
『5日経って寂しいとか、それもう恋人なのよ』
『どうなんですか! 先生!』
『いいか皆、久々の定義は人それぞれ! 俺も銅も5日離れていればそれはもう久々の再会という定義なんだ!』
等と苦しい弁明を言い放つ俺だが、生徒達は反論が出てこなかったのか、これ以上何も言い返さなかった。
銅に好意を抱いていた生徒数名は敗北を味わい、言い方は良くないかもしれないが、お互いに傷を舐め合い、悔し涙を見せた。
なるほど、絆ってこうやって生まれるんだな。
――それから数時間が経ち、生徒達は着々とモンスターを倒していき、全ての観光スポットを巡回することができた。
モンスターを倒した報酬がこの景色だけというのは、生徒達も冷めるというもの。なので、俺から料理長に頼んで生徒達にとびっきり美味しいデザートを作ってほしいと言っておいた。
『さあ、みんな城へ戻るぞ』
生徒達は『はーい!』と返し、労いを与え受け取りつつ、城へ戻っていった。
『え?』
集団の最後尾に位置していたルカちゃんは何かを感じ取ったのか後ろを振り向いた。
しかし、そこには大地を根ざす樹木と生い茂った緑以外には何も無かった。
『どうしたルカちゃん?』
『……何でもないです』
ルカちゃんは気のせいだと結論付けて、生徒達の後へついていった。
――その夜、生徒達と俺達でヴァルハラにある大人数が入れる大食堂にて、夕ご飯を食べた後にアイスクリームパフェが一人一人に用意された。
生徒達は一人残らず歓喜し、みんなで美味しく食した。
宿泊行事の思い出としてはとても良いものを残せたのではないだろうか。生徒達が喜んでくれているだけで俺は幸せを感じる。
……俺ももし全く違う学校に通っていて、いじめなんて遭ってなかったら……あの笑顔いっぱいの雰囲気の中に溶け込めたのかな。
俺には青春時代なんてものはない。ただ強者に蹂躙され、俺は弱者として泥水をすすって生きてきた。そんな地獄のような時間だった。
あぁ――快楽よ、お前はどこにいるんダ。
――壊ス?
ねえ、壊ソうカ?
やる? ヤル? やル? ヤる? ヤ、ヤヤヤル?
ねえ、ネェねエネネネネェ――
やろうよ、ヤろウよ、俺より幸セナんて許されナいよ?
男は殺シテ、女ハ弄んデ壊レテから殺セ。
――サア、殺せ殺せ殺せ殺セ殺せ殺せコロせころSE殺せこロせKOROセKOロセロセロセロセロロロロロロロろ――
俺の中の■■が呪うようにささやく。
封印されたはずの■■だが、しぶといようでまだ意志があるようだ。
………………。
……………………。
…………………………。
『あぁ――』
『先生?』
『先生、それは――』
気づいたら俺は手に持っていたフォークを――
ザクッ。
『ちょっと先生!』
『何やってんですか!?』
『え?』
多くの生徒は俺の行為を見て、驚愕の表情を浮かべている。
『何をそんなに驚いているんだ?』
『いや……まさか先生が……フォークでアイスを突き刺す派だったとは!』
『は? なにそれ』
全く聞いたこともない派生を聞いて俺は首を傾げる。
『先生、知らないんですか? アイスを食べる時、スプーンを使って食べるか、フォークを突き刺して食べるかで派閥が分かれてるんです』
いや、なにそのどうでもいい派閥。
『マジかー! まさか先生がフォークで突き刺す派だとは! くぅ〜!』
『ちくしょう! そっちに数がまた1つ増えちまった!』
『いえーい! せんせー、こっち派だった!』
『わーい! ディーン先生はフォーク派だ! 同志が増えて嬉しい!』
『繰り返す、ディーン先生はフォークで突き刺す派! ディーン先生はフォークで突き刺す派! 我々の勝利は近いぞ!』
何だかよく分からないが、派閥争いに薪を焚べてしまったようだ。
生徒全員が盛り上がっていると思いきや、黄金達三姉妹もこの派閥争いについてこれず、困惑を極めていた。
そんなのどうでもいいじゃん、なんてとてもじゃないが言える雰囲気ではない。
『なんだよ主人、フォーク派かよ! クソッ!』
なんでお前まで派閥争いに混ざってんだよ。
クソッ! じゃねえんだよ、こっちはそんなことクソどうでもいいんだよ。
はぁ……やれやれ。
この世界は時を遡っても訳が分からんな。
ま、それでも俺は、みんなとこの時間を大切にしたいと思っている。それは決して壊してはならない守りたいもの。一時の感情や悪魔に囁かたくらいで堕ちる程今の俺は弱くない。
第350話を見て下さり、ありがとうございます。
皆様がこの話を見て楽しめたのなら幸いです(^^)
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